メモリーが足りませんと警告が表示されることがあります。このようなときには、メモリーを増設するのが手っ取り早い解決策です。ですが、どんなメモリーを選べばいいのでしょうか? 安売りメモリーでも大丈夫でしょうか?
そんな時に役立つのは、メモリーについての知識です。今回はメモリーについての基礎知識を紹介します。
メインメモリー
メモリーとは
パソコン本体(CPU)が作業に使う情報(データ)の記録用に一時的に使う記憶装置のことです。主記憶装置と呼ばれます。
メモリーはRAM(Random Access Memory)と呼ばれる作業用にデータを一時的に記録しておく電子部品で、作業が終われば、そのデータは消えてしまいます。電卓のように結果を残す必要がなければ、消えて無くなってもよいのですが、ワープロで作った文書のように作業結果を残しておかなければいけない場合もあります。
そのような場合には、別の記録装置に作成されたデータを移し替える必要があります。この記録装置はRAMとは違い、書き込みや読み取りとも可能で、ストレージと呼ばれます。RAMの「主記憶装置」に対して「補助記憶装置」とも言います。
ストレージには、非常に大きな容量を記録できるハードディスクやSSDなどが使われます。
※RAMに対して、既に決まったデータが書き込まれている(組み込まれている)メモリーは、ROM(Read Only Memory)と呼ばれます。
ROMは読み取り専用で、新たなデータを書き込むことはできませんが、電源が落ちても記録された内容が消えることはありません。
(日本のスマホではストレージのことをROMと呼んでいます。スマホ用語は、PC用語とは意味が違うことがあります。)
メモリーが足りないと
パソコン本体は、別の記憶媒体にRAMでは足りなくなった分の記録場所を確保します。その場所として選ばれるのは、補助記憶装置、つまりハードディスクやSSDなどのストレージです。
ハードディスクやSSDは、メモリーと比べれば、はるかにアクセススピードが遅いので、作業は遅々として進まず、「処理が(とても)重い」状態に陥ります。
メモリーの容量
必要な容量を確保 … メモリー選びの鉄則 最重要
試用するソフト・アプリの環境条件を確認して決めましょう。「最小要件」はとりあえず動かせるというレベルなので、快適動作については、どれくらい増やせばよいかを調べる必要があります。
Windows-OSはバージョンアップのたびに重くなっていくので、長く使っていくのであれば、8GB追加しておくのがよいと思います。
最大で何GBまで使えるかをマザーボードの仕様で確かめる
最大容量を超えた分はPCから認識されません。
また、使用するOSによっても最大搭載量は制限を受けます。
Windows-Homeは128GB、Proは2TBまでです。(Win10,11 64bitの場合)
また、何枚挿せるかマザーボードのメモリースロットの数を確認しておきましょう。どのメモリー規格(DDR4またはDDR5なのか)かも一緒に確かめておきましょう。
2枚組や4枚組のセットもありますが、お買い得セットということではなく、2枚セットであれば「デュアルチャネル」の動作を保証するという意味です。
マルチチャネル・シングルチャンネル
メモリーが複数枚挿してあれば、通常は、CPUから1枚ずつ順番にアクセスされることになります。(シングルチャンネル)
しかし、マザーボードがデュアルチャネルをサポートしていると、同時に2枚のメモリーにアクセスすることができるようになります。
これにより速度が向上します。
まれに、セットではないメモリーをデュアルチャンネルのスロットに挿すと動作することがあるようです。2枚の容量が違っている場合には、少ない容量分までをデュアルで、はみ出した分をシングルで認識する仕様になっています。
マザーボードがデュアルチャネルをサポートしているならば、1枚で必要容量を賄うよりも2枚で賄う方が速度性能は若干有利です。
なお、マザーボードやCPUの仕様によってはトリプルチャンネルや(3枚)やクアッドチャンネル(4枚)も扱えるものが存在しました。(マルチチャンネル)
ただし、メモリースロットが4つのものではデュアルチャンネルしかフォローしていません。
DDR5では、4枚挿しをすると、速度が低下します。以前、DDR4でも同様の現象が起きていました。対応した製品が出てくるまでは、大容量メモリー2枚挿しで対応しましょう。
メモリーの種類
ノート用か、ディスクトップ用か
S.O.DIMM
大きさが違うので一目瞭然ですが、ネット購入の際には注意しましょう。
ECC、Reg
ECC(Error Checking and Correcting):メモリーエラーを自動で検出、修正するというメモリー。サーバーやワークステーション向け。ECCに対応したシステムでないと使用できません。
Reg(Registered Memory):大容量メモリーを安定動作させるためのメモリーを積んだメモリー。サーバーやワークステーション向けです。対応したシステムでないと使用できません。
メモリー規格
DDR(Double Data Rate)SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)
DDR:二重データ転送率 SDRAM:同期式動的RAM
ベースクロックの立ち上がり時だけでなく、立ち下り時にもデータを転送することで、データの転送を倍速で行うことができるようにしたメモリーです。
(実際は電圧の立ち下り検出は困難、反転させ、立ち上がり検出を使い実現)
メモリー周波数(メモリクロック)は、クロック周波数(バスクロック)の2倍になります。これが、DDRです。
「DDR4-3200」を例にとると、DDRの直後にある数字は世代を、「-」の後の4桁の数字は、動作周波数(メモリクロック)(単位はMHz)を表しています。大きいほど速くなります。
現在(2024年)では、DDR4とDDR5の2種類のRAMが主流です。
モジュール規格
メモリーの仕様は、上記のメモリ規格ではなく「DDR5 PC5-38400」のような「モジュール規格」で表示されています。
PC5の「5」は、DDRの世代を表し、「-」以下の数字は、データ転送速度(単位はMB/s)を表しています。
データ転送速度は動作周波数(メモリクロック)の8倍になります。
規格の変換の例
メモリー規格からモジュール規格へ
DDR5-4800 → 4800×8=38400 → PC5-38400
モジュール規格からメモリー規格へ
PC-38400 → 38400÷8=4800 → DDR5-4800
なお、モジュール規格で十位以下の端数が出た場合には、切り捨てられ00と表すのが普通です。
メモリーモジュール
DDR4
DDR5
欠き取り(Module Key)位置が違うことからも分かるように、DDR4とDDR5には互換性はありません。どちらに対応しているかをマザーボードの仕様で確かめておきましょう。
ネイティブメモリーとオーバークロックメモリー
データ転送速度が速ければ速いほど高性能なメモリーと言えます。
ネイティブメモリーとオーバークロックメモリーについてはこちらを参照してください。
オーバークロックメモリーの特徴
製品仕様の詳細を見るのが一番です。ですが、製品ごと、メーカーによっても表示に統一性はありません。
SPD Speed、SPD Voltage と Tested Speed、Tested Voltage が載っていれば、それで確かめられるはずですが、実際には、購入してバイオス等の設定で確認してみなければわからないことが多いです。
オーバークロックメモリーやオーバークロックが可能なメモリーにはヒートシンク(ヒートスプレッダー)がついていることが多いです。
また、動作電圧がDDR4であれば、1.2Vですが、1.35Vとか1.5Vであれば、それはオーバークロックメモリーです。
レイテンシ
CL 18-18-18-43
これは、メモリータイミングです。書かれている数がレイテンシの値です。
レイテンシについて詳しくはこちらを参照してください。
差し替えと増設
差し替え
メモリーが1枚しか挿さってない場合に1枚だけ購入して増やすのは、お勧めできません。マザーボードがシングルチャンネルしかフォローしていないならば、そういう選択もあるでしょうが、ほとんどのマザーボードはデュアルチャンネルを実装していますから、2枚セットのメモリーを購入して、差し替えをするのがお勧めです。
メモリースロットが4つあって、既に2枚組で挿してある場合、例えば16GB既にあってあと16GB増やして合計で32GBするようなときには、既存のメモリーの性能と新しく増やそうと考えているメモリーの性能を比べる必要があります。
増やそうとしているメモリーが高性能な場合には、既存のメモリーが足を引っ張ります。高性能を優先するならば、1枚16GB、セットで32GBのメモリーに取り換えるのがお勧めです。
増設
容量優先という場合には、既存のメモリーを活かし、空いているスロットに新しいメモリーをセットします。
速度、レイテンシともに低い値にセットされます。しかし、実のところメモリーによる性能アップはそれほど実感できませんから、ほとんど気にならないかもしれません。「重い」とは違う「もっさり」感が出ます。