ヴェニスに死ぬのは誰だ! | メメントCの世界

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ヴェニスに死すのは誰だ?

えー、片付きません。

何がって?南京の公演のいろんなものが。片づけられない人間なのは、皆さん、もうおわかりでしょうね。

終演後、いろんな最低限の事務作業、経理作業をやって上演DVDを関係者にコピーし、上演台本を刷っては売り、刷っては売り、の途中で我が働きモノのブラザーのレーザープリンタが反乱を起こしました。なんか最近、すぐにトナーがなくなるんだよね、A4の五千枚入りパックも、今年になって何個頼んだのか?ちょっと前までに三カ月に1箱だった紙の注文が、このところ、毎月。だから、プリンターちゃんも怒るわけだよ。ああ、なんという裏紙製造業!!

と自虐ってますが、南京、あちこちで評判良いので気を良くしてます。そしてまだ、台本を読んでる自分をアホじゃないかと思いますが、完全台本のつもりが、まだ誤字があったのでガックリ。ああ、完本はいつだ?それでもって、その完本とDVDを堀田百合子さんにお礼に送付するのですが、緊張してまだ発送出来ません。

 

気がついたら新学期が始まり桜は散ってますね。そして、南京の田之倉中尉は「ヴェニスの商人」へと行ったようです。どんな役をやるのかな?それは観てのお楽しみ。清田さんという人は普段はやさしいおじさんですが、舞台に上がると何者か分らないくらい、人相が変わりますから、びっくりします。こないだも田之倉中尉になって舞台に現れたら、プーチンの若い頃にそっくりでした。これは誉め言葉ですよ。ゴルキーの芝居がやれるかもね。

 私が好きなヴェニスのせりふは、「ジェノバでな!」とシャイロックが言う所と、一番ラストのグラシアーノのせりふです。翻訳・演出によってかなりニュアンスが違うように思うのですが、最初に古い福田訳が頭に沁み込んだからでしょうか。一時期、ヴェニスの商人は私の頭の中で、虚無主義と田中康夫の「何となくクリスタル」の合わさったもののように思ってました。若いアホ男どもの浮かれぶりと、ポーシャの冷徹な婿選びというより、コレクションになるだけの男の中で、グラシアーノのラストの台詞が「なんクリ」ぽいと思うのです。まあ、異論はあるでしょうな。

堀田善衞の「路上の人」の中に、当時のヴェネチア共和国についてとその政治形態についての詳細な描写が出ています。ゴンドラ、サンマルコ広場、マスカレードの謝肉祭、ドージエの治める自由な共和国は秘密警察のスパイ網と教会の異端審問によって強固に守られていたとありました。そう既に王国じゃなくて、共和国だったんですねヴェニスって。それでもって、ブレヒトの「ガリレオ・ガリレイ」も一時、ベニスで雇われ御用学者をやっておりました。ほぼ十六世紀末の同時代人、片方はフィクションなんですが。ヴェネチアの運河の橋のたもとの暗い路地を、望遠鏡を抱えたガリレオと、金の袋を持ったシャイロックがすれ違い、キッとお互いガン飛ばしあうのを想像してしまうのです。かなり濃くて面白い組み合わせです。意外と、ガリレオは借金癖があるので、シャイロックに金を借りていたりして、それでもって、ポーシャのおかげで、借金帳消しとか・・・・・あり得ませんが、当時、地動説を唱えるとまじで火あぶりでした。船主のアントーニオの言動を見ると、何となく天動説の人間には見えません。シェークスピア、天動説などはなから信じていないように思います。私の中でヴェニスは「かわいそうなユダヤ人とアホで非情な若者達」という位置づけの物語ですが、バサーニオの放蕩生活や他力本願、金持ちの女にひっついて何とかしようという根性は「なんクリ」なのでした。あいつら何とかならんのかね!

もうひとつ、耽美の代名詞だった「ヴェニスに死す」ですが、コレラの恐怖と爺さんの美少年へのいじましいまでの慕情が泣かせます。全く無関係。ヴェニスと言えば!の巻きでした。



 というわけで再度宣伝!四月十日、新宿の雑遊で、藤井ごう演出、清田氏、桝谷さん、青山君らが出演の佐藤萌子さんの劇団の「ヴェニスの商人」幕が開きます。どうぞお見逃しなく!