ごきげんよう、栗毛馬です。

今日は、失敗品の話をします。

 

2年近く前のある日のこと。私はエルメスに1枚のカレを探しに行きました。

 

それは、その少し前に購入したものの色違い。

買ったものがあまりに素敵で便利だったから、色違いも欲しくなったというわけです。


今まで選んだことのない色味だから、持っているものと重複しないのが好都合。

それに、値上げの直前で、

「今買っておかなきゃ、損しちゃう!」

との思いもありました。

 

ところが、店舗で実物を見ると、オンライン画像の色とはずいぶん異なる印象。


あら、この部分って、こんな色だったんだ。どうかなぁ…。あまり好きじゃない色だけど…。

 

さらに、顔映りが微妙。

 

迷いましたが、せっかく来たんだし、好きな柄ではあるし、他に欲しいのないし、手ぶらで帰るのもアレだし…。

「きっと見慣れないせい」と自分で自分を言いくるめて、買いました。

私の、5枚目のカレ。

 

帰宅し、自然な光の下で衣装合わせをしてみました。

ベストではないけれど、許容範囲ではあるかな、と結論しました。

 

そして、次の休日。

うちの老婦人と外出の予定が入っていたので、コートの襟元にばばんとそのカレを巻いて繰り出しました!

 

すぐさま新しいカレに気づいた老婦人。

「あー、また買ったね!」

一瞥するや否や言い放ちました。

「ずいぶん※※※※※※色ね!」

 

伏字の部分は、とうてい公にできるものではありません。問題がありすぎます。

 

野暮ったい、あか抜けない、冴えない、ぱっとしない、古臭い、ダサイ、遅れてる、センスが悪い、イモ…。


これら全てを鍋にぶっこんでぐつぐつ煮詰めて、仕上げに哀れみ・蔑み・かわいそうのエッセンスを振りかけたような意味で、装いや持ち物に対するコメントとして、これ以上ひどいものはなく、誰もが絶対に言われたくないに違いない言葉。


この表現に代わる、匹敵する、あるいは勝る語を、私はそれ以来探し続けていますが、2年近く経過した今も発見できていません。

 

 


 でも、どんぴしゃり、言い得て妙。

そのスカーフを形容するのにこれ以上ふさわしいものはない。

ピッタリすぎて感動すら覚え、つい嬉しくなってしまったほど。

 

「※※※※※※だって?!

何を言うか!エルメスが選んだ色だよ!デザイナーと職人が寄ってたかって、半年も掛けて決めた色なんだよ!」

 

一応言い返したものの、…実は私も店で見たとき、頭の片隅でそう思っていたのでした。

「なんか※※※※※※色だなぁ」って。


でも、エルメスが※※※※※※組み合わせのものなんか作るわけがない。気のせいよね。普通の光で見たらまた違って見えることだろう…と言い聞かせて、買ってしまったのでした。

 

「エルメスだって、※※※※※※ものは※※※※※※わよ」

さらりと追い打ちをかける老婦人。


やっぱり、そうか…。

私は観念しました。 


「…実は全くそのとおりだと思う。確かに、※※※※※※。この色、私には難しかったかねぇ」

と絞り出すと、


「それもあるけど、誰がしたって※※※※※※と思う、その色は。センス悪いわよ」

 

つまり、どうしようもないスカーフということですな…。

 

「…」

※※※※※※と評判のスカーフを、都心にしていけるわけがありません。


私は黙ってスカーフを取り、エコバッグの中にしまいました。


実はスカーフを巻くには暑かったから、なしでちょうどよかったのでした。

 

スカーフはその後速やかに、新しいオーナーの元へ旅立ちました。


カレの断捨離で思い出した、間抜けな話。



↓これは大成功だったカレたち