「ジンさん!」



いきなり自分の名前を呼ばれて


明後日の競馬に考えを巡らせていた意識を、現実へと引き戻す



オレの後ろに積んでいるハコを

イチ ニ サン~


と、数えながら声を掛けてきたのは
顔馴染みのケンだった


ケンは、オレが寝ぐらにしているこの街の花屋だ


風俗街、飲み屋街に花屋は欠かせない


ケンの店は、この界隈じゃ独占企業状態で景気は上々らしい



だが、ギャンブル好きのオンナ好き


せっかく、この街から儲けさせてもらった金を、街にせっせと還元している律儀なヤツだ



「ジンさん、18ハコかぁ~
いつも凄いなあ

オレなんて一昨日5万もヤラレちゃったよ…

どうすりゃ勝てるのか?教えてよ~」


…ケンに限らず、このテのコトはよく聞かれるが…


ま 基本、パチンコは、店側の割り数が決まっている以上


店 対 客


ではなく


客同士の奪い合い



つまり、オレが勝ててるのは、ケンのように負けるヤツらがいるから…なのだが


言っても理解できないだろうから、このテの質問はスルーの一手



ケンに限らず、パチンコというゲームの基本的な図式すら理解せずに

負けても負けても、毎日通い続けるヤツらのなんと多いコトか…


そのおかげでオレのようなのが、メシ食えてるのだから、世の中は不条理?に出来ているに違いない




ケンの質問には答えずに、逆にオレからハナシを向ける


(この章続く)


「アタマ鉄板で堅い」


とは言っても

そこはギャンブル


例えば、10頭立ての連勝単式の組み合わせは90通り


スイチの1点張りなら1/90の確率というコトだ



アタマ鉄板なら1/9じゃん?



コレは考え違いで、

『絶対』

なんて、ギャンブルには無いのだから、やっぱり1/90なのだ



古い知り合いの、舟券師が言ってた言葉を思い出す


「何でもかんでも本命が入るなら、誰がやっても家が建つわな」


博打を打つ人間は、コレを忘れちゃいけない




ともあれ



今回の阪神大賞典


オレは馬単2点で仕留めるつもり



張りは、本命に8割、抑えに2割


予想オッズは、本線で2倍、抑えで6倍といったところ



戻しは、張りの配分から、それぞれ1.6倍、1.2倍



2点張りが的中する確率は1/45



今回は、集めた情報を元にした自分の予想にかなりの自信がある、とはいえ



1/45



つまり2.2%



2.2%の確率に七桁の金を貼り付けよう

と、言うのだから



やっぱり、ギャンブラーなんて人種は



極めつけのロクデナシに違いない


(この章続く)


今週日曜日のメインレース


阪神大賞典



このレースは古馬にとって、春競馬 最大の目標である天皇賞・春を占う重要なトライアルレースだ


3,000mの長丁場のレースで、各馬の力の有る無しが如実に出るため

マギレが少なく、例年堅い決着が多い



配当も平均三桁なので、馬券に一攫千金、宝くじ並みのロマン?を求める人には
面白味の薄いレースだろう




特に今年は、10頭立てと少頭数の上、一頭だけ抜けた実力馬がいる



いわゆるアタマ鉄板のレースで、波乱は考え難い



このテのレースは、オレのスタイルにはおあつらえ向きで



買い目を絞り抜いて、年に何回あるか?
という大駒を張り付ける


勝負レースだ


(この章続く)