ごきげんよう。栗毛馬です。
昨日の続きです。
うちの老婦人こと母に、おもてなし案についてよくよく聞くと、
メインを一品、サブで小品を少々 それを各人ごとに盛り合わせにしたい
との腹積もりがあって、メインはケーキがいいとのこと。
ただし、パウンドケーキなど日持ちのする焼き菓子はNG(理由は、「だって、みんながやることだもの」との生意気なもの)。
かといって、当日に遠方までおいしいケーキを買いに行くのは難しい。
「ねぇ、あなた、作れない?」
うわっ、来た!
半ば予期してはいたものの、とんでもないことを言い出すから私は慌て、断る口実を大至急考えました。
「最近はお菓子作りから遠ざかっていて、スポンジは年に一回しか作っていない。自信がないし、大変だから嫌だ。失敗できないのもプレッシャー。
そもそもうちのデコレーションケーキは、たったひとパックの生クリームで作る、超節約の自家用ケーキ。
背中なんて、クリームが足りなくていつえもはげちゃびんなんだよ!雪の足りないスキー場みたいに。
それこそ貧乏くさくてとても出せないよ!」
脳みそフル回転させてべらべらとまくしたてると、
「それもそうねぇ」
老婦人、あっさり納得。
撃退成功!ほっとしたところに、
「じゃあ、スコーンは?」
波状攻撃です。
スコーン、ねぇ。
確かに、きゅうりのサンドウィッチとダロワイヨのマカロンでも組み合わせれば、十分に「簡易アフタヌーンティー」になり、それなりに格好はつくでしょう。
ただ、私のスコーンは簡単でどこのよりもおいしいけれど(自画自賛)、見た目はあまりよろしくない。
クワッと「狼の口」が開くタイプではないので、見栄えがしないのです。
それに、昼食を食べた後にスコーン…食べたいか?入るのだろうか?
作り手としては、お腹が空いているときに無理なくおいしく食べてもらいたい。
また、老婦人はキューカンバーサンドウィッチを作ったことがありません。
うまく作れる自信はあるのか?
ま、いざとなったらきゅうりサンドは省いて、『クリーム・ティー』ってことにしちゃえばいいだろうけど…と提案したら、
「そんなもん誰も知らないわよ」
と言われちゃったけど。
このように、問題はすでに多々ありましたが、とりあえず予行演習と今日のおやつを兼ねてスコーンを作ってみることにしました。
…ところが。
水分を入れて混ぜる肝心なところで老婦人が台所に乱入。
あれやこれやと「今する必要のない、面倒な質問」を繰り出してくるではありませんか。
そのせいで手元が狂って牛乳などを多く入れすぎ、混ぜの強度を誤り…。
できあがったスコーンはいつもより一層不細工だったのでした。
ありゃりゃ、まいったな。これは自家用だからいいけど、本番もこんな体たらくだったら、お客さんに出せないぞ。
ちょうどやって来た老婦人にスコーンを示し、
「大事なところで集中を乱されたから、ほら、こんなに不細工になっちゃったよ!」
と訴えると。
老婦人、スコーンを一瞥し…
なんて言ったと思います?
「ショッボ。」
さらに、
「こんなの貧乏くさくて出せないわ!」
だってさ。
なーーーーんて失礼なのでしょう。
私は結構むかつきましたが、こんなことでイチイチ突っかかってたら老婦人の娘なんてやってられないのです。
しかし、不満を表明しておく必要はあります。
ただし、シリアスにはならないように。
「なーーんてヒドイ!そんなこと言う人には一個たりとも食わせないからね!」
こんなふうに、おどけて言うに止めました。
そんなこんなで、「ライトアフタヌーティー」プランも消滅。
ちなみに、不細工スコーンは、水分が多めに入ってしまった分、ふんわりしっとりとしてとてもおいしかったです。