アイドルとバンドの壁を壊すRAY主催「Destroy the Wall」という企画を始めます。「アイドルとバンドの壁を壊す」って使い古されたテーマでいまさら?という人も多いと思います。が、これあくまで内側の感覚なのでは?という気持ちが最近強くなりそこが企画発案のきっかけになっています。

 

バンド対バンについて先日メンバーの内山結愛がブッキング・制作するイベントが開催され、そこでもバンドにアイドルが1組混じることによる雑居感に新鮮味を感じてくれる人がたくさんいて、開拓の余地がまだまだあるんだなと感じました。その経緯や顛末は下記にまとめています(めちゃくちゃ長いです)。

 

 

「バンド」という謂は「音楽」くらい広い抽象概念なので、この抽象粒度のまま組まれる「バンド対バン」にはあまり意味を感じません。あらゆる企画は何らかの意味・相乗効果を期待して組まれるものですが、今回の企画もまた「バンド対バン」という粗い粒度から「アイドルとの共演で意味・相乗効果が生まれるバンド対バン」まで解像度を上げようとする試みです。

 

また、この辺りは「大きいアイドルグループやバンドがやってくれないとどうにもならない」というトリクルダウン的な話法をされることがしばしばですが、そういう動きはすでに過去いくらでもあった上での現状なので、ならば草の根からもやってやろうというチャレンジでもあります。

 

要するに、RAYが掻き回し役として機能しつつ何かバンドアイドル問題を一歩進めたい的な企画で、第1回は早速素晴らしい共演陣に恵まれました。quiquiとkurayamisakaはメンバーの月海に、ANORAK!は内山にお薦めしてもらって知ることができたバンドです。3組を紹介しつつ、企画の意味・相乗効果のイメージを膨らませてみます。

 

■quiqui

2013年結成のカオティックハードコアバンド。インタビューで国内外のカオティックハードコアや周辺ジャンルからの影響を公言していますが、サウンドを一聴して納得できます。Indian SummerやMoss Iconといったreal screamの暗く湿っぽいサウンド、後続するLa quieteやDaitro、Suis La Luneといった欧激情ハードコアの持つ速さやテクニカルなMath感、kulara、There is a light never goes outといった邦アンダーグラウンドハードコアの醸す緊張感、それら全てへのリスペクトを生々しくサウンド化しています。

 

 

僕はquiquiが影響を受けたであろう音楽を身近に青春時代を過ごしてきました(Daitroのライブは見に行ったし、La quiete・Ampereは来日時に昔やっていたバンドで共演もした)。その感性はRAYのクリエイティブにも生きていて、公開当時ハードコア界隈に不評を買っていた叫ばない激情ハードコアこと「星に願いを」はそうしたエゴ丸出しの曲です。

 

 

こうした界隈とアイドルとの接点は僕の知る限りなかったように思うので、出演を快諾してくださったquiquiには感謝していて、共演で何が起きるかとても楽しみなバンドです。

 

■kurayamisaka

親しみやすい歌謡的メロディとシューゲイズ・オルタナティブなサウンドを現代的感性で融合・アップデートするオルタナシーン若手急先鋒バンド。RAYは一般的にマイナーとされる音楽ジャンルをアイドルソングとしてアップデートする試みでもありますが、過去へのリスペクトと、加えて同じくらい現代的再現の意味に敏感であろうとしています。邦シューゲイズシーンにおいて、解散したFor Tracy Hydeはそうしたリアルタイム感に敏感な稀有な存在でしたが、後続する感性はkurayamisaka(加えてThe Otalsも)が担っていく気配があります。

 

 

彼らがシューゲイズをどこまで意識、実践しているかは定かでないです。そうした想像を掻き立たてることも彼らの良さであり、ジャンル概念が希釈され自認されなくなった先にこそ新しい可能性が広がってほしいという勝手な願いを重ねてしまう。その願いはRAYに賭ける思いと近いものなのです。

 

■ANORAK!

現行邦エモリバイバルシーンの牽引役。エモリバイバルは90s emo、特にキンセラ界隈に大きな影響を受け10sにアメリカ中心に勃興したリバイバルムーブメントで、ミッドウェストエモ的テクニカルさをマシマシにしたMath感を特徴としています。20s前後から邦シーンも活発になり、ANORAK!はオリジネーターへの理解の深さと20sの日本で実践する意味に強く自覚的であろうことを感じさせるバンドです。シューゲイズ文脈におけるkurayamisakaと同じような存在感をANORAK!にも感じます。

 

 

エモは僕が最も影響を受けたジャンルで、特に90-00sあたりのエモは自分のサウンド感のコアであり続けています。僕が制作したRAYの「オールニードイズラブ」や「ATMOSPHERE」は自分がエモから受けた影響が落とし込まれた曲です。一方、エモを熱心にフォローしていたのは00sまでで10s以降のリバイバルシーンには疎くなりました。というのは、もちろん聞いてはいたもののキンセラ周辺バンドには当時からあまり食指が動かず、その影響下にあるリバイバルシーンも同様だったという経緯で、一方20sの邦エモリバイバルシーンは単なる再現ではなく日本のリアルタイム感にしっかりアップデートされていて、今改めて強く惹かれている理由になっています。このアップデートが歌や歌詞へのフォーカスであること、それがリスナーへ寄り添う態度であることにも、親近感を感じます。

 

 

 

こう見ると、改めてRAY主催に出演してもらう必然性・意味があるように感じます。告知後のリアクションも面白く、共演バンド側のファンはバンド3組の組み合わせに好意的な反応をしているものの主催のRAYについてはほぼノーリアクションで、要するに「RAY?」という状況だと想像するので、その意味でも冒頭に書いた掻き回し甲斐、踏み込み甲斐のあるブッキングになったと感じます。

 

是非お越しください、見た人の心に何かが起こるはず…!

 

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9/17(日・夜)

RAY presents

「Destroy the Wall vol.1」

会場:大塚Hearts+

時間:OPEN/START 18:00/18:30

料金:前売/当日 2800円/3300円(+1D)

本番:2045-(30)

物販:2115-(75)

出演:

RAY

ANORAK!

kurayamisaka

quiqui

 

🎫前売予約 7/1 2000-

https://tiget.net/events/255756