アンナのサモワール
今回のお芝居では、様々な小道具をあらゆる方面からお借りしました。
それで、最も重要な小道具であるサモワールに纏わるお話を!
「私が上海に留学した1999年に同じ上海医科大学の語学班にモルドバ人のアンナがいました。
彼女と初めて会った時、私は大学時代に習った拙いロシア語で挨拶し、彼女は私が旧ソ連の文化に興味があることを理解しました。彼女のお祖父様は上海出身の医者(中医)で中ソ蜜月時代の1950年代にソ連に渡りモルドバのキシニョフで家庭を築きました。
サモワールは1961年にトゥーラで製造された家庭用の電気式です。当時ソ連家庭の一家に一台は有った一般的な物です。このサモワールは彼女が小さい時から家に有ったもので、1990年代末に一家で上海に引っ越し際、家財道具と一緒にもって来られたものです。湯沸かしくらいどこでも手に入ったでしょうけど、愛着が有ったのでしょう。アンナは私の友達の彼女となり、私達3人はとても親しく付き合いました。そんな中彼女は、私が大学の卒論が中ソ関係史であり、ソ連に興味があることを知り、家に有ったソ連製の時計、装飾工芸品、レーニン像、サモワール等等、いろんな物を贈ってくれました。お父様はこれら旧ソ連の品々をとても誇りに思っておられました。彼女は今ロンドンにいますがこのサモワールがチェーホフの演劇の小道具として役に立つことを知りとても喜んでいます」
サモワールを貸して下さった鹿児島氏より。