マイルスの電化に至る経緯でその「過渡期」として扱われるのが『マイルス・イン・ザ・スカイ』と『キリマンジャロの娘』の2枚。

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"エレキ楽器を初めて使用"云々と言うよりも『ネフェルティティ』と『イン・ア・サイレント・ウェイ』というマイルス史において最重要かつ、(オン・ザ・コーナーを除けば)最もミステリアスな名盤2枚に挟まれた、(マイルスにしては)割と評価の低い作品というモヤモヤ感も含めて「過渡期」というレッテルが貼られてしまっている気もします。

さて、同じ過渡期の作品と片付けられがちですが、この2枚、はっきりと性格が違います。

イン・ザ・スカイはネフェルティティを発展させようという意図が見えますが、マイルス自身どう発展させるのか青写真らしき物すら持っておらず、とりあえずショーターのミステリアス(解りにくい)な要素を切り捨てた上でネフェルティティを焼き増ししてみた感じを受けます。
上記の理由で前作のような深みは薄まってるけど、フェンダーローズやエレキギターの使用といった目新しさに加えこの時期このメンバーでの"前作延長路線"とくればクオリティは当然高く、世間評価は置いといて、個人的にはイメージもクオリティも4部作の仲間に入れてあげても良い位の作品だと思います。

これに対してキリマンジャロの娘は、はっきり4部作とサイレント・ウェイやビッチェズ・ブルーとの過渡期の作品に聴こえる..ってのは次回に。
『シルヴァーズ・セレナーデ』

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黄金クインテット最後期の録音ですが、ファンキーに乗りまくるいつもの姿は見当たりません。
(その後の新機軸の萌芽も見られないので過渡期というよりは黄金クインテットのアナザーサイドと言うべきか)

妙に落ち着いた演奏と、シルヴァーにしてはキャッチーな魅力に欠ける楽曲..

確かになんかスカッとしない作品ではあります。

しかし、困ったもので(?)これが悪くない。
フロント2人のソロとリズム隊の絡み具合といったグループの纏まりが最高の聴きどころで、さらにブルー・ミッチェルの出来が非常に良いのも魅力。
シルヴァーは半歩だけ昔に帰ったような端正なプレイでこれも非常に良ろしい。

メンバー全員が驚異的演奏をやってのけた『ドゥーイン・ザ・シング』のような鬼神のノリが欠片も見つからないのは残念だけど、黄金クインテットのアナザーサイドは、バンドサウンドに重点を置くシルヴァーだからこそのアンサンブルの熟成を存分に楽しむことが出来ます。

ただ、タイトル曲が最高の出来で楽しめますが、他の曲はやはり曲自体が弱いのが残念なところ。

とは言え、個人的には名盤ホレススコープやトーキョーブルースなどよりは面白いと思っておりますが、如何か?


次回の「過渡期」は『キリマンジャロの娘』です。(嘘)笑
昔いたベルマーレのキーパー、小島みたいなルックスのどアップジャケ『モダン・アート』が代表作となるとなかなか手を出しづらいと思われるアート・ファーマーですが、実はワンアンドオンリーな魅力を持ったトランペッターで、私などその魅力にズブズブとハマっていった一人です。

取り上げるのは、前述モダン・アートと並ぶ人気盤『アート』

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トミー・フラナガントリオをバックに従えてのワンホーンアルバム。

選曲良し、メンツ良し、演奏良しの作品で、(BNのような)仕掛けやカッチリした完成度とは魅力が異なる、非常にリラックスした雰囲気のアルバムです。(どちらかが優れているという意味ではない)

彼はリー・モーガンのような華やかかつエキセントリックなプレイをする類のトランペッターでは決してありませんが、そのふくよかな音色、端正なフレージングはそれが巧くハマった時には実に魅力的な演奏をします。(但し、ただ丁寧に吹いているだけ..と感じられるプレイも時々見受けられますが..)
淡々と吹いている様でいながら実に"歌ってる"という不思議な矛盾感は、なかなか得難い彼独自の個性で、聴いていると肩の力が抜けていく様な至福の時間をもたらしてくれます。

さて、アルバム冒頭を飾る「ソー・ビーツ・マイ・ハート・フォー・ユー」を聴けば、まさにそんな魅力に溢れたミディアムで、フレーズを細切れにした抑制されたプレイでテーマを吹き、それが自然にアドリブに繋がっていき淡々とラッパで歌いあげる..
聴いて頂ければ前述の「肩の力が抜ける云々..」の拙い感想に少しは共感して頂けるでしょうか。


アート・ファーマーはブルーノートにも録音をたくさん残していますが(シルヴァーのグループやクール・ストラッティンなど名盤も多し)、何故か自身のリーダー作の録音は無し。
もしもアルフレッド・ライオンの寵愛をもっと受けていれば、60年代はBNのニュータイプ達とのセッションも組まれていたと思われ、ファーマーに対するイメージも今の軟弱なもの(失礼)とは大分違うものになってたかもしれません。

とすると、このリラックスした名盤は生まれていなかったのかも..
などと考えながら、早い時間から飲み始めたマイヤーズと共に、肩の力がスーっと抜けていくリラックス感が心地よい、休日のささやかな休息ってことで。
纏まらず..笑