私のページにお越し下さり、ありがとうございます。これは、私が実際に経験した実話です。事実だけを綴っています。


はじめましての方はこちらから見ていただけると嬉しいです☆登場人物紹介を追記してます    


前回はこちらです☆




卒業式には太田先生も来てくれました。




先生は、

私が以前クリスマスにプレゼントした

手編みのベストを着て、

式に出てくれました。




そして式の後は、




太田先生がこの学校にいた頃のように、

私は先生の車に乗って、

見慣れた夜の町並みを見ながら

家路につきました。




この景色ももうしばらくはお預けかな。




と、そんなことを言いながら、

ふと先生の横顔を覗き込むと、





先生は泣いていました。





「どうしたの先生?」





びっくりして私は、

先生のギアを握る左手に

そっと触れました。





すると先生は

涙を拭って言いました。





「おまえが卒業するまで、

 都二工にいてあげたかった。

 最後まで見届けてあげられなくて、

 本当にごめんな」





「えっ、先生……ありがとう」





私は、

先生がそんなふうに考えていたなんて

想像もしていませんでした。

びっくりして、嬉しいような、

困ったような気持ちになりました。





そのまま私たちは私の部屋に到着し、

先生は私の部屋に入るなり、

今度は声を上げて泣き始めました。




「俺は、俺は、」




先生の号泣のポイントがわからないまま、

私はあっけにとられていました。





けれど、

私を思って泣いてくれる先生を見て、

私は初めて

先生の愛に触れた気がしたのでした。





本当は先生として、

生徒である私を

大切にしたかったのかもしれない…

けれど、人は弱い生き物だから、





色んな誘惑に負けて、

うまくいかなくて私に甘えてしまい、

先生なりに苦しんでいたのかもしれない…





先生の涙は

鞭で打たれ続けた後のアメ玉のように甘く、

私を支配しました。





その涙が

赤子の手をひねるよりも簡単に、

私の人生を破壊することなど知りもせず、





先生を許す言い訳を探していた私は、

その涙を愛だと感じたのでした。





その、

容易い涙を…







そして愚かな私は考えました。





いろんな形の愛があるのかも知れない…

典型ばかりを求めても

もう意味がないのかも知れない…

あるがままの先生を

受け入れて愛していきたい…






泣き止まない先生を

そっと抱きしめているうちに

私も泣けてきました。






何が悲しいのか、

いつまでもいつまでも






抱き合って

二人で泣いている卒業式の日でした。





【次へ続きます】