スコラーリ・セレソンの歴史的大敗 | ギタリスター誕生~ギター500年の歴史がここから変わる~

 2014年ブラジルワールドカップ準決勝、ドイツvsブラジル。それを観た私はあまりの衝撃に感覚がマヒしてしまい、気がついたら7━1でドイツの勝利で終わっていた、という90分を過ごすことになってしまいました。

 

 
 それにしても世界サッカー史に残る歴史的大事件です。ブラジルはネイマールとシウバがいないものの、選手層は薄くはありません。果たして名将スコラーリ監督はどんな手をうってくるのか期待したのですが、その期待は裏切られるどころの騒ぎではありませんでした。

 

 
 まず、シウバの代役はダンテ。バイエルン・ミュンヘンでレギュラーをつとめ、年齢的にもベテランで安心して任せられます。

 

 
 しかし、ルイスとの急増コンビがうまく機能しなかったのか、ルイスに統率力があまりにも欠如していたのか、ブラジルは7失点をきっしてしまいました。その大半が【ボールホルダーに複数がひきつけられてからのラストパスによる崩し】でした。

 

 
 とにかく守備はダンテが期待ハズレだった、ということで終わりにします。もうひとつの注目ポイントがネイマールの穴です。

 

 
 ネイマールの代役として送り込まれたのが身長163センチのベルナール。

 

 
 厳密には左サイドアタッカーにネイマールに次ぐ実力者のフッキ、右サイドアタッカーにベルナールという布陣。ネイマールの穴を埋めることはできないものの、私はベルナールのプレーに1番注目をしました。そんなベルナールの前半のおもなプレーは以下のような感じです。

 

 
 0分。中盤左サイドからのロングボールに合わせて裏を取ることに成功する。

 

 
 3分。フッキのクロスを押し込もうとボックスに走り込む。

 

 
 23分。後方からのロングボールに合わせて裏を取ることに成功するが、ノイアーに先にボールを取られてしまう。

 

 
 40分。左サイド深くからドリブル突破を試みるが、ラームに止められてしまう。

 

 
 ベルナールはドリブラーらしいですが、前半のこれらのプレーを見る限り、オフ・ザ・ボールを得意とする点取り屋という印象です。

 

 
 このベルナールの起用はまちがってはいないと思います。高さではドイツには勝てないのですから、ドリブルと裏を取るのがうまい小兵を送り込んで得点チャンスをつかもうという采配はうなずけます。しかし、裏を狙う手段があまりに大雑把です。

 

 
 ブラジルの中盤にパッサーはいないので、裏を狙う手段は後方からのロングボールという形になります。

 

 
 ロングボールで裏を取る攻撃は、中盤からのスルーパスやループパスで裏を取る攻撃より、難度は格段に上がります。しかも相手は驚異的なプレー範囲を誇るノイアー。裏を取り、さらにボールをおさめ、さらにシュートをきめる確率は果てしなく低くなるばかりです……。

 

 
 これがネイマールが使えない場合のプランBだったのでしょうか?

 

 
 では、リードされた場合はどうなのでしょうか?リードされたら相手はディフェンスラインを下げるので、裏はよりいっそう取りにくくなります。高さではドイツが上なのでパワープレーもハイクロスもダメ。個人技で打開できる可能性があるのはかろうじてフッキのみ。もうブラジルに打つ手はないです……。

 

 
 前半40分、ベルナールは左サイドをドリブルで突破しようとしてラームに止められたと書きましたが、たとえ突破に成功できたとしても、そこからブラジルにどんな攻めのバリエーションがあるのでしょうか?具体的なヴィジョンが見えてこないです。

 

 
 ネイマールとシウバを失ったのはたしかに痛いですが、選手層を考えれば大崩れするようなことはないだろうと思っていました。しかし終わってみれば今大会のブラジルというのは【ネイマールの個人能力頼み】のチームだった、ということです。そして、もしもネイマールを使えないという不測の事態のためのプランをまったく用意していなかったスコラーリ監督の力量のなさが暴露された大会でした。

 

 

 

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