子供 | メメントCの世界

メメントCの世界

演劇ユニット「メメントC」の活動・公演情報をお知らせしています。

子供 ・・・・ 嶽本 あゆ美

 硬い話です。
 私には6歳の長男がいます。保育園に6年通って来年は小学校。
 晩婚、高齢出産の極みで、ヒステリーママでしたがそれなりに子供も大きくなりました。
 保育園に入って、さぞや自分が最高齢ママかと思いきや、何故か私の長男のクラスは、ほとんどみんな同世代。二十代のママは2人しかいないという不思議さ。というわけで、ママ友に鍛えられました。かたいお勤めの方、私と同じ水っぽい自営業、様々な職種のママ、パパと友達になりました。今や掛替えのない財産です。
 その保育園には強固な保護者会組織があり、驚くほどシステマチックな組織でした。私は一度、書記を務めたのですが、さる自治体公務員の会長に議事録を駄目だしされまくり、あの不思議な行政の議会用語?を叩き込まれました。悲鳴をあげつつも、貴重な体験でした。

 そして又わが市は待機児童が多いことでも有名で、保育園の民営化闘争も激しい地域です。各保育園が民営化指定されると、親たちが民営化対策委員会(略して民対)を立ち上げ、市との条件闘争に入ります。そうしないと、自分の子供のいる保育園が守りきれないで業者の利益に食われてしまうことがあるからです。そんなに目くじら立ててどうするんだと思う親も多いのですが・・・・わが宮前区で既に伝説となっている、ある保育園の民営化は「怒れるパパ達」が立ち上がったので、行政から数々の好条件を勝ち取り、とてもよい民営保育園に変わりました。その年の対川崎市の保護者懇談会では、市役所の課長に向かってパパ達の怒号が飛び交いました。びっくりして、春闘か?(春闘の意味が分かってないし、労組経験も無いけど)多分、自分の子供のためにパパ達は仕事よりも本気で戦ったのでしょう。

 保育園が民営化されていいことって、余りないのですが、昨今の時代の流れで逆らえない現状です。そこでつぶさにわかるのは、政治の政界や世の中では女子供など、何かの予算を掛けて守るような代物では無いと思われていることです。

 公立や認可保育園に入れなかった場合、園庭のない事務所のような保育園で過ごさなくてはならない子供もたくさんいます。長男は運良く、待機はたったの三カ月でしたが、次男は転々として公立の空きを待っていました。その間、私は原稿料のほとんどをベビーシッターや私立保育園の保育料に捧げて、自分の時間を買う為に必死でした。複数の保育園をはしごして飛び回っているお母さんや、パート代の半分が消えていくような同じ思いをしている人は山ほどいるのです。だから、自分はかなりましな方だと思います。幼いころから保育環境にそれほどの境遇の違いが出てしまうって、まるでディケンズの世界じゃないでしょうか?でも、政治家はそうは思わないのでしょう。この先進国だと言われる日本で、条件のよい保育園に入れない子供たちがタコ部屋のような部屋で雑魚寝保育されているのが日常だなんて、信じられない事です。

 シングルマザーも大変です。別れた夫が養育費をきちんと払ってくれるのは、ほんの数カ月というのがざら。もしも、不払いを取り立てようと思っても、本来支払われるお金の7割近い費用を弁護士に払っての強制処置となるため、二度、三度と不払いが続けば、たった五万を取るために、四万近くの費用が掛り、挙句に女は泣き寝入りするしかありません。罰則がないんだから。これって、要するに男の側は子供を見放して捨ててるわけですよ。ママが子供ほってどっか行ったらどうなるか。しかし、養育費を払わないパパは間接的に子を見殺しにしているのに、何の責めも負わないわけです。
 村上春樹の1Q84だったら、青豆さんが必殺仕事人のように現れて、そういうにっくきパパの息の根を止めてくれるのでしょうが、現実はそうもいかないですね。
 私はフェミニストとはかなり隔たった考えの持ち主ですが、この不公正さには呆れます。
  
 数年前に、平塚で母親が自分の娘を殺したとされ、その家から嬰児遺体が複数発見されるという事件がありました。これは極めて異常か?
 話がぶっとんでますが、「理由」の第三部を書き足すきっかけとなったのは、あの平塚事件です。といって、あの事件をなぞったわけでもありません。結審したようですがだいたい真相がわかりません。裁判の傍聴もしていないし、新聞での扇情的な報道を見ただけです。ただ、女は男よりも人を殺してしまう事の周辺に生きているのではないかという匂いを感じさせる事件でした。後味が悪いので、ご自分で何か気分転換してくださいね。