かけ算の順序で数教協とナマ議論(3回目/4回) | メタメタの日

かけ算の式の順序についての議論は,40年以上前から数教協の本などに書いてあるのを読んできたし,ネットでも10年以上議論してきたので,もはや新しい論点は出ないと思っていた。(最近ネットで,新しい論点として「発達障害児のため」という偽善的な(としか思えない)議論が出たが。)

だから,この日の研究集会に参加した私の動機は,現在の数教協が,かけ算論議スペクトルのどのあたりの位置するのかを知ることと,前述したように小林委員長の提議に対する反応を知ることだった。

かけ算の順序での意見の対立は1回や2回の議論で決着を見ることはないと思っていたので,分科会でも議論をする気はなかったのだが,先のA氏が反駁してきたので,受けざるを得なくなったという面がある。しかし,A氏含めて数教協の30年,40年のベテラン3人の先生が相手をしてくれたおかげで,現在の数教協のスタンスがはっきりわかった。

先ず,小林委員長の本については,そもそもそういう本が出たことを知らないようだった。分科会の後で,A氏に個人的に本の前記箇所を示したところ,「数教協にもいろんな人がいるから,こういうことを言う人もいるだろう」ということだった。自分の属する組織のトップの見解に対し,「こういうことを言う人もいる」というのは,それはそれで痛快だったが。

 

さて,「かけ順こだわり派」に対する「自由派」(含む私)の反論の要点は大きく2つある。

1つ目は,世間では「いくつ分×1あたり」の順序もあること。

2つ目は,仮に「1あたり×いくつ分」の順序だけが正しいとしても,トランプ配りなどを考えれば,「1あたり」と「いくつ分」の数値の交換が可能であること。

 

数教協に対する私の議論前の予想は,2つ目のトランプ配りは40年前から遠山さんが言っていたことだから,数教協内では当然これは認められているだろう,しかし,1つ目については,今回小林さんが初めて印刷物で発表したことだから,その反応や如何ということだった。(数教協の方の書として初めて,ということで,既刊書としては拙著『かけ算には順序があるのか』などがある。しかし,算数教育書の中では稀有の例となる。)

手を挙げて初めに言ったのは,教科書では「1つ分×いくつ分」の順序しか教えないが,スーパーの商品には「いくつ分×1あたり」もあるのではないかということだった。それは認められ,「外国はみんな逆なんですよね」「オリンピックでも4×100mリレーと言いますよね」などとネット議論の常識が再確認された。(ただし,外国はみんな逆であるわけではないことが,現在のネットの常識になっているが。)

ただし,この先が問題で,司会者(「数学教室」4月号に記事が載るN先生)は,ブラジルから転校してきた子どもが式を全部「逆」に書くので,「日本ではこっちの順序なんですよ,外国では車は右側通行でも日本では左側通行でしょ」と教えたと言うので,車の話とは違うでしょ,と言った。

また,別のB先生が,「学校では子どもたちとこの順序で書くことを約束する」と言うので,「その縛りはいつ解くんですか」と質問したが,議論が拡散して回答はいただけなかった。

つまり,数教協の先生は,「1あたり×いくつ分」の順序については,それだけが正しいわけではないことは認めているが,「いくつ分×1あたり」でも良いことは教えていないようだ。