「コードネームはモナリザ」第37話 2人のパンチェン・ラマ⑦~異能者~ | 銀河の渚 Dreamscape

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「コードネームはモナリザ」

第37話 

~2人のパンチェン・ラマ⑦~

 

 

 

 

 

 

 

「パンチェン・ラマさま、
どうかされましたか?」

ノルブが6歳の時から
ずっとそばにいて、
ノルブを護り
導いてきた僧が、
心配そうに、
窓際にたたずみ
夕陽に染まった里を
すっと見つづけているノルブに
声をかけた。


「あの者は、誠に
ダライ・ラマが言うように
パンチェン・ラマの
生まれ変わりだと
お前は思うか?」


その問いに僧はきっぱりと、
「いいえ、私は思いません。
あなたが正真正銘の
パンチェン・ラマさまの生まれ代わりだと、
私は信じておりますから」
と言った。


「北京にいる時は、
私は自分に
まったく自信が持てなかった。

自分の持つ
特殊な能力のおかげで
パンチェン・ラマの持ち物など、
中国政府の助けを借りなくとも
簡単に私には判ったのだが、
生まれ変わりと言われても
子供ながら、私には
違和感があった」


「ノルブ様、歴代のラマとて、
同じですよ。
結局、僧たちの
生まれ変わり認定の旅は、
あなた様のような、
特殊能力の持ち主を
探す旅でもあるのです。

素質のあるものを探し、
時間をかけて
その能力を
このチベットの特別な場所で、
修業させ、
開花させることによって、
この国を
守ってきたのです。

あなたはその能力を
お隠しになっているから、
民はあなたのことを
軽んじますが、
あなた様ほどの能力を持った
特殊能力者を
私は知りません」


「私は自分に、予知能力は
無いと思っていたのだが、
最近、よく夢を見るのだよ。

人が死ぬ夢を、
良く見るんだ。

あの者が私に、
助けを求めているような気がして、
仕方がない」


「何もしないことです。
何もしてはいけません。

あの者があなたのように、
特殊な能力を持っているならば、
自分で解決できるはず、
何もしてはいけません」

 

 

 

 

 

 




ノルブはもう一人の異能者が
たどった哀しい運命に
自分を重ね合わせていた。


それは自分であったかもしれない
運命であり、不幸だった。


ノルブは少しばかり
特殊な能力もあるようだが、
それほどでもなく、
両親も親中国的で
中国政府の意向どおりに動く、
好ましい家族だ。
傀儡のパンチェン・ラマに
この子こそ、ぴったりだ。
そう中国政府は考えたようなのだが、
しかしそれは違っていた。


ノルブの両親は
前年に選ばれた、
パンチェン・ラマの
生まれ変わりとされた少年と
その家族に起こった、
悲惨で哀しい出来事を
知っていたのだ。


両親はノルブに
その特殊な能力を
これからは
わざと封印し、
無能なラマのふりをするように
言いきかせた。


中国政府と
対立してはいけない・・・
とも言った。
そして何が何でも
生きのびよ・・・
と言ったのだ。


「お前の特殊な能力は
神様がくださった祝福です。
でも使い方を間違えると、
その祝福が呪いに
変わることもあるのです。
だから気をつけるのですよ」


母は別れぎわに
幼いノルブを抱きしめ
別れの言葉の代わりに
そう言い、涙を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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