「では、見積もりを取りますので
こちらへどうぞ」。
言われるままに、対面式の
テーブルにつかされた。
てきぱきと、そして軽やかに
ipadを操作する男性社員。
(おめ~がここまでできるには
あと10年は必要だろうな、フフッ。)
言葉には出さないが、
私には君がそう思っていることが
手に取るようにわかるぞ。
被害妄想が止まらない認知症老人のことが
今ならすべて受け入れられるような気がした。
7~8分待たされただろうか。
「それでは説明いたしますね。
これがあ~で、あれがこ~で…」。
お世話になる身で大変失礼な話だが、
セキュリティーや保険やなんやかんやで
支払総額が膨らんでしまうのではないか。
どう考えても、売り上げを上げる方向で
話を進めるはずだろ?
ましてや君はおれをおじいちゃん扱いしとる。
ぜ~ったい、俺のことをカモに見てるだろ?
私の口先がくちばしに見えてるだろ?
詐欺にはぜったい騙されないと気張ってる
独り暮らしおばあちゃまの気持ちが
今なら完全に分かるような気がした。
「ちょっと、ちょっと待って。
こ、こ、これはどういうこと?」
「これは、と言いますと?」
「ほら、あれでしょ?だから、
必要ない…」
「はあ。」
「だからいいわ。」
「いいですか?そうですか。」
「いや、ちょっと待って。
もうちょっと考えてみるわ」
説明された内容が多すぎて
頭パンパンになっとる。
つまり、よう分からん。
データ移行するのに
最大2時間半見てくれと言われて
「あ、じゃあまた来週来るわ」と言い残して
ショップを後にした。
調子の戻らない
ガラ・ケー子との付き合いが
1週間延びた。
画面がおかしいだけで
電話もメールもできるもんな。
何かの拍子で元に戻ってくれないかな?