今日は、
シリーズ《美しい甲をもとめて》の2回目
として、
甲が出るってどういうことそのメカニズム
について、書きます。
足の甲が出るメカニズム、
つまり、どうやって甲は形作られているか についてです。
興味のある方は、ご一読いただけますと嬉しいです。
もしかしたら、思っていたイメージと違ってた…と感じられる方も一部には、いらっしゃるのでは?と思います。
エビデンス検証が大好きなので、主観を交えた経験論的情報はあまり好みません。
医学と理学療法の専門知識に基づいて書きます。
足のことについては、高倉 義典, 田中 康仁, 北田 力らによる図説「足の臨床」(メジカルビュー社)が、お値段は高いですが、分かりやすくて良書です。
図説 足の臨床 Amazon |
私は、古いのしか持っていないのですが、
今日は、この本の冒頭の総説にあたる部分から、面白い箇所を抜粋紹介します。
人生死ぬまで勉強だ!
【ヒトの足の特徴】
我々の祖先が二足直立歩行を始めたのは、今から1,600万年から600万年前に生存していたラクマピテクスの時代から、300万年から100万年前に生存していたアウストラロピテクスの時代までの間のことであったと推定されている。この二足直立歩行により、ヒトの足は頭蓋や骨盤とともに最も特殊化した部分となった。
ヒトの足は類人猿と比べて、様々な特徴がある。
まず第一は、足が固くて細長くスマートなことであり、第二には、第1・2中足骨間(だいたい土踏まずあたりのことです)の可動性が制限されているため、物を把持できないことである。
最も大きな特徴は、縦方向と横方向にアーチ構造を有することである。
アーチ構造は、歩行時にバネとして働くほかに、体重移動を円滑にする役割を果たしている。土踏まずの部分は神経や血管の損傷を防御し、また母趾はbig toeと呼ばれているようによく発達して、歩行時に地面を蹴り易くなっている。
以上、抜粋なのですが、バレエ的観点で読むと、味わい深くないですか
こうやって足の進化か退化か変化かわかりませんが、イラストで並べてみると、どうも親指が長い人の方がヒトらしいような、そして普通に足で物をつかめる人たまにいますけれどそれはヒトから遠いような、五本の指を見事にセパレートできる人もヒトから遠いような(私の超身近な人は練習しなくてももともとできます)、親指が小さいとなんだか・・オランウータン?・、と、足を見て暇任せに、ヒトかサルか論を展開したくなります。
それに、ヒトの足が固くて細長くスマートな方向性に、次世代に向かって変化してきたのに、バレエダンサーの足は、柔らかくて?、細長いというよりスクエア型で、スマートというより分厚いのが良いという万国共通の美的価値観は、原始崇拝の心の表れなのかしら?と思ったり。
さて、上記抜粋文中のヒトの足の特徴である縦方向と横方向のアーチ構造について、話を進めます。
こちらには、足にある3つのアーチについて説明があります。
http://www.ochaseikei.com/footcare/foot4.htmlより
同じ内容を写真でみるとわかりやすいです。
http://www.chiba-orthopaedics.com/group/foot_gr/foot_gr.htmlより
甲がキレイに出ている足とは、すなわち、これらのアーチの弧が見事な足のことです。
アーチが無い足を、日本語では「扁平足」と呼びます。
英語では「flat foot」、フランス語では「pieds plats」です。
どれも、足が【平ら】ということを表す言葉です。
では、「扁平足」の反対の《アーチが高い足》のことを何というでしょう
日本語では「甲高」、英語では「high in the instep」あるいは「high arch」、さらにそれが過度になると「Craw foot 」、
フランス語ですとちょっとニュアンスが異なって「pied creuw」という言葉があります。
《甲高》という単語の抱かせるイメージは、厚みがあり、足背が山のようなっている足の形です。
スニーカー履くと、足背があたってしまい、なかなか足に合うものがないなら甲高かもしれません。
私の友人の一人は、「遺伝的に足背(そくはい)のほうにある骨が盛り上がっていることではないの?」と思うそうですか、骨の盛り上がりがあるのはレアなケースらしいです。
遺伝的な骨の大きさや厚みも、もちろんあるでしょうが、
《甲》とは、まぎれもなく、足の《アーチ》=角度のことです。
そして、バレエの場合、面倒なことに、機能と運動面だけでなく、審美面の話も絡んでくるのですが、
これは “目に豊かに美しく映る” 《甲》はどんなものか”によります。
従って、時代的背景と絡んで、美しさの基準に流行がありますから、きっと、現代ですと、ザハロワの持つ足のように実際に、接地面から高さのある事を言うのでしょう。
接地面から高さがある《甲高》な足を、フランス語で【pied creux】(読み方はピエ・クルー、空洞足という意味)と呼ぶと上に書きましたが、これは褒めた路線の話ではなくて、病的状態です。そして、かなりの症例があるらしいです。
英語では、このシリーズの1で図をのせたClaw footがそれに相当するのだと思います。
(Claw footでググってみてください。見事に脚付きバスタブの写真ばかりヒットします。このバスタブの足に似た形の『人の足』は、故障しやすい足です。
日本では諸外国に比べ、足の医学の発達が遅かったこともあるのか?、それとも日本人は足袋や下駄をはいていた民族だからあまりそれに該当する病的状態がないからなのか?、しっかり調べてないのでよくわかりませんが、日本で甲が高すぎて矯正や手術が必要になったという話はあまり聞きませんし、それに該当する日本語もない気がします。どうですかね?
pied creux(空洞足)がどんなものか、わかりにくい場合は、こちらをご覧ください。
これは、足の模型販売用の図ですが、
①pied creux:空洞足(過度に甲が高くなって、指が浮く状態にまでなってしまった足)、
②普通の足
③扁平足
です。
出典:Modèle de pied creux "pes cavus"
より
さて、今日私が書いているのは、普通の健康な足の話ではなくて、バレエダンサーとして美しさと健常さを兼ね備えた足についてなのですが、
この3つの模型を眺めていると
「甲が高いと綺麗に見えると言っても、どの程度の甲の高さがよいの?」
「①はダメ? 綺麗だと思うけど・・・・」
となります。
甲の美を厳格に論じるには、きっと、足だけでなく、足首、そして膝あたりまで範囲を伸ばして、審美性を検討する必要があるのでしょうね。
今日のブログで最も大事なことは、
甲があるとは、単に足の骨の厚みがあることではなく、足の肉がムチムチと厚みがあることでもなく、足の筋肉が隆々としていることでもなく、床から足背のトップの高さが高ければ高いほど良いということはなく、
適度なアーチがあること です。
難しいのは、適度なアーチ、綺麗なアーチ についての話です。
これについては次回以降に持ち越します。
次回は、足のアーチについて、さらに詳しく、まとめてみようかなと思います。