「ヴェリス」の港町は夜が更け静けさの時の中・・・
夜空には無数の星々が煌き 月明かりが美しく弧を描く海辺を優しく照らしている・・・
その静けさの相反する場所があり、港町の一画を占める倉庫街は賑やかさを増す・・・
そこには数々の海賊衆が酒場に集い宴を開く場で、「ヴェリス」国の海軍も一目置く程の無法地帯・・・
ある一団がそこを取り仕切る場となっているが、そんな海賊衆にも誇り高い掟により定まっていた
それは、力を用して略奪する事は禁じられ・力を用して屈服させる事を誉れ高い誇りとする
そして今夜は海賊衆にとって特別な日であり、ある場で宴が大々的に行われていた
場所は変わり「リゲル」の家を訪ねる「アッシュ」と「ティリス」の姿がある
「アッシュ」は皆を家に送り帰し、孤児院の前でメリウスの帰りを待っていたが、帰ってくる気配の無いメリウスの身を案じ、事の真相を「ティリス」に打ち明け此処に来るに至る
部屋の中で「リゲル」と「マイヤ」は、「アッシュ」の話しを聞く「ティリス」も何とかしてくれると信じていた
「リゲル」は「アッシュ」にどの船か解るかと聞くが、夢中で逃げたし何隻もの船があったから解ら無いと言う・・・
この港町で唯一「リゲル」の力が及ばない所が倉庫街一帯を仕切る「レイヴィン海賊団」の存在であり
そこでは何人たりとも彼等の許可なく物事を起す事はできない・・・問題はそこにある・・・
「リゲル」は、ふたりに心配ない必ずメリウスを連れて帰ると約束をして、ふたりを帰らせ
「マイア」に軍資金から金貨百枚を用意させ、仲間内には誰にも話すなと告げ「リゲル」は外に出る・・・
一言、帰って来てねと「マイア」は言うが・・・
「リゲル」は応える事はできずに、そのまま倉庫街へと向かう・・・
一方メリウスは手足と口を縛られ袋詰めされ、船倉内で見張りと共にいた・・・
いろいろな手段で逃げようと試みるが、口の紐を解き 包まれている袋に口で噛み切り小さな穴を開ける事に留まり、寝た振りをして小さな穴から周りの様子を伺う事にする・・・
すると横の船室から集団の話し声が聞こえてくる・・・
今夜中に人数分を揃えなければ俺達の身が危ない、明日は出向だ時間はない・・・
ひとりの男が話す、心配するなこの町のは幸いにも孤児院がある、それを襲撃する
そして集団は口論をし始めるが、その男は、ばれなければ良い事だ、その他に道は無いと言い鎮め
ヒソヒソと話し出す・・・メリウスは事の重大さを知り、袋に開けた穴を噛み切り広げる事に専念する・・・
そして「リゲル」は「バウンティー」と言う大きな酒場の前に来ていた・・・酒場の入り口には屈強な男達が扉を見張る、「リゲル」は入り口に近づくと男達は止められ中に入る事はできないが・・・
男達に、「リゲル」が会いに来たと「ラングゼーブ」に伝えて欲しいと告げると、男達の表情は変わり
しばし待てと、酒場の見張り役の男は中に入って行く・・・
酒場「バウンティー」は、吹抜け構造で正面奥に大きなステージ、左右にはバーカウンター、中央広間には大きなテーブルが幾つも置かれ左右奥には上に
上がる階段があり二階にも幾つものテーブルが犇き上からもステージを見下ろせる様になっていて、数多くの踊り子や歌い手達が賑やかし、この倉庫街で一番の
大きさを誇る酒場
そして中でも異彩を放つひとりの女性がステージ中央に立ち歌を唄い海賊衆はその歌に聞き惚れている・・・
女性の名は「イシュタル」妖艶な赤いドレスを纏い美しく靡く黒髪を翻し優雅に歌う
そして今夜、この場には各国からの名立たる海賊の親分衆や、その取巻きが集い密約や商談の取り決めが行われる会合の場であった
「イシュタル」が歌い終えると何人もの海賊衆がそれぞれに用意した金銀財宝を手に口説きに掛かるが
次々と「イシュタル」に振られていく様を他の海賊衆が笑いあげる
この酒場では、よくある光景で、より強く力を誇れる者が射止める事ができるそして、いざこざも絶えない・・・
ひとりの豪傑で知られる海賊衆のひとり「カイム」が「イシュタル」に問いただすと・・・もっと若くて知性に溢れる人が好きと答え、如何なる様な奴だと再び問うと・・・ひとりの男を指刺しあの様な者だと答える
その男は「ヴェリス」より遥か南方のウルダンの国から来た宝石商であり占い師の男・・・
名は「ファブル」と言い、凛々しい顔立ちと鮮やかな茶色の髪を靡かせ涼しい瞳と褐色の肌
南方独特の青い衣を纏い、胸には鮮やかに輝くエメラルドのペンダントと右腕には金色の蛇のブレスレットをしている
「カイム」が「ファブル」の前に立ち勝負しろと言うが「ファブル」は大事な商談の最中だと断ると
男の勝負もできない腰抜けだと「カイム」は笑い飛ばし「ファブル」は笑われ者になる・・・
「ファブル」は仕方なしに立ち上がり「カイム」に何か賭ける物はあるのかと聞くと
数々の宝石・財宝の全てを賭けると言うと、「ファブル」は酒場の中央広間に立ち高らかに言い放つ
「宴には余興が付きもの、私も持てる全ての財宝を賭け、この男と勝負をする事をお許し願いたい
それと、ひとつ占いを御覧に致します、この者は私に指一本触れる事無く倒れるでしょう」
すると場に大きな歓声が起こり一部では、その勝負に対しての賭けが行われる始末・・・
そして二階の奥からドスの効いた声で「好きにしろ」との声が響く・・・
「ファブル」と「カイム」は広間中央で対峙するが「カイム」は怒り心頭・・・顔を赤くして息捲くる
ふたりは武器は持たず無手の拳と拳の勝負をする事になる
ひとりの海賊衆が合図にとグラスを宙に放り投げ、それが床に落ち割れると同時に「カイム」は殴り掛かる
「ファブル」は踊りを舞うかの如く「カイム」の勇猛たる攻撃を華麗にかわす、すると周りから歓声が上がる
その様子はまるで闘牛士のそれと同じだが、次第に野次る言葉も飛んでくる・・・
次の瞬間ふたりの動きは一瞬止まり「カイム」は前のめりに倒れ込んで蹲る・・・
「ファブル」は自身が占ったが如く指一本触れさせず一撃にして倒し勝負は決した
辺りは静まりかえったが、再び歓声が飛ぶ・・・決まりの一撃は人体の急所、水月によるもの
しかしこれで治まる事はなく、「ファブル」を倒せと、ざわめき立つが一人の男の登場と共に場は急変する
「バウンティー」の大きな扉が開き「リゲル」が中へ歩を進め、皆が注目する・・・
「レイヴィン海賊団」のひとりが口をきる
「これはこれは各国にも名が轟く傭兵、白狼のリゲル様じゃないか・・・海の泳ぎ方でも教わりに来たのか?」
と手にしている酒の入ったグラスを足元へと投げつける・・・
それを皮切りに次々に冷やかしや罵声が飛び辺りは不穏な空気に包まれる・・・
そして「ファブル」は席へ戻り商談の続きを始める・・・
「リゲル」は広間の中央近くのテーブルに金貨の入った袋を置き中央に立ち声をあげる
「金貨百枚を用意したラングゼーブに頼みがある話を聞いて欲しい」と・・・
すると「レイヴィン海賊団」のひとりが袋を置かれたテーブルを蹴り飛ばし怒鳴りあげる
場違いなんだよお前は・・・酒がまずくなるから消えろ、と酒の入ったグラスを「リゲル」の顔に投げつける
「レイヴィン海賊団」の「ドロス」が「リゲル」の前に立ち、人様に頼む時はそれなりの誠意を見せろと言う
そして「リゲル」の足元へ、辺りから次々とグラスを投げ込み辺りの床一面にグラス破片が埋め尽くす・・・
「リゲル」はその場に跪き、この通りだと頭を下げると・・・その頭を「ドロス」が足で床に押し付けると・・・
辺りに鮮血が広がる・・・
破片に埋め尽くされた床に「リゲル」の顔を足で押し当てながら「ドロス」は頼みとはなんだと聞く
俺の子が、この界隈で攫われて船に乗せられている・・・その子を助けて欲しい・・・と話す
「ドロス」は笑いながら、誰かこいつに子作りの仕方を教えてやってくれと笑い者にする
「リゲル」は子が攫われたのは本当だと・・・と言うと「ドロス」はしゃがみ込み耳元へ
「お前・・・この場でそんな事を口にして生きて帰れると思うなよ・・・初からその気はないがな・・・」
と静かに語り
誇り高き海の男が、そんなチンピラじみた事をする筈は無いと怒鳴りあげ「リゲル」を蹴り飛ばす
本当の事なんだ頼みを聞いて欲しい・・・あんた等の助けが必要なんだと食い下がる・・・
・・・仕方ないと「ドロス」は一つの提案を出す、俺達「レイヴィン海賊団」全員を相手に立っている事ができたら頼みを聞いてやっても良いと話すと「リゲル」は承諾する・・・
「ドロス」が場の全員に聞こえる様に言い放つ、再び面白い余興をお見せする、この男が俺達相手に立っていられるかどうか・・・この男の頼みが願うかどうか・・・存分にお楽しみあれ、と言い放ち
親方様よろしいか?と「ドロス」は訪ねる・・・二階の男は「やって見せろと」と声が響くと場に歓声が起こり
再び賭けの場が設けられる、この見世物はひとりずつ「リゲル」を一発殴り耐えられれば「リゲル」の勝ち
耐えられなければ負けという、レイヴィン海賊団での昔からの掟を破った者に科せられる刑のひとつ・・・
未だかつて立っていられた者はいない・・・
「リゲル」は広間中央に立ち歯を食い縛る、そして「レイヴィン海賊団」の若頭「アジール」が出てきて合図を掛けると、場に歓声が送られそれは始まる・・・
まず「ドロス」が「リゲル」の腹に痛烈な一撃を与える、そして「リゲル」は耐えて見せると歓声や野次が飛び次々へと行われる度に歓喜や罵声の嵐となる・・・
「イシュタル」は顔を背けながら「アジール」に聞く、何故あの男は言われるがままに受けているのかと・・・
「アジール」はその様子を見ながら答える・・・「奴は昔この「レイヴィン」に居たんだが掟を破りまだ若い事もあって親方の配慮で追放となったんだがよ、その時に親方の愛娘「エレア」と駆け落ちしやがって、あろう事かその「エレア」を死なせたんだよ、しかし親方は奴に、この町での暮らしを二度とこの界隈に姿を見せないという条件で許したんだ・・・バカな奴だぜアイツはこうなる事は百も承知の筈なのによ・・・」
「イシュタル」は「リゲル」の眼差しに命を賭しても何かを守る決意を見て
どうにかならないの?と「アジール」に聞くが無理だなと答えられる・・・
そして何人に殴られたか解らない程になり「リゲル」は簡単に倒れ込むようになっていた・・・
しかし「リゲル」は何度も立ち上がってくる・・・全身血だらけになり容易には立ち上がれず周りのテーブルを辿りようやく立ち上がる・・・
そして「アジール」の番が回ってきて容赦の無い一撃を与え
「リゲル」は無数に埋め尽くすグラスの破片上へと吹き飛ばされ倒れる・・・
それでも立ち上がる「リゲル」に、二階からレイヴィンの首領「ラングゼーブ」が姿を現し見下ろしている
その男は厳格なる風貌と威厳ある顔立ちをし険しい眼つきで「リゲル」を見据える・・・
「ラングゼーブ」は「二度と姿を見せるなと言ったはずだ・・・掟を破った者が何故此処にいる」と問う
「リゲル」は我が子を助けて欲しいと言うと爆音が轟き「リゲル」の右太股を銃弾が貫き倒れ込む・・・
「ラングゼーブ」の手にはロングバレル6弾倉のリボルバー拳銃が握られている
「・・・まさか、お前からそんな言葉を投げ掛けられるとは思わなかったぞ・・・」
「リゲル」は足を抱え倒れている・・・
「ラングゼーブ」は立ってもう一度言って見せろと言う・・・
すると「リゲル」は立ち上がろうとするが・・・その場で何度も倒れ込むばかり・・・
どうした、お前はその程度か、と「ラングゼーブ」は怒鳴る
すると周りの海賊衆から声援や野次が飛ぶ中・・・
「リゲル」は意を決して立ち上がり「ラングゼーブ」を見上げ
「あんたに殺されても文句は言わない・・・だがあの子だけは助けて欲しい」と言い放つと爆音が轟く・・・
・・・銃弾は頬をかすめていた・・・
そして「アジール」に見て来いと「ラングゼーブ」は告げると、数人を引き連れて「アジール」達は港に向かう
奴が戻るまで、お前は立っていろと言い「ラングゼーブ」は席に戻る・・・
すると「リゲル」に大歓声が送られ賭けは「リゲル」の勝ちとなる、その中で表情を強張らせる連中もいた・・・
そしてメリウスはと言うと・・・頭が出せる程に袋を噛み切り手足の縄も解いていた
なんとしても、この集団が動き出す前に孤児院へ戻らなければと考えている時に集団の気配が動く・・・
意を決して袋を引き裂き、袋の外へメリウスは出ると、見張り役は仲間を呼び・・・飛びかかってくる
メリウスは素早くかわし船倉から出る階段を駆け上るが、目の前に現れた男に蹴り飛ばされ
階段から転げ落ち、再び捕まってしまい手足を縛られ袋詰めにされ、その上に動けなくする為か蹴り続けられた・・・
しばらくして蹴り足は止まり船上の方では騒ぎ声が聞こえ、数人の気配が船倉に駆け下りてくる・・・
メリウスの心は諦めかけていたその時「もう大丈夫だ」と声が掛かる
メリウスは助け出され「アジール」に一緒に来い「リゲル」が待っていると言われる・・・
何がどうなっているか解らないが孤児院が危ないんだと「アジール」告げると、すぐに手下を向かわせる
お前は俺に付いて来いと言われるがままに付いて行く・・・
そしてメリウスはバウンティーの酒場で「リゲル」と会い・・・
メリウスの前には血だらけで立ち尽くす「リゲル」がいる・・・駆け寄ると力なくメリウスに凭れ掛かる・・・
「アジール」は、この始末は必ず俺達の手でけりを付けると言い放ち、そしてメリウスに重いかもしれないが背負って帰れと言う・・・
それを聞いた「イシュタル」が助けに入り誰か手を貸してと叫ぶが誰も動こうとはしない・・・
「イシュタル」は「アジール」に目をやるが、俺達がやれる事はここまでだ、と冷たくあしらう
そしてメリウスは「リゲル」を背負い引きずりながら外へ出て行く・・・
それと同時に孤児院の襲撃は未遂に終わったとの報が入る
しばらくして「ファブル」は悪いが先に船に戻ると席を立つ・・・
「ファブル」はメリウス達に追いつき「リゲル」に手を貸す、それを見た「イシュタル」は来るのが遅いと「ファブル」に涙を流しながら怒り続ける・・・
あまり時間が無いと、メリウスに「リゲル」を手当て出来る所はないかと「ファブル」は聞く・・・
メリウスは心当たりがあると、その場所へ向かう・・・
月明かりが道を照らす中・・・メリウスはあまりにも重い何かを感じながら力強く歩を前に進めた・・・