今日、夏河は病院に行ってきました。
検査の結果を聞くためです。
こちらの続きですね～。
待合室で座り、看護師さんに名前を呼ばれるのを待っていると
突然POPな音楽が流れ出したんですよ。
明らかに誰かのスマホだなー？
と分かる音。
見渡してみると、犯人はすぐ隣の椅子に腰掛けている人でした。
なんと、ご高齢の…
おじーちゃんだったのです。
このスマホを弄っている、おじ－ちゃん
けっこうな大音量を流している。
それなのに我関せず、といった様子で、
スマホの将棋ゲームに熱中している。
夏河は、え～～～～～…
と思った。
だって、若者ならともかく
どーみても８０歳を超えてる、おじーちゃんが
病院の待合室で
大音量で
スマホのゲームって…
夏河は、このおじーちゃんのしているスマホのゲーム音が
耳障りでうるさかったから
注意しようかと思ったんです。
だけど、思わず
辺りを見回してしまった。
待合室はパンパンで（満員で）
マスクをつけた高齢者の方が多い気がする。
そして
誰もこのおじーちゃんに、注意をしようと動こうとしている者はいない…
ええーーーーー
まじかよーーーーー。
と思った。
みんなこの大音量、平気なのかよ？
ここ、病院だよ？
と思った。
体調崩して来ている人も居るだろうに、みんな、いいのかよ…
そんなことを思った。
だけど、みんな注意をしようとしないんですね。
気まずいものね、
「スマホの音がうるさいですよ」
って、８０過ぎのおじーちゃんに注意をするのって、すごく気まずいと思う。
だから夏河も、
待合室にいる他の人たちみたいに
ガマンしてやり過ごそうかと思った。
このまま耳障りな音をガマンしていれば
いつか自分の番が来て
このゲーム音からも、解放されるだろう。
そう思ったんです。
だけど、ちょっとムカついたんだな(^^;
何も言わない自分に。
自分が他人のせいで、不快な思いをしているのに
（たとえそれが８０過ぎの、ご老人とはいえ）
「やめてください」
と言えない自分に、腹が立った。
だから夏河は、隣の椅子でゲームをしている おじーちゃんの肩を叩き、
「おじーちゃん、スマホの音を消してくれないかな？」
と伝えたのでした。
伝えておきながら、心の中で思った。
あ～～～～…、またメンドクサイことになるぞ…と。
放っておけば、トラブルになることもないのにな～～～～～…って。
しかし、そんなネガティブな夏河の予想を裏切って
おじーちゃんは
「そうですか？ 自分じゃ分かんなくてね」
と言って
スマホの音量を小さくしようと、試行錯誤し始めたのだった。
拍子抜けした。
そのうち、結局 音の小さくするやり方が分からなかった おじーちゃんは
スマホの電源を切ってしまって、大人しくなってしまった。
夏河は、というと
拍子抜けしたのと…
勇気を出せたことと…
知らないおじーちゃんに、話しかけたこと
注意できたこと…
それらのことを、できた事が
自分の中で
何とも言えない、嬉しい気持ちにさせてくれていた。
夏河は、カウンセラーだけど
元・ひきこもり なんですよ
だからね、自分の気持ちを伝えられなかった経験を、たくさんしている。
嫌だな、と思っているのに
嫌と言えず
自分の気持ちを押し殺してきた時間を、長く経験している。
だから、こういう風に
自分の気持ちを、ガマンせず
人に対してちゃんと伝えられた…ということが
とても嬉しく感じるんです。
もう二度と、自分の気持ちにウソをつかない。
自分を、可哀そうな目に、合わせない。
これは夏河が自分にかけた約束。
そして、プライド。
自分のために
自分にかけた約束を守れたこと、プライドを守れたことが
とても嬉しかったのです。
人って、変わるものです
ひきこもりだった自分も、
見知らぬおじーちゃんに
「スマホの音を消してくれない？」
と言った自分も
同じ自分なんですよ。
私は、いま
自分のことがすごく好きですよ。
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