大平洋食堂閉店・誠之助の間宮啓行さんありがとう | メメントCの世界

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大平洋食堂閉店・誠之助/間宮啓行さんありがとう

 

12月6日に座・高円寺での閉店、そして本日、無事に配信も終わりました。「太平洋食堂」完全閉店です。コロナ禍の中、稽古、本番と無事に通り抜けられたことに、胸を撫でおろしております。演劇、舞台芸術にとっても厳しい状況が続きますが、無事閉店できたこと御礼申し上げます。舞台は国際交流基金より、五か国語翻訳つきで配信されました(2022~)

上演映像は下記からどうぞ。

国際交流基金 Stage Beyond Borders 「太平洋食堂」五か国語字幕つき映像

門真国際映画祭大阪府知事賞

優秀作品賞

最優秀主演男優賞(間宮啓行)

優秀助演男優賞(斎藤慎平)

優秀助演女優賞(明樹由佳)

 

 

全ての出演者に感謝申し上げます。そして三回の上演で膨大なセリフに奮闘してくださった皆様、お疲れ様でした。間宮さんと明樹さんの夫婦も長かった~~~

もうほんとうにお疲れ様でした!

 

 

 

今回のパンフレットの内容をご紹介いたします。

 

 

時代閉塞に抗する「太平洋食堂」――1910年と2020年・・・成田龍一

 

 

2020年は、思いもよらぬコロナウイルス禍のなかに始まった。もともと、「大逆事件」(1910年)から110年にあたる年であった。日露戦争(1904-05年)をめぐり反戦の議論こそ見られたが、戦後のこの時期は、軍国主義が強まり、ロシアに勝ったという浮かれ調子と経済的な不況のなか、ナショナリズムがますます強まる時期であった。和歌山県新宮で、医院を開業するかたわら、「太平洋食堂」を開き、人びとと接しながら活動を行っていたドクトル大石誠之助のうえにも、こうした状況が覆いかぶさってきた。そして大石が「大逆事件」に連座させられた年、日本は朝鮮を植民地化するに至った。

反対の動きを封じ込め、他国への侵略を行う――日本が帝国主義化したということである。1910年に犯罪が多発したというのも、かかる事態と無縁ではなかろう。より若い世代に属する石川啄木が、こうしたなかで「時代閉塞の現状」という文章を草したことはよく知られている。啄木は、今日の青年がもっている「内訌的、自滅的傾向」――「理想喪失の悲しむべき状態」は、「時代閉塞」の結果であると嘆じた。

ひるがえって、2020年。この年もまた、「時代閉塞の状況」を強く印象付けることとなった。その前から政治が閉塞し、議論をせずに法解釈を変更するなど、立憲政治がないがしろにされるなか、新型コロナウイルス禍という事態が追い打ちをかけた。1910年が批判意見を封じ、植民地支配を開始するのに対し、2020年は、反対意見と向き合わず、形式的な手続きすら蹂躙している。ともに強権があらわになり、頽落の年となっている。

「太平洋食堂」は、人が集まり会食をし、議論をすることを目的とした「場」であり「空間」であった。大石がおこなったその営みを記憶し、私たちの活動の糧にしていくことを嶽本あゆ美『太平洋食堂』は主張している。そう、そのことが、2020年を経ての「明日への考察」に連なっていく手がかりのひとつとなる。

 

成田龍一

1951年大阪府生まれ。歴史学者。専門は、近現代日本史。元日本女子大学人間社会学部教授。

近著では、『近現代日本史との対話』集英社新書、2018年、【幕末・維新—戦前編】【戦中・戦後—現在編】

 

 

 

 

「再々開店とダイレクト・アクション、そして閉店の辞」 メメントC代表 嶽本 あゆ美

 

 

  このたびは、観客の皆様を劇場とオンラインで迎えられた事に感謝申し上げます。

さて、私が大石誠之助と出会って15年、上演活動を始めて11年、多大なる皆様のご贔屓に預かり、2013年から2015年までに、全国でのべ七千人の観客の皆様に観劇頂くことが出来ました。御縁というものに心より御礼申し上げます。もともと大逆事件も仏教も法律も門外漢だった私に熱心にご教示下さった諸先生方、活動を応援下さった各地の方々、戯曲集出版に手を差し伸べてくれた方々、中には既に鬼籍に入られた方も少なくありませんが、これまでの上演で御恩も返せたのではないかと胸を撫で降ろしております。脚本家は、取材した人や過去の記憶を預かり、そこからセリフを書きます。他人の言葉ではありますが、何か資料を書き写したのではなく、私の脳内劇場を通ることで、人格をいくつも生み出します。幸徳秋水になったり、管野すが子になったり、大石誠之助や高木顕明になったりと、様々な人生が脳みそを通り過ぎ、40代の人生をほぼ費やして、あっという間に浦島太郎のように白髭が生えております。一時、上演について自信が持てなくなったころに、「芸術家の書いた言葉は尊ばれるべきだ」と励ましてくれた新宮の方がおられました。既にこの世に居ない彼女に、今でも背中を押されています。

 

 しかし、今年になってまさか疫病の時代が訪れようとは……今年の二月以来、本当に多くの舞台が中止になりました。このコロナ時代に突入し、まさにダイレクト・アクションの時代がやってきたのです。日本劇作家協会会長の渡辺えりさんを筆頭に、演劇の大先輩らが様々に叫び続け、署名活動に抗議活動と物凄い言論によるダイレクト・アクションを行い、劇場文化は必要なのだと、政府や社会に向かって主張してくれました。私も初めて署名活動の音頭取りをやり、春のあさぼらけに文化庁に力一杯の抗議署名FAXを送ったつもりが、間違えて太陽エネルギー担当部署というのに送り付け、焦りまくったのが三月末。紆余曲折とPCR検査(高過ぎる!)を経て、今日という日を迎えることができました。

 

 大逆事件の二つの作品については、戯曲集に書いた事が全てで、これ以上言い訳のようなことを申し上げる必要はありません。(改稿した部分は『平出修全集』とブログでお読み下さい。)そして演劇は、集団作業で少し国家と似ています。独裁政治もあれば、多数決の民主主義もあり、限りなく自由な無政府主義もあるのです。しかし、芸術とは残酷なもので苦労の量が結果と必ずしも釣り合うわけではありません。かつての恩師の一人は興行を死守し、もう一人は芸術の為ならば公演さえ潰しました。どちらが良いという訳ではなく、その様に生きること自体、演劇人生の博打性を物語っているのです。

 

 さて、この様なコロナ禍でも幕が開くのは、舞台を支える人びとのとんでもない苦労と、それでも来場して下さるお客様があってのことです。私はそれが無に帰すことのない様に、「全ての幕よ開け!」と叫ばずにはおれません。

 

 今後も更に困難な時代が続くでしょう。でもきっと、若い世代が未来を切り開いてくれるのではないでしょうか。初演の頃には出来たことが出来ない加齢を痛感しつつ、「幕を開ける歌」を心の中で唄いながら今日も消毒をするのです。気が付けば、初演時に小学一年だった長男はいまや高校生。負け続けても懲りない母親に呆れながら、下北沢へ唐組を一人で観に行く様になりました。やれやれ。

 そして「太平洋食堂」はこれをもちまして閉店致します。いつか誰かが、戯曲集を読んでセリフを受け継いでくれることを祈りつつ。そして私もそろそろプロデューサーを辞めて作家を専業と致しまする。いつか誰かが再演して下さる時を願いつつ、芸術の為に精進したいのです。なぜならば「ライフ・イズ・ショート、アート・イズ・ロング!」芸術は人生の為にあります。

さて、皆様に感謝しつつ、最終上演の「太平洋食堂」の幕が上がります。「太平洋食堂へようこそ!」

 

 

というわけで、舞台の幕が開いて閉まりました。様々なことがありつつ、無事に千秋楽を迎えられました。

客席使用は最大で6割で、有料観客数は8回の本番で650人となりました。再演時の半数ですが、オンライン配信では260名のお客様に観劇頂き、ほぼ1000人弱の方に来店いただいたことになります。

しかしながら、コロナ感染症の陽性者数が日々、最高値を更新していく中、やはり、当日キャンセルが相次ぐこととなりました。

予見されたことですが、やはり店主はつらい!

当初はクラウドファンディングも考えましたが、このコロナ禍で大変なのは、舞台業界だけではありません。

文化芸術には、既に様々な国費が投入されています。今回も、不足する予算の大半を文化庁継続支援助成金にて賄いました。

今後、DVDの販売もございますが、どうしても回収できない赤字があります。

ということで、カンパを募らせて頂きます。

 

以前、主催公演をしていただいた方面から、「俳優のギャラが安いですね」という声が上がりましたが、主催者はいつも赤字です。

そう、日本の舞台芸術は主催者の赤字で成り立っているのです!

また、オンライン配信で、投げ銭を頂きましたこと、初めての経験です。ありがとうございました!

 

ご観劇されて、「この値段でこの定食は安い!」と思われた方、是非、下記口座までご送金ください。

本当に各方面から援助して頂き、心苦しいのですが今一度、お願い申し上げます。

 

ゆうちょ銀行

記号番号 10910-07604311

エンゲキシュウダンメメントシー

 

他銀行から

ゆうちょ銀行 店名 0九八 

店番098 普通

口座番号:0760431  エンゲキシュウダンメメントシー

 

 

負けて、負けて、最後に嶽本は・・・また負けてしまいました!!

本当にどうして演劇人って芝居を辞めないんでしょうね?多分、馬鹿につける薬はないのでしょう。