※注意書き
最近、江戸時代について資料考証していることもあって、しばらくは江戸時代の描写を中心に練習していきたいと思います。
娘っ子は、派手ではない程の朱色の縦じま模様の入った着物に高下駄を履いていた。
後ろ姿から見える生え際の際立つ長い首筋に、袖口からにょきっと出ている細長く白い腕が印象的だ。
娘っ子が下に落とした櫛を拾おうと着物の膝をまくってしゃがみこむと、ほんの一瞬だけ生っちろいすねが目に飛び込んできておれはどきりとした。
普段から儒教の教えに従い質素倹約を自分への戒めとしている自分に対して憤りを感じつつも、娘っこに胸を高鳴らせてしまう自分がいた。
「ちょっと娘さん」
「なんですか?」
「しゃがみこむ時は気をつけないといけないよ」
「どうしてです?」
「そりゃあなたのか細い脚っこが見えてしまうからだよ」
「ごめんなさい。そんなはしたないつもりはないんですが、細かいことをあまり気にしないもので」
そう言って華奢な身体でおじきをした。
丈幅の細い小袖のせいか娘っ子の細い身体の線がよく分かる。珍しい小袖だが、今どきの流行の着物なのだろう、おれはそう判断した。
後ろに大きく真っ赤な花びらのように取り付けられた帯結びもは最近流行のものであろう。
「いいよいいよ。気にしなさんな。それじゃあね」
「では、ごきげんよう」
娘っ子は軽く会釈してその場を離れた。
あとには上品な女性の香りが漂っていた。