竹宮ナオは、先程までのオレと同じように、グレンフィディックとトリュフチョコのゴールデンコンビを嬉々として味わっていた




オレもよく言われるコトだが

実に旨そうに飲み且つ食べる



そしてココが微妙なところなんだが

食べ方や飲み方に気取りがあってはいただけないが、下品でもまたダメ



彼女はトリュフチョコを、形の良い細い指でつまんで口に持っていく所作が実に艶っぽい



絵になるコというのはいるものだ



オレは、グレンフィディックからジャックダニエルズへ変えて、彼女が食べ終わるのをゆっくり待つコトにした



オレならあれだけ絶品のトリュフチョコを残して、他に関心を向けるコトはない



多分、彼女も同じだろう



ヒトミは目を細めて、自分の自信作を一心に味わう彼女を見ている


若い女の子には総じて点数の辛いヒトミだが、竹宮ナオには珍しく第一印象の及第点をつけたようだ




トリュフチョコの最後のひとつを口に入れ、2杯目のグレンフィディックを飲み干して、ようやく彼女は現実に戻ったようだ



夢から覚めたかのように大きな目を瞬いて、オレとヒトミを交互に見て顔を赤らめる



本物の美人はどんな表情をしていても美しい



「ヤダ、わたし…あんまり美味しかったモノだから…」



「オーケー♪最高の褒め言葉だわ」


ヒトミが満足気に頷く



彼女はスッと背筋を伸ばして、ヒトミの目を真っ直ぐに見て



「このトリュフチョコはマスターが作られたのですか?」



「そうよ、それからマスターじゃないわ
アナタがまたこの店に来るつもりなら、あたしのコトはヒトミって呼んで」



「あの、わたしこんなに美味しいトリュフチョコ、今まで食べたコトありません

お料理やお菓子作りが好きで、自分でも作るのですが足下にも及びません」



「いるならレシピをあげるわ」



「ホントですか!?ヒトミさんありがとうございます!」



彼女は喜色満面でヒトミの手を握る


コレにはヒトミの方が面食らったようで、オレの方に慌てて視線を向ける



「アナタ、ジンちゃんに何か用事があって来たんじゃないの?」



「あっ、そうなんです」



竹宮ナオは、弾かれたようにオレの方へ椅子ごと向き直った



(この章続く)


お願い?




「とりあえず座ったら」


ヒトミが竹宮ナオと名乗った彼女に声をかける




「あ はい」



彼女はヒトミを見て微笑むとオレの隣に腰掛けた




一瞬、甘い香りが鼻腔をくすぐる




「お腹空いてる?」




ヒトミが彼女に訊ねる



「いえ、済ませて来ました」




そう答えると、彼女はオレの前に置かれているグラスを見て




「わたしもグレンフィディックを下さい

ロックでチェイサーもお願いします」




「香りだけでグレンフィディックだと分かるの?
やるわねアナタ」



ヒトミが驚いたように言う



「父がシングルモルトのファンだったので…」




少し照れたように彼女が答える



「それと…トリュフチョコも」




それを聞いたヒトミが笑いながら親指を立てる




「ツイてるわよ アナタ、今日のトリュフチョコは暫定日本一よ」



それを聞いた彼女は嬉しそうに頷いて



「ジンさんがあんまり美味しそうに食べていたから…」




美味しいモノが好き
美味い酒が好き


誰でもそうだろうが
そこに価値観を置いて、日常の幸せを見いだせる人間は意外に少ない



オレは会ったばかりの竹宮ナオというコに好意を感じ始めていた



決してその美しい外見だけではなく



(この章続く)


…うん


迷ってる


言葉や文章は難しくて



真意が相手に伝わらないんだ



そういう意味じゃないのに…



何回も何回も



でもね



人は言葉で自分の気持ちを伝えるしかないんだ



誤解されても


嫌われても



仕方ない



独り



それだけ覚悟しとけばいい




だから



伝える



伝わって欲しい

と願う


自分なりに頑張ろう



自己満足じゃ駄目なんだ



伝わるように頑張ろう