1970年代半ば、パンク前夜のブリティッシュ・ロック・シーンにも、ポップで生きのいいロックを奏でる新人バンドが多数登場していました。しかし、クイーンを例外として、その多くはパンクやベイ・シティ・ローラーズに上書きされてしまった感じがいたします。
そんなバンドの一つがミスター・ビッグで、本作品は1975年に発表された彼らのデビュー作「甘美のハードロッカー」です。ローリー寺西編集のコンピ盤「甘美のロックンロールB級」のタイトルはこの作品へのオマージュでしょう。コンピにもミスター・ビッグが登場しますし。
後にアメリカに大ヒットを飛ばす同名バンドが登場するのでややこしいことこの上ありませんが、逆に彼らを愛する人々に、一言呟かせるきっかけを与えたということでは、「トゥ・ビー・ウィズ・ユー」のミスター・ビッグの恩恵を被っているともいえます。
このバンド名には、マネージャーが独断で勝手につけてしまい、引っ込みがつかなくなって採用したという有力な説がついています。元の名前はバーント・オーク、ロンドン郊外の地名です。大口をたたくキャラではなく、本来は地味な人々だったようですね。
ミスター・ビッグの中心はギターとボーカルのディッケンで、ドラムのヴィンス・チョーク、ベースのピート・クロウザーとのトリオで1960年代末から活動していました。チョークは神経症でバンドを離脱しており、その際にジョン・バーニッツがドラマーとして加入しています。
ここが面白いところなのですが、チョークが復帰してもバーニッツはそのままバンドに残り、4人組には珍しいツイン・ドラム体制となりました。この体制で1974年にはレコード会社と契約を交わし、シングル・デビューを果たしますけれども、残念ながらヒットには至りませんでした。
しかし、モット・ザ・フープルのマネージャーが彼らを気に入ってマネジメントを引き受けると、彼らにも運が向いてきます。ツイン・ドラムを活かしたハードロッカー路線で、レコード会社もEMIに移籍した上で、デビュー・アルバムとなる本作品を発表しました。
この頃にはクイーンの「オペラ座の夜」ツアーをサポートしており、クイーンに続くスター候補として大いにもてはやされ、本作品も絶賛されるに至りました。クイーン人気の高かった日本でももちろん注目され、ほぼ全曲に邦題をつけて大々的に売り出されました。
シングル・カットされた「ワンダフル・クリエイション」と「青春の甘き日々」を並べてみても、その幅広さは一目瞭然です。また、もう一つのシングル曲、「麗しのザンビア」はザンビアなのになぜか中華風です。さらに、タイトル曲はギター全開のハード・ロックです。
「恋に焦がれて」は演劇的ですし、「愛しのバイオレット・メイ」はクラシック調で始まります。パンクに席巻されてしまわなければ、このままビッグになっていった可能性もあるのかなと思わないではありません。埋もれてしまうのは残念な典型的な70年代ロックの一つです。
Sweet Silence / Mr. Big (1975 EMI)
Tracks:
01. Time Base 異次元の感触
02. Wonderful Creation
03. Golden Lights 愛は心の燈火
04. Uncle John 'B'
05. I Ain't Bin A Man 恋に焦がれて
06. Sweet Silence 甘美のハードロッカー
07. Zambia 麗しのザンビア
08. Enjoy It 香しき人生
09. Violet May 愛しのバイオレット・メイ
10. For The Fun To Find 青春の甘き日々
11. Appeared A Shining Throne 輝ける玉座
12. Throne Second Amendment 永遠の光
Personnel:
Dicken : vocal, guitar, harmonica, cowbell
Peter Crowther : bass, guitar
John Burnip : drums, percussion
Vince Chaulk : drums, percussion, chorus
***
Ian Blunsdon : keyboards
John Punter : synthesizer, percussion
Robert Hirschman : trombone, bass
そんなバンドの一つがミスター・ビッグで、本作品は1975年に発表された彼らのデビュー作「甘美のハードロッカー」です。ローリー寺西編集のコンピ盤「甘美のロックンロールB級」のタイトルはこの作品へのオマージュでしょう。コンピにもミスター・ビッグが登場しますし。
後にアメリカに大ヒットを飛ばす同名バンドが登場するのでややこしいことこの上ありませんが、逆に彼らを愛する人々に、一言呟かせるきっかけを与えたということでは、「トゥ・ビー・ウィズ・ユー」のミスター・ビッグの恩恵を被っているともいえます。
このバンド名には、マネージャーが独断で勝手につけてしまい、引っ込みがつかなくなって採用したという有力な説がついています。元の名前はバーント・オーク、ロンドン郊外の地名です。大口をたたくキャラではなく、本来は地味な人々だったようですね。
ミスター・ビッグの中心はギターとボーカルのディッケンで、ドラムのヴィンス・チョーク、ベースのピート・クロウザーとのトリオで1960年代末から活動していました。チョークは神経症でバンドを離脱しており、その際にジョン・バーニッツがドラマーとして加入しています。
ここが面白いところなのですが、チョークが復帰してもバーニッツはそのままバンドに残り、4人組には珍しいツイン・ドラム体制となりました。この体制で1974年にはレコード会社と契約を交わし、シングル・デビューを果たしますけれども、残念ながらヒットには至りませんでした。
しかし、モット・ザ・フープルのマネージャーが彼らを気に入ってマネジメントを引き受けると、彼らにも運が向いてきます。ツイン・ドラムを活かしたハードロッカー路線で、レコード会社もEMIに移籍した上で、デビュー・アルバムとなる本作品を発表しました。
この頃にはクイーンの「オペラ座の夜」ツアーをサポートしており、クイーンに続くスター候補として大いにもてはやされ、本作品も絶賛されるに至りました。クイーン人気の高かった日本でももちろん注目され、ほぼ全曲に邦題をつけて大々的に売り出されました。
確かに本作品では新人らしいはつらつとした生きのいいサウンドが展開されています。ほぼディッケンのワンマン・バンドのようですが、その高音ハスキー・ボーカルが爽やかに冴えわたります。ビーチ・ボーイズっぽいところも目につく完成度の高いサウンドです。
シングル・カットされた「ワンダフル・クリエイション」と「青春の甘き日々」を並べてみても、その幅広さは一目瞭然です。また、もう一つのシングル曲、「麗しのザンビア」はザンビアなのになぜか中華風です。さらに、タイトル曲はギター全開のハード・ロックです。
「恋に焦がれて」は演劇的ですし、「愛しのバイオレット・メイ」はクラシック調で始まります。パンクに席巻されてしまわなければ、このままビッグになっていった可能性もあるのかなと思わないではありません。埋もれてしまうのは残念な典型的な70年代ロックの一つです。
Sweet Silence / Mr. Big (1975 EMI)
Tracks:
01. Time Base 異次元の感触
02. Wonderful Creation
03. Golden Lights 愛は心の燈火
04. Uncle John 'B'
05. I Ain't Bin A Man 恋に焦がれて
06. Sweet Silence 甘美のハードロッカー
07. Zambia 麗しのザンビア
08. Enjoy It 香しき人生
09. Violet May 愛しのバイオレット・メイ
10. For The Fun To Find 青春の甘き日々
11. Appeared A Shining Throne 輝ける玉座
12. Throne Second Amendment 永遠の光
Personnel:
Dicken : vocal, guitar, harmonica, cowbell
Peter Crowther : bass, guitar
John Burnip : drums, percussion
Vince Chaulk : drums, percussion, chorus
***
Ian Blunsdon : keyboards
John Punter : synthesizer, percussion
Robert Hirschman : trombone, bass