本日は、江戸東京博物館に行ってまいりました。
描写ネタを仕入れてきましたので明日から江戸の町描写をしたいと思います。
ちなみに、今日はくたくたで……今にも寝てしまいそうです。
すみません。
  
  
※注意書き
 最近、江戸時代について資料考証していることもあって、しばらくは江戸時代の描写を中心に練習していきたいと思います。
娘っ子は、派手ではない程の朱色の縦じま模様の入った着物に高下駄を履いていた。
  後ろ姿から見える生え際の際立つ長い首筋に、袖口からにょきっと出ている細長く白い腕が印象的だ。
  娘っ子が下に落とした櫛を拾おうと着物の膝をまくってしゃがみこむと、ほんの一瞬だけ生っちろいすねが目に飛び込んできておれはどきりとした。
  普段から儒教の教えに従い質素倹約を自分への戒めとしている自分に対して憤りを感じつつも、娘っこに胸を高鳴らせてしまう自分がいた。
「ちょっと娘さん」
「なんですか?」
「しゃがみこむ時は気をつけないといけないよ」
「どうしてです?」
「そりゃあなたのか細い脚っこが見えてしまうからだよ」
「ごめんなさい。そんなはしたないつもりはないんですが、細かいことをあまり気にしないもので」
 そう言って華奢な身体でおじきをした。
  丈幅の細い小袖のせいか娘っ子の細い身体の線がよく分かる。珍しい小袖だが、今どきの流行の着物なのだろう、おれはそう判断した。
  後ろに大きく真っ赤な花びらのように取り付けられた帯結びもは最近流行のものであろう。
「いいよいいよ。気にしなさんな。それじゃあね」
「では、ごきげんよう」
 娘っ子は軽く会釈してその場を離れた。
 あとには上品な女性の香りが漂っていた。
  
入り口の門のようになっている木戸をくぐりぬけると何軒もの小さな間口が軒を連ねる長屋が見えた。
  職人の道具が家前に天日干しにされており、張り干しされている紺色の反物も見える。
  井戸の傍にはくみ上げたばかりのおけが置かれているので夕食の準備でも始めるのだろうか、少し前まで文字通り井戸端会議をしていたかのような様子が伺える。
  裏長屋を奥へと歩きながらおれはそんな様子に視線を配っていたが、早々に用件を伝えた引き上げねばならない。
  奥手に位置する八兵衛の戸口を叩くと中からしゃがれた声が返ってきた。
「誰もいねえよ」
「いるじゃないか、開けるぞ」
 そういって俺は障子が所々破れた戸口を勢い良く開け放った。
  すると、景気の悪そうな顔をして膝にほおづえをしてあぐらをかいている八兵衛の姿が見えた。中には湿気臭いむうっとした空気が立ちこめている。
「おう、そんな面してどうしたっていうんだ?」
「どうしたもこうしたも、おまんま食う銭がないんだよ、おめえさんも分かってるだろ」
 天保の大飢饉も重なって八兵衛のような手に技を持つ職人でさえ食いあぶれるような状況であった。