正負の数のトランプでの導入(つづき) | メタメタの日

(つづきです)


 以上の操作をトランプで再度確認します。(黒板に張って見られるほどの大きさのトランプが、手品用に売っています。)

 黒字をプラス、赤字をマイナスとして、

 黒3+黒2=黒5、赤3+赤2=赤5、黒1+赤10、赤3+黒2=赤1

 黒3-黒2=黒1、赤3-赤2=赤1、赤2-赤3=黒1 など

 もちろん、トランプの読み方は、黒3は「プラス3」、赤2は「マイナス2」と読みます。

 次に、トランプが3枚以上の加法のやり方を確認します。

 赤5+黒2+赤3+黒4 だったら、前から順にするより、赤をまとめて赤8、黒をまとめて黒6、だから赤2としたほうが速くて正確だねとか、足してゼロになる赤黒があったら、それを先に計算したほうが速くて正確だねとか。

 そして、4人の組でトランプのゲームをします。(当然、机を並び変えます。)

 カードは、絵札を除いた10以下を使い、4人にトランプ配り(!)で10枚ずつ渡し、1枚ずついっせいに見せあい、その和を速く正しく言ったものが勝ちで4枚のトランプをもらいます(同時だったら2枚ずつ)。10回終わったときに枚数の多い上位2名と下位2名を隣りの組のメンバーと入れ替えます(上位は上位同志、下位は下位同志)。クラスの人数は、4組ぐらいできる人数だったので、メンバー入れ替えは2回できて、予選、準決勝、決勝で最強4人の組の戦いとなります。もちろん、他の組の戦いも並行してやりますから、最強4人の組が出来るように、最弱4人の組も出来ますが、いじけないでゲームを楽しんでいたようです。(学力の優劣というよりゲーム力の優劣のようで、「また、おまえかよ」という感じになるのでしょうか。)

 このトランプの試合を授業の後半に34回ぐらいやりました。まぁ盛り上がりましたし、正負の加減についての正答率は良かったはずです。

 

 正負の加減の導入にトランプを使うことは、銀林浩『数は生きている』(岩波書店、1974年)第4章で知りました。これが優れている点は、正負の数が、トランプの黒赤の数として「実体化」されていることと、加減が、トランプを加える・引くという操作で、正負と区別されていることです。つまり、(+3)(2) の式において、最初の「-」は、減法を表す演算記号であり、次の「-」は、負数を表す符号という区別がはっきりします。

 「+、-」に、加減の記号と正負の符号の2つの意味があること(意味が違うのに同じマークを使っていることにはそれだけの便宜さがあること)は、遠山啓『数学入門 上』(岩波新書、1959年)62ページ以下で知りました。

 このように出典を明記することは、人によっては煩わしいと感じられるかもしれませんが、自分が考えたことではなく、教えられたことについては、その典拠を明記することは、フェアでもあり、原典を参照するための便があると思っていることと、自分が知っていること、理解していることは、可能な限りそれを明らかにすべきであり、自分が知っていること、理解していることを、自分の理解の仕方を示さずに他人に質問することは、他人の理解度を試しているのか、トラップに嵌めようとするアンフェアな振る舞いだと思っているからです。