椿組感想まとめ3 | メメントCの世界

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椿組感想まとめ3

 

ドキュメンタリー監督の貞末さんから!

観てきました! 

『まっくらやみ・女の筑豊(やま)』

 新宿 シアター・トップスにて 19日(日) まで

http://tubakigumi.com/upcoming-stage/

「まっくら~女坑夫からの聞き書き~」(1961年)をルポした森崎和恵さんは、谷川雁さんや上野英信さんらと1958年(昭和33年)、筑豊炭鉱のあった中間市(旧遠賀郡)で文芸誌『サークル村』を創刊。この活動から、いわゆる文学と市民労働者を融合させた草の根運動のモデルを牽引しながら、やがて閉山に追い込まれる大正鉱業の労働争議にも深く関わっていった。

 椿組の舞台『まっくらやみ・女の筑豊(やま)』は、森崎さんをモデルにした女性作家が、子を伴ってこの地に移住し、炭坑の生き字引き的老女を取材するところから始まる。

 落盤事故や火災の恐怖と生への希求、暗闇の坑道で命を賭けた連帯から生まれるエロス、戦後の経済成長を支えてきた誇りと挫折・・・そこには、炭坑に生きた多くの男女労働者の怒号と歓声が熱く行き交うのだ。ものすごいエネルギーだった。まさに地底で石炭を燃やしているような・・・そしてまさしくこの町で生まれ育った我が父が、郷里の兄姉と語る方言が舞台を駆け巡って、わたしの心は始終締め付けられながら高鳴った。

 わたしが生まれ育った時代はちょうど岩戸景気と呼ばれた高度経済成長の真っ直中・・・「もはや戦後ではない」と経済白書では謳われたその時代は、エネルギーの主役が石炭から石油に交代した「エネルギー革命」の時代でもあり、多くの炭坑を閉山に追い込んだ時代だった。その中で、炭坑の存続もあやしくなったこの町に住みついたこの女性作家が描いたものは、権力が掲げる儚き所有欲と、それに溶け従わされて生きた時代の女性炭坑労働者の、か弱く、しかし逞しく愛しき存在感ではなかったか。

 芝居が終わって外に出ると冷たい風の新宿を未曾有の黒い影が湧き消えていた。煌煌ときらめくビルの灯りが儚く見えた。久しぶりの電車往復ではハコさんの「飛びます」をエンドレスで聴いた。車内の誰もがスマホしか見ていなかった。いろんな意味で今、社会は「まっくらやみ」に近いが、舞台に乗り越えるエネルギーを分け与えてもらえた気がして、心は熱かった。

 19日(日)までです。

 

 

上野千鶴子さん ツイッター

https://twitter.com/ueno_wan/status/1626213967113891841?s=20

 

 

 

 

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