ミュージカル「彼女たち」劇評より | メメントCの世界

メメントCの世界

演劇ユニット「メメントC」の活動・公演情報をお知らせしています。

ミュージカル「彼女たち」劇評より

 

日刊ゲンダイ記者の山田勝仁さんから、ご感想いただきました。

2018年のシブゲキの上演からご覧頂き、大絶賛を毎回、頂いています。本当に感謝!

彼女たちは、この本番の二日間で、ものすごく成長しました。

17歳は永遠はじゃない!!でも、私もあなたも17歳でした!!

 

山田勝仁

『渋谷CBGKシブゲキ!で見た劇団BDPアカデミーの「ミュージカル 彼女たち」(脚本・演出=嶽本あゆ美、作曲・歌唱指導=薮内智子、振付=中沢千尋)があまりにも素晴らしい舞台だったので、今回は「日曜は外出しない」という禁を破って光が丘IMAホールへ。

 BDPは「Big Dream Play」の略。主宰者・青砥洋氏の児童劇団「大きな夢」が母体。

 舞台は私立ミッション系高校・聖クレマン学園。創立記念公演に演劇部がアーサー・ミラーの 「るつぼ」を上演することになる(劇中劇では「セイラムの魔女」)。

 「るつぼ」は1692年のアメリカ、マサチューセッツ州 セイラムの町で実際に起こった魔女裁判を題材にしたもの。

 召使いの少女アビゲイルは実直な農夫と一夜の関係を持ってしまい、彼を独占するために彼の妻を「魔女」として告発する。村人の悪魔憑きへの恐怖や日頃の相互不信と相まって、村には壮絶な魔女狩りの嵐が吹き荒れる……というもの。

 この物語には男子も必要なことから顧問はほかの部の男子を集めてくる。

 しかし芝居の稽古中に少女が倒れる。

 そこに転校生の須崎藍羅(植田温子)が現れる。演技がずば抜けている彼女は主役のアビゲイルに抜擢される。

 しかし、彼女の目的はほかにあった。

 それは10年前の兄の失踪の真相の追究だ。演劇部部長だった兄はあることから集団イジメにあっていたらしい。

 一方、ネットでは藍羅についてのさまざまな噂が撒き散らされる。いわく素行不良、援交、退学…。

虚構と現実が入り乱れる「セイラムの魔女」の稽古場で、様々な葛藤に悩み苦しむ女子高生たちの姿が浮き彫りになっていく。

 役者たちは10代が主流だが、歌も演技もダンスもその辺のミュージカルが裸足で逃げ出すほどの巧さ。

 等身大の少女たちが繰り広げる悪意と残酷の物語。

 教師役はゲネプロで病気降板。ピンチヒッターに名乗りを上げた演出助手・福井佑実が見事に代役を果たした。

 休憩挟み2時間30分。

 今回の演出、中澤千尋は嶽本の演出を踏襲しながら振付などバージョンアップした。

 この演目は毎年見たい。』

 

山田さんには5月16日13時の回を観劇いただきました。

 

前回の劇評はこちらです。

山田 勝仁

2018年9月22日  · 

久しぶりに虚心坦懐、「無」の状態で「演劇」を観たらこれが素晴らしいのなんの。

渋谷CBGKシブゲキ!で上演中の劇団BDPアカデミー「ミュージカル 彼女たち」(脚本・演出=嶽本あゆ美、作曲・歌唱指導=薮内智子、振付=中沢千尋、演出協力=青砥洋)のこと。

BDPは「Big Dream Play」の略。主宰者・青砥洋氏の児童劇団「大きな夢」が母体となっている由。

青砥洋氏はNHK放送劇団出身。名作ラジオドラマを聴いているとよく出演者で名前が出てくる。

今回、嶽本さんのご好意で初観劇。

サブタイトルはアーサー・ミラー作「るつぼ」による変奏曲。

舞台は私立ミッション系高校・聖クレマン学園演劇部。アメリカの代表的劇作家アーサー・ミラーの 「るつぼ」を上演することになる(劇中劇では「セイラムの魔女」)

1692年のアメリカ、マサチューセッツ州 セイラムの町で実際に起こった魔女裁判を題材にしたもので、17才の少女たちの言動が魔女狩りを助長し、町を混乱に陥れる物語。

演劇部の少女たちだけでは上演できないため、ほかの部の男子もかき集められる。

部長・芳沢の指導で始まる稽古。

しかし、集団ゲームで一人の少女が倒れる。どうしたのか…。

そこに謎めいた転校生、須崎藍羅が現れる。

彼女は、この学校の演劇部部長で10年前に失踪した兄の行方を探しているという。ネットでは彼女についてさまざまな悪意が撒き散らされていた。援交、退学…。

しかし、演技がずば抜けている彼女は主役のアビゲイルに抜擢される。

劇中劇と、現実の少女たち同士の悪意や、ネットでの集団イジメ、ウワサ話が演劇部員の間で共有され、呼応し、波紋を広げていく。

虚構と現実が入り乱れる「セイラムの魔女」の稽古場で、様々な葛藤に悩み苦しむ女子高生たちの姿が浮き彫りになってくる。

こんなに無心に舞台と向き合い、没入したのは久しぶりかもしれない。まるで10代の時に初めて芝居を見始めたたときのような。

役者たちは10代が主流、見知った俳優は一人もいない。それがリアリティを持つ。

インターネットは現代の悪魔か…。

等身大の少女たちが繰り広げる嫉妬や悪意。少女期特有の残酷さ。

舞台の上で活き活きと息づいている少女たちが愛おしくなる。ダンスも歌もキレっキレ。

休憩入れて2時間25分。

今日はBキャスト。芳沢役が本吉南美、須崎が上原咲季。

Aキャスト版も観たいと思った。ダブルキャストの芝居で片方も観たいと思ったのは初めてだ。

終演後、嶽本さん、青砥さんに挨拶。

失踪した兄を劇場に探しに来た少女…寺山修司の「青ひげ公の城」はアーサー・ミラーだったのか?