【MERC通信】第408号・やむ落ち! 曲目解説「スケルツォ・カプリチオーソ」・その1~まえがき | 大山波岐の「スペシャリティ」を目指す「教え方」講座

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「やむ落ち」とは「やむなく落としたカット集」という意味。


ドラマ制作者がぜひともオンエアしたいと望みながら、種々諸々の事情でオンエアに至らなかったカットのことです。


阿部寛と仲間由紀恵の出世作の一つであるドラマ「トリック」で用いられたことが嚆矢と思われます。


それはさておき。
 

先日出演した伊丹シティフィルハーモニー管弦楽団の「名曲コンサート」では,私が曲目解説の一部を執筆しています。

 

2500字程度ありましたが,実際に掲載されたのは700字程度。

 

掲載したかったのですが泣く泣くカットした部分も少なくありません。

 

そこで,全文掲載しておきます。

 

今日はその第1弾です。

よくもこんな文章を700字にまとめたもんだ。
(適宜改行を入れています。また、実際に掲載された文章に合わせて、最小限の修正を施しています)。
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1833年に作曲された「スケルツォ・カプリチオーソ」は、1877年に作曲された「交響的変奏曲」と並んで、ドヴォルザークのもっとも重要な管弦楽作品とされています。


今回のコンサートの曲目として「スケルツォ・カプリチオーソ」が決まったとき、「ああこの曲は聴き馴染みのある曲じゃないか」と思ったものです。というのは、2014年の「名曲コンサートVol.23」(この時の指揮者は私の高校の先輩でもある中田延亮さんでした)でドヴォルザークの交響曲第8番を取り上げたとき、聞いていた音源(CD)にこの曲がカップリングで入っていたからです。
 

さぞかし有名な曲かと思いきや、意外と演奏機会が少ない曲であるらしく、団員の中でも「今回初めて知りました」というメンバーがちらほら…。曲目解説を書こうにも資料があまりなく、某市民オーケストラ(聞いたこともないような作曲家の作品を多数取り上げるオケとして、コアなファンが集うオーケストラです)で毎回曲目解説を担当している知り合いに相談しましたが、頼みとするその人からも「この曲は全く知らない曲で…」といわれる始末。今回曲目解説を引き受けたことを少々後悔しつつ、私なりに書いてみたいと思います。
 

さて、曲のタイトルである「スケルツォ」も「カプリチオーソ」も、クラシック音楽にかなり精通した人でないと馴染みのない言葉だと思います。
「スケルツォ」とは、快活でおどけた感じの楽想を持つ、テンポの速い3拍子の曲のことです。

 

指揮者をよくごらんになってください。指揮者の右手はひたすら円を描くように動いているはずですが、あの円ひとつ分が「3拍子」なのです。有名なところでは、ベートーヴェンの「第九」の第2楽章が「スケルツォ」ですし、ディズニーのアニメ「ファンタジア」で使われているデュカスの「魔法使いの弟子」も「スケルツォ」です。
 

一方「カプリチオーソ」は「気まぐれに」という意味です。即興的でファンタジーにあふれた,ひらめきやアイデアにあふれた表現が多数用いられ,変化と躍動感のある音楽になります。
 

一般に「スケルツォ」というと、「(複合)三部形式」と呼ばれるかっちりとした構成になっていることが多いのです。この「スケルツォ・カプリチオーソ」も、一応スケルツォ―トリオ(中間部)―スケルツォの回帰(再現)―コーダ、と一般的なスケルツォの形式にのっとっている(ソナタ形式あるいはロンド形式などの要素も取り入れていると述べている人もいます)のですが、ドヴォルザークのやりたい放題、かなり自由に変形されています(この点は後で述べます)。
 

メロディーを自由自在に操って音楽を紡いでいくところが、ドヴォルザークのすごいところ。同時代を生きたブラームスが「彼がごみ箱に捨てたメロディーで、私は一曲書けるだろう」と言ったとか言わなかったとか。(続く)
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