女は恋で燃え上がる | メメントCの世界

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女は恋で燃え上がる~クララより愛をこめて・最後のラブレター①~       杉嶋美智子




早いもので新年も松の内を過ぎました。

皆様それぞれに良いお正月を迎えられたこととお慶び申し上げます。昨年12月の公演「クララ・ジェスフィールド公園で」は、お客様はじめ沢山の関わって下さった方の愛情に支えられた舞台でした。改めて厚く御礼申し上げます。

 今更クララ!?という感が無きにしもあらずですが、メメント役者部の私は幼子の育児を理由に稽古・本番中のブログ書き込みを免除されていましたので、次の公演にブログが移行する前にお礼と「何か」を書かせて頂きたいと思った次第であります。


「何か」とは…個人的に大変面白い体験だったクララを演じて感じた事です。



大変長いラブレターです。


クララは実在の人物ですが、嶽本の書くクララとは違うはずなので、嶽本の台本の中だけでクララを探りました。嶽本クララが言い続けたのは「自分を確かめて、自分を手に入れる。」こと。何にも縛られず、自由に生きる自分でありたいと。


この「自分」と「自由」というテーマは、永遠の謎で、考えれば考えるほど混沌とした世界に入っていってしまいます。そしてクララが生きたのは、戦争というあまりに大きな事件の、しかも犯罪と疑心暗鬼の坩堝1940年代の上海です。そんな混沌とした時代の混沌とした場所で混沌とした事にもがく女性を演じるなんて、嶽本さん、もう1年早く台本を欲しかったよ、と最初は思ったのです。

が、台本を2度3度読んでふと思ったのです。


「女」であればいいのだ、と。


どんな時代のどんな場所で生きようと、人間は人間。クララの時代背景と彼女の仕事を完全に理解することは困難だけれど、唯一完全に共通する「女」の部分を共感することはできるのではないかと思った訳です。


そして彼女が仕事と恋、理想と現実の狭間でもがき吐く台詞は、何の変哲もない普通の主婦である私が普段吐いている言葉と同じ部分があるのを発見しました。


「自分」そして「自由」です。


作家に言わせたら、違う、と言われるのかもしれませんが・・・私は子供を産む事を望んでいましたが、贅沢な事にそれによって自分の自由を奪われてしまったことに苦しんでいました。勿論家族への愛情はあるし、子供はかけがえのない存在です。けれど、やはり”杉嶋美智子”という一人の人間の自由はないのです。自分が望む事をやりたくても、私の時間はほとんど家族に捧げられています。特に芝居の稽古に入った時にこの「自由」の無さを痛感したのです。そこに苦しみながらもう一つクララとの共通点にたどり着きました。


「全部自分で選んだこと。」


このスパイラルに陥ると頭も心も麻痺します。自分の中の本当がわからなくなるのですから。

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