夕暮れの「ヴェリス」・・・


湾曲状の港町を一望できる高台で、ひとりの女性が優雅に歌っている・・・

その歌声は、なんとも切なくて心温まるそんな歌が辺に響いて・・・


港町とその女性を赤く夕日が綺麗に照らしていた・・・



そしてここは孤児院から、そう遠くない建物の部屋にメリウスは居た、目を覚ますと「ゼフィル」が泣いていて「リゲル」の姿も見える、此処は何処と訪ねると「リゲル」は答える、知りあいの医者がいる所で他のふたりも大丈夫だと・・・


あの火事から2日経ったと告げられる

・・・メリウスはどうしてこんな状況になっているのかを思い出していた・・・


孤児院が火事になって・・・息が苦しくなって・・・


その先が思い出せない・・・

すると「ゼフィル」は気付いたメリウスに駆け寄り涙を流しながら謝る、自分の不注意で火事にしてしまい済まないと・・・


また泣き出すが「リゲル」は一喝する

「リゲル」は少し時間は掛かるが直ぐに元通りして、みんなが暮らせる様になる、今はしばらく寝ていろと話し終えると「ゼフィル」を連れてそこを後にした・・・

数日して「ティリス」と少年が迎えに来る、その少年は「グラディニー」メリウスの身体を気遣っていたが自分の身体も火傷まみれ・・・


メリウスは心配ない元気だと見せると「グラディニー」は助けてくれてありがとうと言葉少なげに礼を言う


そして「リゲル」に連れられて孤児院に戻ると・・・

孤児院は「リゲル」達の決死の消化活動により全焼は免れた様で今は修復をほぼ終えていた

中に入ると子供達の輪から、ひとりの子供が駆け寄りありがとうと礼を言うとまた戻っていた、三人の中で一番軽症だったらしい、そしてまた孤児院での暮らしとなるのだがメリウスを取り囲む状況は変わっていた

みんなが暖かく迎えてくれるのだが一人少し違うモーションを掛けて来る少年がいる・・・

「ローズィム」はメリウスより少し背が高く細身の少年・・・


それをさせまいと、すかさずにメリウスを引っ張る女の子がいる


メリウスは病みあがりなんだからと、その輪から遠ざけようとする「シーリス」・・・


と「ローズィム」とで何やら言い争いになっている・・・

「リゲル」の事はどうするのよ?手の届かない大人より目先の男よ・・・などと問答を始めてる隙に

「ジニアス」が「ゼフィル」達と遊ぼうとメリウスを連れ出す、そして孤児院に来て初めてメリウスは笑う

そんな様子を「グラディニー」は微笑ましく見ていたが「レクス」だけは神妙な面持ちで見ていた・・・

この時を境にメリウスの位置も意識も変わり始める、幼い子供達に囲まれるのは「ゼフィル」に変わり孤児院内での中心的な存在へとなって行く・・・


そんなある日メリウスに向けられる間接的な嫌がらせを「ローズィム」は見つけ気付かれないように阻止するのだが・・・

そして数日を過ごした時にメリウスは「ティリス」に本が読みたいと願うが彼女は悩む・・・

その様子を見た「ゼフィル」も加わり「「シーリス」も「ローズィム」も「ジニアス」も「グラディニー」も加わると「ティリス」は折れ・・・


「リゲル」を訪ねると難なく許可を得るが「ティリス」の心境は複雑であった

次の日にメリウス達はいつもの様に外へ出て陽だまりの中、子供達にメリウスは本で読んだおとぎ話しを話したり子供達の問いかけに答えている


「シーリス」は側で座りながら一緒に聞いていて、「ジニアス」・「グラディニー」・「ローズィム」は少し離れた木陰で屯い「ローズィム」は器用に編み物をしている

「ゼフィル」も離れた所からメリウス達を見ている、そこへ「レクス」が忍び寄り話し掛ける・・・

このまま放って置くと「シーリス」をメリウスに取られると「ゼフィル」に耳打ちをし、気の利いた言葉でも掛けて「シーリス」の気を惹いた方が良いと唆すと・・・


その気になったのか「ゼフィル」はメリウス達の方へ向かう

「ゼフィル」は「シーリス」に話し掛けるが、気の利いた言葉は思い浮かんでも口に出せずに居た・・・

そんな様子を「シーリス」は不思議に思い「ゼフィル」を問いただすと、思いも寄らない言葉が返ってくる

「シーリス」最近お尻が大きくなったんじゃないか?と・・・


・・・「ローズィム」が笑うとつられて皆が笑い出す・・・

「レクス」はそれを見て頭を抱える・・・

確かに「ゼフィル」は「シーリス」の気を惹く事には成功したのだが・・・

次の瞬間「ゼフィル」は殴り倒され「シーリス」は声をあげて泣きメリウスの元へすがりつく・・・

それを見た「ローズィム」は憤怒の表情・・・


手にしている編み物は無残な物へと形を変え「ジニアス」がそれを慰めていると「ティリス」が現れてメリウスを呼ぶ、町にある書館への誘いだ

「ティリス」はいつもの様に「ゼフィル」達に子守を任せるとメリウスと共に書館へと向かった

すると「ローズィム」は「レクス」を呼び話しがあるとふたりは建物の影へと消える・・・

「ジニアス」はふたりの事が気になり見に行くと、「ローズィム」は「レクス」の胸倉を掴み建物の壁に押し当てながら言い争っている・・・「ジニアス」は慌ててふたりを止めに入ると、その場一旦静まるが「ローズィム」と「レクス」の関係は犬猿の仲となって行く

メリウスは「ティリス」に連れられ「ヴェリスの書館」へと向かう道中、何人かの白い視線を感じていた・・・
何故か後ろめたい気分にさせられる、そしてメリウス達は目的の場所へ到着する

立派な佇まいの大きな館、そして大きな扉を開けて中に入ると、本棚が無数に並び木や書物の匂いなのか独特の香りがする空間、正面には大きな明かり窓があり、入り口から奥へと繋がるテーブル照らしている、見渡すと奥には一人の女性と老婆が椅子に腰を掛けていて手招きをしているメリウスは老婆の横に座る様にと言われるが儘に座る、老婆は「リゲル」から話は聞いてるよ知りたい事や解らない事があれば何でも聞きなと言う・・・老婆の名前は「メトリー」そして孫の「イリア」と共に此処を管理している

「ティリス」は「イリア」としばらく話をし「メトリー」に挨拶をして夕方には戻るのよとメリウスに告げ去っていく

早速メリウスは本を読む事にするが言葉が難しく「メトリー」の手解きを受けながらメリウスは相変わらずペラペラとめくるだけの様子を「メトリー」は不思議そうに見ていた・・・読んでいく本は多種多様

そして「メトリー」はメリウスが首から提げている物に気付きメリウスは青いペンダントを見せる

随分とくすんでいると言い磨いてくれた、すると青い石の中心に星が光る様な輝きを放つ物へと変わる

宝石にはアラトゥスが宿ると言われている大事にしてれば力を貸してくれるかもしれないと「メトリー」は言う

そしてアラトゥスとは古より伝わる、妖精や未知なる力を現しているらしい

次第に日が暮れ初めメリウスは「メトリー」と「イリア」に礼を述べ帰路へと向かうが

何処からともなく視線を感じる・・・

孤児院が見える頃にその視線の主が現れる・・・町の子供達・・・

メリウスは謂れのない罵声を浴びせられるが気にせずに歩いていると頭部に激痛が走る・・・

子供達が石を投げつけている・・・メリウスは他の飛んでくる石を避けながら逃げ帰る・・・

孤児院に着くと「ローズィム」が真っ先に出迎えてくれる・・・


そして「ローズィム」は額から流れる血を見てどうしたのかと聞き寄るがメリウスは転んだとおどけて見せて外にある水場で血を洗い流す・・・

「ローズィム」は何が起こったのか直ぐに感づくが言葉を飲み込んだ・・・

この様な事が幾日も続き、虐めは巧みにエスカレートする一方だが・・・


メリウスも大きな怪我や傷を受ける事はなくなっていた・・・

そして次の日メリウスはいつもの様にひとりで書館へ向かうのだが・・・


この日は騒がしい来客がいた・・・


その男は扉を開け入ってくるなりに大声で話し出す


男の容姿は煌びやかな宝石を身につけ、派手な色合いの洋服を着こなす、筋肉質で目つきの鋭い男


そして二人の中で騒がしい会話が始まる・・・


男「よぉー!メトリー婆さん元気にしてるかい?まだお迎えが来ないみたいだな~


頼んでおいた本は来てるかい?」


メトリー「悪ガキが・・・一言多いんだよ!まったく・・・悪さするんじゃないよ!」


男「おいおい、もう34だぜ?そんなガキみたいな事するかよ・・・!?

その隣に居る赤毛はイリアの子かい?・・・まさか・・・婆さんが産んだ・・・?」


メトリー「ちょっと来なアジール」


アジール「・・・言われなくても行くさ、沢山本が置いてあるがどれが俺の本だ?」


メトリー「この子はティリスに頼まれて面倒みてるんだ虐めるんじゃないよ」


アジール「ほぉ~って事はあそこの子かい見ない顔だな、名はなんて言うんだい?」


・・・メリウスは名をアジールに教える


アジール「良い名だな、それで俺の本は?」


メトリー「その前にこっちに来て頭出しな・・・早くしな!」


アジール「・・・なんだよ俺が何したってんだよ・・・」


メトリーは青く分厚い本でガツンとアジールの頭を叩く・・・


アジール「痛ぇー!・・・思いっきり殴りやがって頭が馬鹿になったらどうしてくれるんだ?」


メトリー「安心をし、お前ほどの馬鹿はそれ以上悪くはならないよ」


アジール「あぁ~あぁ~そうですかい、そんでどれが俺の本だい?


メトリー「この青くて分厚い本がそうだよ、持って行きな」


アジール「お代は?」


メトリー「さっきのがそうだよ」


アジール「・・・本を借りるたんびに頭叩かれたら本当に馬鹿になっちまうぜ


小僧気を付けろよ・・・この婆さんは若い奴の生気を吸って長生きするって話だからよ」


メトリー「その子の名はメリウス・・・さっき自分で聞いただろ?


それと・・・アジール!ラングゼーブに私を馬鹿にしたと言っておくからね、何があっても知らないよ」


アジール「・・・あっ!メトリー婆さん・・・いま俺、綺麗な宝石を持ってるんだが欲しくはないかい?」


メトリー「そんな物欲しくはないね」


アジール「・・・そんじゃイリアに渡しておくからよ、まぁ~邪魔したな長生きしろよ~メトリー婆ぁ~」


アジールはイリアの元へ行き、さっきとは違う声と瞳でイリアに接する


アジール「よぉ~イリア綺麗になったな、これ受け取ってくれ、滅多に出ない極上の品でよ


ガーネットって言うらしい、まっ!そう言う事でよ、また来るぜ」


イリアは頷くだけでアジールの言葉を聞いていた


メトリー「うちの娘に触れるんじゃないよ!さっさと行きな!」


アジールはイリアの指に宝石をはめると直ぐにそこを後にした

あいつらは手の付けられない悪ガキでね・・・


昔はリゲルと一緒につるんでたもんさとメリウスに教えてくれる・・・


嵐の様な男は帰って行くが、イリアの瞳はアジールに釘付けだった


そして、あくる日にメリウスは大事な物と出会う事となる・・・


いつもの様にメトリーの書館へ行くはずだったが


見せたい所があるとメリウスをヴェリスの高台へと連れて行く


ティリスとイリアに連れられ、メリウスは高台の端にある花畑を見るが・・・


ある花を見てメリウスは感情を抑え切れずに涙をながしてしまう・・・


それを見た二人は何事なのかと訪ねるがメリウスは応えようとはしない・・・


イリアがメリウスを呼び不意に頬を叩く・・・男の子が何の理由も無く泣くなんて事はしないと


イリアはどうして泣いたのかを聞かせてと寄り添うが、メリウスは話す事を拒否する・・・


ティリスも涙の訳を話してごらんと言い寄るがメリウスは下を向き まだ泣いていた


ティリスは素直じゃないわね・・・そうゆう素直じゃない子は嫌いよと強く言いメリウスの反応を見ながら、次の言葉を出す


そこまで話したくないなら考えがあるわ・・・


これから一切本を読む事を禁止するわメトリーおばさんの所へは行かせないし、私もイリアも嫌いになるわよ!と・・・


メリウスはしぶしぶ話しだそうとするが呼吸が乱れて上手く話し出せないでいる


イリアは優しく深呼吸をしてみなさいとメリウスに言い聞かせる


するとメリウスは深呼吸をし落ち着きを取り戻し話し出す・・・今まで誰にも言えなかった事を・・・


レージェライでの事を・・・


ハズリットが愛していた花が・・・・この花だと・・・


そしてディアーヌの両親の事も・・・あの時に送った花もこの花だったと・・・そしてその結末も・・・


ティリスはどうして教えてくれなかったのと泣きながらメリウスに聞くが


メリウスは凛として力強い瞳で応える


何も出来なかった事が悔しかった・・・


何も知らない事も悔しかった・・・


自分の力の無さが悔しくて・・・


強く成らなければいけないと心に誓ったんだ・・・あの炎の中で・・・


だから弱音は吐かない・・・そう決めたんだ


ティリスは言葉を詰まらせながら言う、子供なんだから仕方ないじゃない何でもできるはずないでしょ・・・


幼い子供がそんな事・・・ティリスは言葉が詰まり話せないでいた


イリアも泣いていたが力強い声でメリウスに言葉を放つ


そうね・・・男の子なら強く成りなさい・・・どんな事にも負けない強い男になるのよ、と・・・


そんな事があり、三人で花畑の手入れをする事と成る

そして、憂鬱な日も傾く夕刻時・・・


孤児院へと向かう道にその集団は待ち受ける

メリウスの前にひとりの体格の良い子供が立ち塞がる、悪ガキ達の首領、茶髪の「アッシュ」・・・

この道を通りたかったら地べたを這いずり回って許しを請えと言うメリウスは他に方法は無いのかと聞くと

唾を吐き掛けられ犬の様に跪く他に方法は無いと言う・・・

メリウスしゃがみ地面に手を着くと、砂を掴み「アッシュ」の顔へと投げつけ怯んだ隙に逃げる、「アッシュ」は赤毛


を捕まえろと叫び、手下達は追ってくるがメリウスの足には敵わないが・・・

ここで追われる者と追う者の図式が確立する・・・何故ならメリウスには一切の反撃の手段が封じられている為で


ある、それは何故か・・・「ティリス」も何が起きているかは察しているが歯向かう事はできない

それは「リゲル」の多大な支援もあるが町全体の支援により孤児院が成り立っているからである

それでもメリウスは本を読みに行く事は止めずに孤児院内では明るく振舞っていた・・・

ある日メリウスは「メトリー」に茶髪の「アッシュ」の事を訪ねると、思わぬ答えが返って来る

町の子供達に慕われてとても良い子だと、それに親は町では一番の大富豪でこの書館の所有者との事

この頃からメリウスは夕刻よりも少し早く書館を後するが孤児院に着く時はいつも日が暮れてから・・・

それは「アッシュ」達と出会わない様にする為と、もうひとつふたつの目的があったが・・・

ある日、メリウスはメトリーの所で本を読み終え、帰ろうとするとイリアから夕食の誘いを受ける


ティリスには話してあるとの事


メトリーの家へ向かう道の途中でメリウスはイリアに言う、食卓にあの花を飾って欲しいと・・・


イリアは解ったわと少し嬉しそうな顔をしていた・・・そんな様子をメトリーは微笑ましく見守る


目的の家へ到着すると、驚くほどに華やかに素晴らしく花が咲き誇る家へ招待される


家の中の明かりで照らされ、何とも幻想的な装い


少しの時が経ち食卓の上にはあの花が飾られ豪華な食事をイリアが運び終える


メリウスは慎ましく夕食をご馳走になる筈だったのだが・・・まず先に問題があった


イリアがまず私の隣の席に着いて食事をしなさい私が作ったのよと言うが


メトリーが口を出す・・・メリウスは私の隣に来るって決まってるんだよ、ほらこっちに来な


メリウスは戸惑い・・・二人は口論を始めてしまう・・・


イリアは誰がそんな事決めたのよ、決めるのはメリウスでしょと言うが・・・


メリウスは内心、こう考える・・・


本来なら若くて綺麗で優しいイリアの横に行きたいが・・・


優しくて物知りでいつも気に掛けてくれるメトリーお婆さん・・・後々を考えると・・・


メリウスは食卓を前にして大問題に遭遇する・・・


イリアは男らしく無いわね、はっきりしなさい男でしょとメリウスを急かす


メトリーは不適な笑みを浮かべ優しくメリウスに解るでしょ?どっちに来れば良いのかと言う・・・


・・・メリウスは困りかね二人に目配せで助けを求める


するとメトリーが男をからかうもんじゃない、ほら食事が冷めるじゃないか


こっちへ来て食べなさいと助け舟を出してくれ


メリウスは従いメトリーの隣に座ると、メトリーは素直で良い子だねと褒め


勝ち誇った顔を浮かべる・・・


それを見てイリアは、後で覚えておきなさいよとメリウスを軽く睨む・・・


そしてメリウスはある会話の中にいた


イリアは不意にメリウスの様な子が欲しいと言う


メトリーは、あの男はやめときな、ろくな男じゃないからねと言う・・・


イリアは良いじゃない、あんな男滅多にいないわよと詰め寄る


そんな会話をメリウスは聞いていて、アジールさんの事ですか?と訪ねると


イリアは驚くが、メトリーは笑う


そしてメトリーはメリウスに聞く、アジールをどう思う?と・・・


メリウスは素直に面白そうな人ですと答えると、またメトリーは笑い出す


こんなに笑ったのは久しぶりだ仕方ない・・・あの男をどうにかできるなら良いだろうとイリアに言う


イリアは満面の笑みで何度も聞き返す


メリウスに感謝するんだよとメトリーが言うとイリアはメリウスに駆け寄り抱きしめ頬にキスをする


メリウスは頬を赤くし硬直するとイリアは可愛いと呟く


こら!イリア男を惑わすんじゃないよ、まったくこの子は・・・とメトリー  
 

そんな微笑ましい夕食を終えイリアはメリウスを送ると夜道をふたりで歩きながら話す・・・


イリアは言う、あの花畑の手入れが終わったらアジールに見せたいのと


ティリスに頼んであの人の為にやったの・・・


私が小さい頃に、あの人がお前に似合うって髪に挿してくれた花があの花なの 


気にいってくれると良いのだけど・・・


メリウスは大丈夫だよきっと気にいってくれるはずだよ、とイリアを励ます


あの人が花畑を見て気にいってくれたら告白するとイリアは言うが、不安がる


メリウスは大丈夫きっと上手くいくよと何度も何度もイリアを励ます


そしてメリウスは孤児院へ帰りティリスにその事を告げふたりで応援しようと話しが盛り上がると


ティリスもぽろりと零す、私はリゲルの事が好きなのと・・・


ティリスははっと気付き、今話した事は内緒ねと、その夜は更ける・・・


メリウスはベッドの中で今日はなんだか面白い日だったなと振り返り心地よく眠るが


翌る日、事態は急変する・・・


メリウスが高台にある花畑へと水や花の手入れをし様と向かうが・・・その光景を見て呆然とする


あきらかに誰かの仕業によって花畑が荒らされていた・・・


あと少しで綺麗な花を満開に咲かせるはずだったのに・・・


いったい誰が・・・少し冷静さを取り戻し辺りを観察すると、いろいろ解る事がある


足跡は子供の様・・・花を見る限り、時間的には少し前の出来事の様だ・・・


そこへ聞き覚えのある、笑い声が聞こえてくる・・・


どうやら、その声の主達は木の陰に隠れ見張っていたらしい


・・・・・メリウスは足元にある花を拾い、声の主達がどう出てくるのかを待つことにした


アッシュ「ここは俺達の遊び場だ、勝手にそんなもの作られちゃ困るんだよ、孤児の赤毛」


喋りながら木陰からガキ大将が姿を現す


メリウスは花と一緒に拾った石を強く握り締め


アッシュ目掛けて飛びかかろうとしたが四方から痛烈な衝撃を受け、地面に転がり倒れる


アッシュ「ははは、残念だな赤毛コレを見な」


それはY次の木の枝の先端にゴム紐が付いている、子供のおもちゃだが


その威力は使ってる本人達は知らない様だ・・・小動物なら軽く殺せる様な代物・・・


子供の遊びと言うのは時に残虐極まりないものと成るが、何故か?


その遊びに対して制限と限度がないからである


メリウスは辛うじて急所には当たってはいないが、足や腕が痛みで震え・・・死と言うものが頭を過ぎる・・・


アッシュ「お前、こんな所で死にたくはないだろ?だったら俺達の奴隷になれ!そうしたら許してやるぞ」


・・・・・許す?いったい何を・・・?生きる事の許しをここで・・・こいつらに請わねばならないのか・・・?

膝を付きながらメリウスは考える・・・いったいどうすれば・・・


血が滴るヴィルのスカーフを握り締め、この状況を考えてると、そこへイリアが駆け寄ってくる


直ぐ様にメリウスを抱きしめるイリアだが状況が読み取れていない様子・・・


アッシュ!そんな物で人を撃ったら、どうなるのか解らないの?とイリアは叫ぶ


「うるさいんだよ、黙れ!俺の親父に使われてる身分の分際で俺に口答えするな!」とアッシュ


メリウスはイリアに謝る・・・花畑がこんな事になって自分がいけないんだと


「悪いのはこの子達だからメリウスは謝る必要はないと慰めてくれるが・・・状況は何も好転しない


アッシュ「イリア、そいつを放せば許してやる、そうしないとお前もコレの餌食なるぞ」


アッシュは内心まずい事になったと思っていた・・・


イリアはアジールが妹の様に可愛がっている事を知っていたから・・・


しかし、仲間が見ている手前アッシュも引くに引けない状況になっている

アッシュとイリアの口論が始まる中、メリウスはイリアから抜け出そうとし、顔を上げた瞬間に


やっちまえ!と木の陰から石を放つ奴が・・・アッシュはやめろバカ!と叫ぶが


放たれた石はイリアの頭部に直撃する・・・イリアの顔を血が流れ滴り落ちる・・・


その瞬間メリウスはイリアから離れようとしたが、強く抱きしめられイリアは言う


「ダメ、死んじゃう」と・・・


アッシュは仲間の行動を抑えるのに必死で、その状況に戸惑っていた


メリウス「放してくれ・・・大丈夫だから・・・イリア?」


イリアは、もがくメリウスを必死で抑える


メリウス「放してよ・・・あんな奴等には絶対負けないから・・・お願いだから放してくれ・・・」


「放せー!」とメリウスが叫び上げると、何かの箍が外れたかの様に一斉に四方から石が飛んでくる


メリウスはイリアの体越しに、その衝撃を感じて叫ぶ・・・言葉ではない叫びを何度も・・・繰り返す


その時、誰もが驚くような大きな声で


「てめぇーら!そこを動くんじゃねー!」とアジールが姿を現す


場は静まり返り、誰一人声を出せる者はいなかった・・・

・・・アッシュとしては、一番恐れていた事態へとなり、身を震わせる

アジールは鬼の様な形相でアッシュの前まで歩を進め話し掛ける

「アッシュ 仲間を連れて今すぐ消えろ」

・・・「こ、これは・・・俺がやった訳じゃないんだ」とアッシュは言いうと

「俺が言った言葉、聞こえなかったのか?・・・それじゃ仕方ないな」とアッシュを蹴り飛ばす

アッシュは地面に叩き付けられ苦しむが、誰一人として木の陰から現れようとする仲間はいない

・・・アジールの形相は険しさを増す

「いま!俺の前に姿を出さなかった奴は容赦しねぇ!そのまま とっとと消えろ!」

アッシュは苦しみながらも木の陰へ逃げ、仲間の助けを借り、道なき道を帰る

アジールはイリアの元へ行き、気遣いの言葉を掛ける

[私は大丈夫だけど・・・この子が・・・」と言葉を詰まらせ泣くイリアだが

アジールは優しく言葉を掛ける

「イリア悪いが一人で帰れるか?・・・俺はそいつと話があるんだ、男としてのな」

イリアは頷き、立ち上がりアジールの目を見て「・・・お願い」と言い、そこを後にする

・・・アジールの目の前にはメリウスが居るが・・・様々な感情が心を乱し泣き崩れていた

アジールは「小僧、立て」と言いながら、メリウスの腹を蹴り飛ばす・・・

(ただいま修正中、後程更新)










そして次の日もメリウスはいつもの様に朝から昼過ぎまで「メトリー」と「イリア」に色々な事を教わる

するとこの日は「リゲル」や「ティリス」の事も教えてくれた・・・

「メトリー」が静かに語る・・・


今から20年程前に大きな戦争が起きて「ヴェリス」の町は焼け多くの人が死んだ・・・

そして戦で親を亡くした子をふたり預かる事になる・・・

それは15歳程の少年「リゲル」とまだ幼子だった「ティリス」・・・

我が子と同じ様に育てたけど「リゲル」は17歳の時に傭兵になると家を出て行ってしまった、そして2年後に「リ


ゲル」は私を訪ねてくると血にまみれた革袋を差し出して育ててくれた礼だと大金を置いて「ティリス」は自分が育


てると連れて行き、今ある孤児院の所に小さな家を立て仲間達と一緒に暮らす事になった・・・

それが今では立派な孤児院となり今でも私を気遣ってくれるが・・・

どれ程の事をして来たかと思うと心が痛む・・・

人は戦う事では戦いを終わらす事はできない哀れな生き物なのかもね・・・と語る仕草は哀しげなものだった

そんな「メトリー」を見てメリウスは力強く言い放つ、必ず戦いを終わらせる人と人同士が争い憎しみ合う事は間


違いだと哀しみを失くす為に、決して揺るぎのない力を手にして明るく平和な世界を掴み取ると誓う

「メトリー」は年端もいかぬ子のメリウスの力強い眼差しに若かりし頃の「リゲル」の面影を見て

メリウスを抱きしめながらに心してお聞きと言う・・・人は産まれながらに尊い生命を犠牲にして生きて行く

その犠牲なる者達を軽んじてはならない感謝と慈しむ心は捨ててはならぬ・・・そして力を得る事も同じ

多大な力を欲すれば欲するほどに、それに等しき負の力を背負う事になるのを忘れてはならないよ

そう言い聞かせると「メトリー」は立ちあがり、ある物を取り出してきてメリウスの胸に付ける

それは四葉のクローバーのブローチ「メトリー」の家に代々伝わる幸運を導く品との事

メリウスは貰う事はできないと戸惑っていると、メリウスの胸に付いているのが相応しいと微笑む

そして時刻は夕刻前となり「メトリー」と「イリア」に礼を述べ足早にそこを去る


メリウスは、この日も書館の裏口から出て、ある所へと向かう・・・

そこは「ヴェリス」の港町を一望できる高台・・・いつもの様に日が沈むまで赤く染まる光景を眺めている

そして此処にはもう一人の女性の姿がある、その女性はいつも高台の一番海に近い方へ立ち優雅に歌う

その様は素晴らしく美しい絵画を見ているようにメリウスの目には映っていた・・・

メリウスはいつもの所に座り彼女の歌を聴くのが好きだった、嫌な事なんか忘れて心温まる気分になれる

女性は歌い終えると、いつもは足早に町へと戻るのだが今日は違いメリウスの横へと来る

女性の名は「イシュタル」ワインレッドの鮮やかな衣服を纏い、美しく輝く長い黒髪と哀しげな瞳を持つ女性

そして胸元にはワインレッドに輝くペンダントと右手首には金色に光る蛇のブレスレッドをしている

「イシュタル」はメリウスの横に座り話し出す・・・

ここから見る夕日はとっても綺麗ね

赤く染まる町を見渡していると日常の嫌な出来事も些細なものに思えるけど、小さな子供がこんな人気もない所


にひとりで来るなんて感心しないわね、とメリウスの表情を伺う

メリウスは言葉にしようと思った言葉をを飲み込む・・・

すると「イシュタル」は、残念ね力になれるかと思ったのに・・・と言い立ち上がる

私は歌を唄いながら色々な国を旅をしているの、どこの国でも争いはあるけど・・・

いつの日か争いのない日が来ると信じて歌い続けるの、そしてここで歌うのは今日で最後・・・

「イシュタル」はメリウスに名を聞きく

もしメリウスに掛け替えのない人や心に誓った想いがあるのなら自分自身には決して嘘をついてはいけない

そう言い残し、早く帰りなさいとイシュタルは立ち去った・・・


そして夕日は沈みメリウスは高台に立ちながら薄暗くなる町の様子を見渡していると「アッシュ」達らしき人影を


見て足早に高台を後にする

メリウスは孤児院へ向かう道を歩いていると「アッシュ」達は現れ、今日こそ捕まえて泣かせてやると息巻いてい


る、いつもながら飽きもせずに追ってくる事に感心させられる

メリウスはいつもの様に軽く逃げる事は出来たが

今日は少し違っていた孤児院の前まで来ると三人の手下が見張りをしている・・・どうやっても捕まえる気らしい・・・

メリウスはその三人に砂を投げつけ追わせる様にして港の倉庫街へと逃げ込む
「アッシュ」達も倉庫街へ集結してくる

メリウスの思惑は、この場で撒いて、諦めて帰る奴らを狙い暗闇の中一人づつ始末を付ける気でいたが・・・

ここは治安も悪く遠方から来る船乗りや酒場に屯するゴロツキ達の溜まり場、町の人でも立ち寄らない場所で、


ましてや子供なんかの来る所ではない、辺りもすっかり暗くなり酒場に明かりが灯る

メリウスはワザと袋小路の所へと「アッシュ」達を誘い込み

塀を駆け上り倉庫の影で息を潜めながら様子を伺う、「アッシュ」達は見失ったと諦めて帰ろうとするが・・・

そこへ現れた謎の集団が「アッシュ」達を捕まえ次々と縛りあげ大きな袋に入れて運び去ってしまう

人売りと思われる集団・・・


メリウスは思わぬ展開に戸惑いながらも身を潜めながら後を付ける


・・・このまま放っておけば彼等はどうなる・・・


知った事じゃない!奴等が一体何をしてきたんだ?


当然の報い・・・もどかしい考えが頭を交錯するが、考えを一つに決め追う事にする・・・


大袋を持った男達はそれを自分達の停泊している帆船に載せ集団は酒場に向かう

メリウスは周囲の気配を読み取りながら帆船に近づくと船上には明かりを持った見張り役がいる事に気付く

船上にひとりと船倉の中には何人もの気配を感じる・・・「アッシュ」達は船倉の中・・・

運良く橋は掛けたままになっている

そこでメリウスは小石を手にし橋を上がる・・・物音を立てないように慎重に歩を進め、船体に近づいた時

小石を船首に当て船上にいる見張りの注意を惹き隙を見て船へと忍び込む事に成功する

次に船橋にと入ると中にあるランプとナイフを手に入れ気付かれない様に船尾に向かいランプに火を灯し甲板に投げつけ火を放ち身を潜める

すると容易に火は広がり燃え盛り、船首近くの見張りは気付き船倉から仲間を呼び慌てて火を消しに掛かる、その隙にメリウスは見付からない様に素早く船倉へと続く階段を下りて行く・・・

船倉の中には明かりが灯してあり縛り上げられた「アッシュ」達の顔が確認でき

他にも若い女性達が縛られていた・・・

メリウスは縛られている縄をナイフで切り解きながら「アッシュ」に話す

囮となって見張りを惹きつけるから合図をしたら「アッシュ」は、みんなを誘導して逃げてくれと頼むと

「アッシュ」は頷いた

そしてメリウスと「アッシュ」は船倉内にあるランプを手にし、メリウスは船上へと駆け上がり

3本あるマストの中間にあるマストにランプを口に銜えながら登り中段辺りまで来た時に

ランプを船尾めがけて投げつけると消え掛かっていた炎が再び燃え上がる・・・


見張りがメリウスに気付きマストを物凄い早さで登ってくる


そしてメリウスはマストの天辺まで着き行けと叫ぶと「アッシュ」達は船倉から出てきて次々と船橋を渡る人影が見える・・・


上手くみんなを逃がす事には成功したが勢い余ってマストの天辺まで来た事に少し後悔した・・・

並みの高さじゃない・・・


すぐ下には見張りの男が迫っている・・・考える時間はない・・・


メリウスはふと腰に差しているナイフでマストに括り付けてある帆切りつけてみると意外と頑丈な布である事に気付く・・・


その時、見張りの男がメリウスの居る位置まで上がってきて捕まえようと手を伸ばす

メリウスは身を乗り出しナイフを帆に鋭角に刺し雄叫びと共にナイフに身を預け飛び降りる

順調に帆を切り裂きながら落ちて行き・・・


無事に降りる事はでき、急いで船から下りようと橋へ向かうと・・・人売りの集団が戻ってくる


そしてマストの上に居る見張りが叫ぶと、あっと言う間に追い詰められてしまう・・・


メリウスは何とかして逃げようと奔走するが、敢え無く網に掛けられ捕まってしまう。





ここは「レージェライ」の街の中央にある広場・・・

周囲の建物は赤々と炎を上げ、数多くの人々が息を引き取り倒れている・・・

惨劇の只中に4人の姿があるだけ・・・アルは「ディアーヌ」を抱いたまま気を失い倒れ、そして・・・謎の男と女性・・・

男は、とても哀しい気な瞳をしていて髪の色は銀髪、赤い衣を纏い腰には一振りの剣を携えている・・・とても戦士とは思えない風貌

女性は、切れ長の瞳で黒髪は肩に届き白い衣を纏い、その様は容姿端麗

女性は耳にする微かな声の元へ男と共に寄る・・・「ディアーヌ」の泣き声だ・・・ふたりを抱き上げ男に連れて行く事を哀願するが、アルが身にする金のブレスレッドを見つめ叶わぬと言う・・・しかし、この場に見捨てても措けぬと・・・アルを抱いたままの女性と共に姿を消した・・・

アルは微かに気がつくが目を開く事はできない・・・男と女性の話し声だけが聞こえる・・・

女性は男に訪ねる、本当に此処で宜しいのかと・・・

男は頷き、この者達には進むべき道が在るようだと・・・

そして男はある名前を口にする・・・「メリウス」よ・・・心して臨め・・・

ふたたびアルは気を失う・・・此処は何処なのか・・・「メリウス」とは・・・・

夜明けの囀りを耳にしてアルは目を覚ます・・・木造りの小屋の中に「ディアーヌ」と共に居た・・・周囲には人の気配はない、外に出て見ると・・・そこには湖が見える、しかも見た事のある風景だった

・・・夢で見た光景・・・アルは気付く此処は「レージェライ」から遥か南にある湖だと、それと身に付けている物にも・・・

右手にある蛇が巻き付いた様な金のブレスレッドと首に下げられた青い石・・・

祠にあった筈の宝石が何故・・・少し考えたが、解らないので他の事を考える・・・

小屋に戻るとロープや木炭と少しの備品はあるが食料はない・・・赤子を連れている以上動く事もできない、アルはこの場で生きて行く事を決意するが・・・

アルは途方に暮れながら周辺を探索すると、水辺には様々な動物達が生息し、その中には牛や山羊の姿もある・・・アルは持てる力や知恵を駆使し生きる事に全力を注ぐ・・・

数日経ったある日、「ディアーヌ」が高熱を出してしまう・・・アルは寝ずの看病をするが容態は良くはならない・・・3日目の朝、アルは水を汲みに湖へ向かうが水辺で気を失い倒れてしまう・・・

・・・アルは夢を見ていた見ていた・・・辺りは青白く輝く霧の中・・・水辺に呆然とアルは立ち尽くしている・・・

すると湖の中を巨大な蛇の様な影が蠢いていて・・・水飛沫と共にその影は姿を現す・・・それは巨大な竜

アルは驚き後ずさりをするが・・・見上げると竜と赤子の姿がある・・・

竜の手には「ディアーヌ」が握られている・・・アルは叫ぶ・・・すると辺りに竜の咆哮が轟き竜の姿は空に消えた・・・

・・・アルが次に目が覚めると・・・そこは馬車の中、傍には男と女性の姿があり女性は「ディアーヌ」を抱いていた・・・

男の名は「リゲル」鍛錬された強靭な肉体と鋭い目付きが特徴の男

女性の名は「マイア」優しい瞳に少し膨よかな容姿の女性

「リゲル」は気付いたアルに声を掛けれる、何故あの様な所に居たのかと・・・アルは今までの経緯を語ると・・・「ロフト」・「ハズリット」・「ヴィル」・「セレーヌ」の事を・・・「マイア」は涙を流しながら「ディアーヌ」は大丈夫と言う・・・

そして名を聞かれるがアルは「メリウス」と名乗る・・・アルと呼ばれる事を無意識の内に拒んでいた・・・

「リゲル」は「レージェライ」の事をよく知っていた・・・「リゲル」達は傭兵であり、その団長を務めている

そして「レージェライ」に駆けつけた時には全てが終わっていた事を・・・人々の亡骸は丘の麓に弔ったと・・・その中には「ロフト」らしき者達は居なかったと言う・・・

メリウスは涙を浮かべながら顔を背け・・・傍に見える財宝の数々を目にして少しの不信を抱きながら眠る


「リゲル」率いる傭兵団は「ヴェリス」の国に到着する、アストリア大陸の東沿岸にあり陸路・航路共に貿易に富んでいて、五つもの国に囲まれている北東は「ジュピトリア」北は「ドーリュア」北西は「レージェライ」西は「ダヴォシー」南は「ベルディン」その中で「ジュピトリア」と「ダヴォシー」とは連盟を結んでいた

ここからは「ヴェリス」の湾曲状に栄える港町で物語は繰広げられる

メリウス達を乗せた馬車は、ある大きな建物の前で停まる・・・「リゲル」は説明してくれる、此処は孤児院で中にいる子供達は皆、戦争で親を亡くした孤児、そして此処がメリウスの暮らす場所になると言い「リゲル」は院内に入り一人の女性と話していると子供達が「リゲル」の元へ駆け寄る

メリウスはその様子を眺めていると院内の女性から声を掛けられる、その女性はこの孤児院の子供達の世話をしている、名は「ティリス」凛とした面持ちの美しい女性、この孤児院では皆のお姉さんでありお母さんと言った役回りか・・・そうすると「リゲル」の役回りも解る気がする

「ティリス」は「マイア」から赤子を授かると子供達を広場に呼び、メリウスを紹介し仲良くしてあげてと皆に言い聞かせる、メリウスは戸惑いながらも挨拶をし回りを見渡すと同い年位の子供達を見付ける

「ゼフィル」は「リゲル」の様になりたいと想い硬派を目指す少年

「シーリス」は男勝りな活発な女の子

「ジニアス」はお気楽な態度する少年

「ローズィム」は手先が器用で少々変わった趣味を持つ少年

「レクス」は物事を賢く立ち回れる少年

「グラディニー」は少し内気の少年 

その中のひとり「ジニアス」が気さくに話し掛ける、いろいろな事をメリウスに聞くが、その問いに答える気にはなれなかった・・・

そして「リゲル」を見ると馬車から何かの荷物を運び終えた所で目が合うと、こちらに駆け寄りメリウスを励まし「ティリス」に後は頼むと言うと「リゲル」達は去って行った・・・

メリウスは「ティリス」に連れられ孤児院内の説明を受ける、彼女はランプを手に歩く灯りが無いと行けない場所があるのだ、その中でメリウスの目を惹いたのは書庫、建物の奥にありとても薄暗い場所・・・

メリウスはすぐに本が読みたいと言うと少し待っててと「ティリス」は外へ向かい


「ゼフィル」と「シーリス」を呼び少しの間メリウスと書庫に居るから、子供達をお願いと頼むと「ティリス」はメリウスが待つ書庫へと行く

・・・「ゼフィル」は子供達に慕われる存在ではあるが「シーリス」を少々苦手としていた・・・


ふたりは「ティリス」の言付けを守り子供達と一緒に世話をしながら遊んでいるのを


遠巻きに「ローズィム」と「グラディニー」は見ていたが、二人の姿がない「レクス」と「ジニアス」だ

メリウスは書庫で「ティリス」に本の読み方や言葉の意味などを教わり様々な本を読んでいるが


その様子は少し変わったもので本をパラパラとめくるだけで本を読んでいる

「ティリス」は静かに口を開く


ここには様々な本が置いてあって明かりを灯さないといけないから私と一緒じゃないと使う事はできないと言い、さらに話しを進める・・・

ここには様々な理由で孤児となってしまった子供達が集まる所


そして私も同じ孤児で、ここで育ったと話し、何か力になれる事があれば何でも言ってと告げる・・・

しかしメリウスは口を開く事もなく本を読んでいる・・・


「ティリス」は何かを感じ優しく見詰める・・・

そんな様子を扉の鍵穴から覗くふたりの少年・・・


中で二人が話してる内容は聞き取れないでいる、その表情は興味津々の目と憎々しい目の二つの視線が注がれていた・・・

メリウスは孤児院に来てから誰とも仲良くしようともせずに、「ティリス」にせがみ本を読む日々を過ごしていたが・・・

ある日「ジニアス」も本を読むと付いて来るのだが、本を読むふりをしてメリウスの隣に座りヒソヒソと話し出した・・・


その内容はその金のブレスレッドとペンダント肌身離さず付けてるけどお守り?


とか本読んでて面白いの?


外でみんなと遊んだ方が楽しいよ?


と「ジニアス」なりの誘いだった

渋々とメリウスは応える・・・


自分の無力さを思い知らされたから本を読み知識を得ているのだと・・・


「ジニアス」はそれを聞くとあっさりと書庫を後にする、そして数日経ったある日に事件が起こる

いつもの様にメリウスと「ティリス」は書庫にいる、「ゼフィル」達も子供達と一緒に外で遊んでいたが


意を決したかの様に「シーリス」に少しひとりで見ててくれと頼み建物の中へ入って行った

「ゼフィル」は灯りを手にして書庫へと向かうのだが・・・

通路の角で何者かに突き飛ばされて転んでしまい手に持っていたランプは床に落ちて割れ


瞬く間に火が広がる・・・


「ゼフィル」には成す術は無く・・・


ありったけの声で叫ぶ・・・

メリウス達は辛うじて外に出る事はでき、「ゼフィル」は「リゲル」を呼びに走る、周りには建物が燃えてゆく様を泣きながら見つめる子供達ばかり・・・


その中で「グラディニー」の姿がないと「ジニアス」が騒ぐ・・・

・・・メリウスは炎を前に激しい息苦しさに襲われている・・・


「レージェライ」での光景が鮮明に目に映る・・・

そして「シーリス」が子供を捜しに「グラディニー」は建物に入って行ったと・・・


確かに外に出て来てない子供ふたりが中にいる・・・

しかし炎は一段と勢いを増す、中から誰かが出てくる様子もない・・・


「ティリス」は子供達に呼びかけ井戸の水を運び掛けている・・・

メリウスは呼吸を整えるのに必死だったが「ヴィル」から貰った白いスカーフを握り締めると


不思議と落ち着きを取り戻し、自ら水を被り「ジニアス」にふたりを助けると告げ燃え盛る建物の中に消えた・・・

炎に焼かれ次々と崩れ落ちる建物・・・


そしてようやく「リゲル」達傭兵団も駆けつけて消化にあたる

しばらくして・・・


炎の中から人影が見える・・・

「グラディニー」を背負い片方の手で子供を抱きながら歩いてくるメリウスの姿が・・・

「リゲル」達が駆け寄るとメリウスの意識は途切れた・・・




・・・ある男と女が話している・・・女が「アストリア」で戦があると男に伝えると、男は立ち上がり女と共に闇に消えた・・・

「アストリア」は緑豊かな大陸・・・アルのいる大陸の名


ふたりは歩いてる 見慣れた風景をよそ目に眩しい程の朝日を浴びながら

明日は「あの祠」で祭りが行われると「ヴィル」が言うとアルは少々気まずい顔をしていた、つい先日に「あの祠」に忍び込み遊んでいる所を見付かり「ハズリット」にこっぴどく叱られていたからである

「あの祠」とは「レージェライ」の南東に位置する丘の頂にあり堅固な石壁に囲まれ厳重に守られている、中に入ると石碑が在り祠の中には微かな洞穴がある、年に一度国を挙げ神々に感謝の念を込め祭り事をするのが明日なのだ

アルは「ヴィル」の家へ着き、「ハズリット」から預かった花を女性に渡すと、花のお礼にと朝食をご馳走になっていた、そこには美しい女性と可愛い赤ん坊いる「ヴィル」の妻と子だ

女性の名は「セレーヌ」歳はヴィルと同じ位、金色の髪で長さは腰に届く程、細身ではあるが魅力的な女性

赤子の名は「ディアーヌ」二人に授けられた女の子 歳は1歳程母親似である

アルは「ヴィル」にいろいろな話をしてもらうのが好きだった、城の事や他国の事や戦の話しを、戦と言っても この国では戦らしい事はないが東西の国の要請により援軍として遠征に赴く事がある程度

「ヴィル」も他国の兵士の話を聞かせたりする程になる「ヴィル」の話しでは遥か西の国々で戦になっていると言う

そして兵士の間で噂になっているのは「ロフト」と言われる謎の集団の存在・・・神出鬼没にして残忍酷薄、非道の限りを尽くし戦場では常勝無敗だと言う・・・彼等が通った後は目を覆いたくなる様な惨劇らしい・・・

アルは不意に今朝見た夢の事を思い出すのだが何故だか内容はさっぱり忘れてしまっている 何か嫌な夢だった位しか思い出せないので話すのは戸惑っていた

そんなアルの顔を見て「セレーヌ」は赤毛が綺麗と褒めてくれるとアルは顔を赤くし、照れ隠しに赤ん坊と遊ぼうとするが赤毛を捕まれ逆に遊ばれてしまう「ディアーヌ」はアルの赤毛がお気に入りであった

「セレーヌ」は微笑ましく、その様子を見つめながらアルの様な元気な男の子が欲しいと呟くと、「ヴィル」は咳払いしてアルに目で合図を送ると、ふたりは家を出て近くの広場へ向かった「ヴィル」に剣技を教わるのだ

ふたりは広場に着くと木の棒を手に剣技を繰り広げていた、その剣技とは「ハズリット」譲りの技・・・「ヴィル」は幼き頃より「ハズリット」に剣技を教わっていた剣の師匠と言った所か、その頃の自分とアルを重ねて看ていた

そしてアルは他の子にはない程の身体能力とある特技を身に付けている、それは集中する事により アルの目には全てがスローモーションの様に見えるのと、あらゆる気配を正確に読み取る能力・・・剣士としては達人の域の能力なのだが、所詮子供である

そこへ息を切らせながら兵士が駆け寄ってくる・・・その男の話によると西の砦に属する部隊の消息が途絶えたと・・・そして新たに送った部隊も戻ってこないらしい兵士は事を告げると走り去った・・・

「ヴィル」は険しい表情と共にアルを連れて家へと戻り、「セレーヌ」に急ぎ身支度をして街の中央にある広場へ向かえと告げると城に向かった「ヴィル」は騎士団に属する身であるからだ

アルは「セレーヌ」・「ディアーヌ」と共に広場へ向かうと そこには多くの民が集まっていた、中央に見慣れた風格の老人が民衆を束ねている「ハズリット」だ アルは駆け寄るが再会を喜ぶような状況ではなかった「ハズリット」はアルに「セレーヌ」と共に居ろと、そしてこれから馬車に乗り東の国「ドーリュア」へ向かへと言う

もう日差しは頭の上へと昇っていた

アル達は第一団の馬車に乗り「ドーリュア」へと向かっていた、護衛は10名程で馬車の数は5を数える、アルが乗っているのは最前列の2頭立帆付きの馬車、乗り合わせているのは女子供達20名余、道は森の中で馬車が通れ このまま進めば夜明けには「ドーリュア」に着く、アルは馬車の中でピクニックに行く様な気分でいたが「セレーヌ」の表情は少し違っていた・・・

・・・陽が暮れるという頃に異変は起きる・・・

アルは異変に気付く・・・静か過ぎる・・・外に要るはずの兵士の気配が感じられない・・・後ろを覗くと誰もいない・・・アル達が乗る馬車だけだ・・・そして街のある方角の空は赤々と見え・・・悲鳴の様なものが聞こえる・・・

アルが叫ぶと共に馬車が止まる、馬は倒れ従者の姿はない「セレーヌ」は呟く敵襲だと・・・皆、外に出て様子を伺う・・・すると一人の女性が倒れてしまう近寄って見ると喉元に短刀が刺さっていた・・・恐怖の余り悲鳴が轟く

その場に立ち竦む者 へたれ込む者 泣きじゃくる者 その様子を見て「セレーヌ」は東の方角へ逃げてと強い口調で言い放つ・・・アルは気が動転しているが言葉に従い 皆と共に走り出す・・・ 

アルには、この状況が未だ理解できずにいた 戦・・・?誰が何の為に・・・?息苦しさがアルを襲う

気が付くと「セレーヌ」とアルだけになっている・・・後ろを振り返ると女達は倒れていて黒い影が覆いかぶさる

次の瞬間、「セレーヌ」は悲鳴と共に倒れ黒い影が「セレーヌ」へと近寄る・・・アルは咄嗟に小石を拾い力の限り握り締めて黒い影目掛け渾身の一撃を浴びせた、その正体は黒装束に覆面をしている人間であった・・・上手く急所に当たったのか黒い影は倒れ・・・そして「セレーヌ」に目を向けると胸には短刀が突き刺さっていた・・・

・・・何か言葉をアルへ向けて言っている様だが上手く聞き取れない・・・「セレーヌ」の口から血が滴っている

激しく胸を込み上げる息苦しさにアルは「セレーヌ」へと倒れ込む・・・微かに聞こえる・・・逃げてと・・・

アルは「ディアーヌ」を見ると今にも泣き出しそうな表情・・・赤子は無事だった

力無き「セレーヌ」の手から「ディアーヌ」を抱き上げる、すると激しい息苦しさから開放され・・・今まで感じる事の出来なかった黒い影の気配を読み取れる・・・後方に9人・・・倒れた女性達へと群がり、その子供達は捕らえられている・・・気付かれないように森の方へ向かうが・・・その中の1なる存在がアルの方へ近づいてくる・・・茂みに隠れようとするが小枝を踏み気付かれてしまう、だがアルは力強く「ディアーヌ」を抱きしめると木々の間を縫って森の中へと走り出す・・・

黒い影の追手は一人の様だがアルは赤子を抱えている・・・アルひとりなら逃げ切る事は出来そうだが、そんな考えはアルには無かった無我夢中で闇の森を駆け抜ける・・・が段々と追手の気配が近づく・・・次第に腕は痺れ足は思うように動かなくなり息も苦しくなってきた時、森を抜けた光景は東の国「ドーリュア」では無く、「あの祠」がある丘であった・・・月明かりが照らす、そして北西の方角は空は赤く燃えていた・・・

力の限りを振り絞り丘を駆け上がる、しかし「祠」は石壁に囲まれ扉も鍵が閉めてあり入る事はできないがアルには思い当たる節がある、それは「祠」の裏手側の石壁にはアルが辛うじて通れる程の隙間があるのだ

アル達はなんとか石壁の中へ入る事ができた、一回でも躓いたり、隙間を通る時に服が引っ掛かりでもしたら捕らえられていただろう・・・そんな至極僅かな程の差しかなかった・・・アルは中央にある石碑に凭れ込む・・・腕は痺れ足は小刻みに震えていた、もう駆ける体力は無い・・・しばらく周囲の様子を伺う・・・追手の気配は周囲を徘徊するが動きが止まる・・・すると硬い物で石壁を突付く音が聞こえる、まだ諦めてはいなかった様である

アルは、まさかとは思いつつも「ディアーヌ」と共に場所を祠の奥の洞穴へと移す、そこの中は真の闇・・・手探りで奥へと進む、外からはまだ音が聞こえていたが・・・音は途絶える、アルは安堵の思いで座り込もうとした・・・

その時、気配が近づいて来ている事に気付く・・・真の闇の中後ずさりをする・・・気配は確実に距離を詰めて来ている・・・今朝みた夢を思い出させる・・・数歩後ずさりをした時、急に体が軽くなった・・・穴に落ちたのだ・・・数メートル落ちている所でアルは気を失った

・・・気が付くと辺りは青白く光る洞穴の中・・・何かぼんやりする意識の中「ディアーヌ」は?と思うが、しっかりと腕の中に居た不思議な事に二人とも傷ひとつ無い・・・ふとある気配に気付く・・・そこには白い小さな蛇がいた・・・
アルは思う何処かで見た様なと・・・白蛇は洞穴の奥へ向かう・・・アルは何の躊躇もなく後を追う・・・すると小さな祭壇の前で白蛇は佇んでいる・・・祭壇に目を送ると青い宝石の様な物がある・・・

アルは徐に青い宝石を手に取り目を閉じて心から願った・・・助けて欲しいと・・・すると今までの不安や苦痛が消えていく感じがして・・・次第に意識が薄れていく・・・倒れゆく意識の中・・・小さな白い蛇はアルに寄り添っていた・・・

・・・目が覚める・・・アル達は外の石碑に凭れていた・・・アルは「デイアーヌ」を抱き寄せようとした時に気付く・・・二人とも血だらけ・・・「セレーヌ」の血だ・・・アルは周囲を警戒する・・・誰もいない・・・

アルは少し目が虚ろになりながらも石壁を抜けて「祠」を後にし、空が赤く燃える「レージェライ」の街へ向かう・・・アルは、まだ気付いていないが右手首には小さな蛇が絡み付いた感じの金のブレスレットと胸には青いペンダントを身にしていた・・・

その頃「レージェライ」城周辺では城は既に落ちていて市街地戦へ赴いた部隊が僅かに残るだけとなっていた・・・

そして街の風景も一変している、あらゆる建物から炎上がって逃げ遅れた人達や兵士の死体が横たわっている

街の中央より南の通りで体格の良い老人と黒装束の者が対峙していた・・・老い歳を感じさせない、その剣技は「ハズリット」、既に10人程倒している様子・・・鮮やかな剣捌きで交わしているが退いているのは「ハズリット」だった

「ハズリット」は路地へと追い込まれ・・・後ろから忍び寄る影の気配・・・敵に挟まれている・・・

そんな時に放心状態のアルが赤子と共に通りを歩いてるのを目にする

「ハズリット」は意を決して眼前の敵へと剣を振るう、すると後方の敵も飛びかかってくる・・・後方の敵と体が一対になり掛ける時「ハズリット」は半身になり後方の敵の足を薙ぎり次に前方の敵も切り伏せ横たわる敵に止めを刺した

「ハズリット」は急ぎアルを呼び止めると、アルは正気に戻り泣きじゃくりながら「セレーヌ」の死と敵に追われ戻って来た事を告げる・・・


「ハズリット」はアルに護身用の短剣を託しながら言い聞かせる・・・


どんなに世が荒もうとも想いやりと感謝の念は忘れてはならぬと・・・


そしてアル達を抱き寄せる瞬間に鈍い音が「ハズリット」に突き刺さる・・・

「ハズリット」は力の限り走れとアルに告げると剣を抜き、後方の敵へと斬りかかって行った・・・

アルは「ディアーヌ」を抱きしめながら走る・・・


走りながら後ろを覗くと黒い影に囲まれ倒れゆく「ハズリット」が見えた・・・


アルは誰か助けてと・・・広場に着いて愕然とする・・・


5~6台の馬車は燃えていて回りには人々が倒れている・・・

アルは広場でひとりの存在に気付く・・・


「ヴィル」が深手を負い蹲っている・・・


言葉無くアルは近寄る

「ヴィル」は気付き・・・


アルの血だらけの姿を見ると首に巻いてる白いスカーフを手渡して・・・

一言「すまない」と言うと息を引き取った・・・


そこには、あの花の花びらが風で飛ばされていた・・・

・・・もう広場には誰一人として生き残っている人はいない・・・


息が詰まる・・・


苦しい程に・・・


喉の奥が熱い・・・

・・・次第に近寄ってくる敵の気配を感じる・・・


もう逃げる気力も尽きて呆然と立ち竦む・・・

アルは西の方から集まり出す黒装束の集団を見ながら「ディアーヌ」を抱きしめていた

すると東の方からも兵が集結している・・・東の国の騎馬兵団の姿だ

広場を挟み対峙し・・・距離が詰まる・・張り詰めた空気が流れ・・・


・・・すると何処からともなく言葉が聞こえる・・・

優しき人で在りたければ・・・優しき人と語り・・・優しきを知り・・・優しきを分け与えよ

憎き人で在りたければ・・・憎き人と語り・・・憎しみを知り・・・その手を血に染めろ

美しき人で在りたければ・・・美しき人と語り・・・美しきを知り・・・美しきを身に宿せ

醜き人で在りたければ・・・醜き人と語り・・・醜きを知り・・・醜き全てを汚す者となれ

愉しき人で在りたければ・・・愉しき人と語り・・・愉しきを知り・・・愉しきを心より示せ

悲しき人で在りたければ・・・悲しき人と語り・・・悲しきを知り・・・悲しきに心を沈めろ

強き人で在りたければ・・・強きを人と語り・・・強きを知り・・・強き心と共にあれ

弱き人で在りたければ・・・弱き人と語り・・・弱きを知り・・・弱き心で泣き叫べ

賢き人で在りたければ・・・賢き人と語り・・・賢きを知り・・・賢きを無知なる者に揮へ

愚かき人で在りたければ・・・愚かき人と語り・・・愚かきを知り・・・愚かきを命尽きるまで繰り返せ

愛しき人で在りたければ・・・愛しき人と語り・・・愛しきを知り・・・己が信じる愛を身に刻み決して裏切るな

人との絆を求めるので在れば・・・絆在る人と語り・・・絆を知り・・・その絆を全身全霊で守り貫け

孤独を求めるので在れば・・・一切の感情を捨て・・・孤独に身を浸し・・・孤独に死ね

呪わしき人で在りたければ・・・その怨み・・・身が滅びようとも地獄の底まで呪い尽くせ

慈悲深き人で在りたければ・・・悲しみを胸に・・・あらゆる力と叡智をして何者をも救いぬけ・・・

・・・言葉が終わると、その男は広場の中央に居た・・・

血の様に赤い衣を纏った銀髪の男・・・声の主はこの男の様だ、その傍らには白い衣を纏う黒髪の女性がいる

男の言葉が頭の中に響く

これ以上の戦をするのなら、自らが相手になると言い、腰にある剣を抜き天に掲げると凄まじく光り輝き

みな光に包まれた・・・

・・・その光の中では誰ひとりとして動く事は出来ず、人とは思えぬ程の気迫が身を襲う・・・

その中で歌が聞こえてくる・・・女性の歌だろうか・・・それはとても哀しく・・・力強い歌声・・・

そして光が消え男は剣を下ろすと・・・両軍は退いて行った・・・

アルは安堵からか疲労なのか、その場で気を失い倒れ込む・・・

・・・その時を同じくして遥か西の国でアルと同じ境遇の少年を一人の女性が抱き上げていた。