前回は原材料高騰による値上げに関する自分の見解や考え的な話でした。
今回は現在多くの相談が来ている
値上げ
についての実践的な内容について検証してみようと思います。
※今回は飲食店全体ではなく、ラーメン店に特化した内容になります。
まず、ここ最近で既に多くの店舗が値上げを実施したのではないでしょうか。
数十円程度の値上げから中には100円以上の値上げ、または量を減らしたり、無料サービスの廃止や内容変更など、店舗側はこの原材料高騰に様々な対策をしていると思います。
その中で
「どれぐらい値上げしたらいいのか」
というのは事業者に取って切実な問題ですよね。
YouTubeなどでも話した
「値上げによってお客様が減ってしまうのではないか」
という「怖さ」
これは多くのラーメン店が感じていると思いますし、だからこそどれぐらいの値上げをしたらよいのか悩むのではないかと。
正直に言うとこの「値上げ」は様々な要素を考慮して適正な価格の値上げ幅を設定することがポイントだと思います。
その店舗の認知度、人気度、商品、商品構成、地域性、周辺のライバル店の状況など、様々な観点から決めていく必要がありますね。
または、まだ「値上げをしない」という判断をする店もあると思いますし、そのあたりを現実的にどのように判断していくのか。
これらについて、値上げ敢行後の反応や情報から自身の見解、マーケティング的な観点も含めていつものように項目別で検証してみましょう。
ただし、今回の値上げはコロナによる飲食事情の急激な変化やここまでの急激な食材高騰によって見えていない部分も多いので、あくまでも「自身の見解」として参考にしてもらえればと思います。
①値上げによるクレーム、影響は実は少ない
自身のところに値上げ後のお店の情報はかなり多く入っているのですが、今のところほとんどの店にクレームはなく、売上が急激に下がるなどの影響は出ていません。
シンプルに値上げ分の売上が上がる、出数は減っても売上は変わらずというお店が多い模様です。
これは実は5年、10年前など、それ以前の商品の値上げに関しても、実はその値上げによって売上が低下したケースというのはかなり少ないです。
ただ、その値上げのやり方によって影響が出てしまう場合も多いので、中には失敗してしまうケースもあります。
今回はそういう事態にならないように、検証してみましょう。
②ステルス値上げ、サービス中止はしない方がいい
ここ最近の食品メーカーは「内容量を減らす」という
ステルス値上げ
をしているケースも多くあります。
ポテトチップスなどのスナック菓子でいくつかありましたね。
これをラーメン店に置き換えると、商品自体の値上げはせずに
・麺量を減らす
・スープ量を減らす
・チャーシューを薄くする
こんな感じでしょうか。
または
・麺大盛無料サービスの廃止
・ランチサービスの廃止
・クーポン券の廃止
このような形もあるかと思います。
これ、個人的にはあまりオススメしていません。これは
喫食量
という概念から、その店の食後の満足度がある程度決まっている場合があるからです。
「喫食」とは食事を楽しんで美味しく食べることを意味します。要は食事を満足して食べられる量が「喫食量」となるわけですね。
例えば、1杯のラーメンの量を考えると
・スープとタレ 350cc
・麺量(茹で後) 250g
・トッピング 100g
この量がデフォルトのラーメンがあったとします。
この胃の中に入る総量(700g)が「喫食量」になるわけですが、食べる側はそのトータルの喫食量で満足感を得ている場合があります。
ということはステルス値上げをして喫食量を減らすのは価格が据え置きでも満足感を減らすということにもなってしまうわけです。
また、大盛無料、ライス無料などのサービスをしている店の場合、そのサービス分を含めた量が喫食量になっているケースも多く、この「喫食量」という概念はメニュー構成やメニュー戦略においても非常に重要なポイントになります。
個人的には価格据え置きで量を減らす、サービスを止めるという方法は取らず、シンプルに値上げをするか、無料ではなく有料にした方がいいと思っています。
成人男性、成人女性では満足感を得られる喫食量は違いますし、店によって、商品によっても変わりますし、ターゲットによっても変わってくるわけです。
ある程度店の形が出来ている場合、メニュー構成の内容量を大幅に変更するのはあまり良くないと思います
※この「喫食」については今度別のコラムにでも
③客単価から導き出して設定価格を決める
ほとんどのお店において
客単価
というのはある程度決まっていると思います。
ラーメン店では700円台から1000円台まで、店の基本の設定価格やサイドメニュー、サービス、ターゲットなどによってかなり変わりますよね。
この客単価というのは、現在のその店で一回の食事で使ってもらえる単価の基準というわけです。
ということはその基準のある程度の上下範囲であれば、そのお店の食事として使ってくれるということになります。
今、自分のところに来る相談で多いのは
ラーメン一杯をどれぐらい値上げしたらよいか
この部分に注目しがちなのですが、メイン商品だけでなく、2番、3番商品、サイドメニュー、トッピングなどの全体を見つめ直すことがポイントになる場合があります。
そうすると、この客単価を基準にして値上げをする、客単価のベースを上げることによる値上げというパターンも考えることが出来ます。
客単価800円の店を急に1000円以上にするとなると、大幅なメニュー変更やリニューアルになってしまうと思いますが、客単価を50円程度上げるのであれば、単なる値上げだけでなく、メニュー構成を変える、新メニュー、サイドメニューを増やすなど様々な方法が取れます。
原材料の値上げに対する対応だけではなく、メニュー全体を見つめ直して、原価計算も細かくしてから価格設定をすることで、適正な原価率を導いたり、シンプルに原価削減に繋がる場合もあるので、この値上げの判断をきっかけに全体の客単価を検証するのはいいと思います。
④根本的な見直し
今回の原材料高騰は今までにないペースなので、これを機会に全体を根本的に見直すというのも必要かもしれません。
元々原価率の高い商品、値上げ幅の高い食材を使用している商品、仕込み時間のかかる商品、ロスが出てしまう商品など
利益率の低い商品
を今回の原材料の高騰というきっかけによって、見つめ直してみてはどうでしょうか。
もちろん、この場合はレシピ変更だけでなくコンセプトや商品をガラっと変える必要もあったりすると思いますし、フルリニューアル的な形になることもあると思います。
しかし、この原材料の高騰はまだまだ続く可能性があります。
その業態、コンセプトによって、いくら企業努力や商品の値上げだけではどうにもならないケースも出てくると思っています。
商品の一部変更、修正、メニュー構成の修正、仕入れ業者の変更、仕入れ商品の変更、レシピ修正、仕込みオペレーションの修正…など、様々な観点で対応していくことも必要になってきます。
ただ、安易なリニューアルはオススメしませんし、これらのケースはしっかりと全体を見つめ直して判断する必要があります。
今回も長々と偉そうに書きましたが(汗)、単なる値上げだけでなく、この機会に事業全体を見直すというのは重要だと思います。
本当に今回の原材料高騰は全ての事業者、そして消費者に取って大打撃です。
それでも、その中で最善の方法を模索していくことは必要ですし、飲食に関わる事業者はそれに対応していかなければなりません。
こういった関連の相談は今までもかなり多く受けていますし、相談だけであれば全て無料でやっています。
値上げ前、値上げ後、様々なケースで今後色々な判断が必要になると思いますので、気軽にご相談ください。
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