・・・月日は5年の歳月が経ち・・・ある事柄が起こる・・・

「アストリア」大陸の北西に位置する国での事

ここは「ヴェリス」より遥か北西にある「ビクトリア」の国・・・その東には「ヘディン」の国・・・

この両国は5年前に「ロフト」により多大な被害を受けたが南に位置する「ダヴォシー」からの多大な支援により共に助け合い復興の道を歩む国々・・・

そのまた「ヘディン」の東には今は廃墟となる「レージェライ」がある・・・

舞台は「ビクトリア」の国・・・ある日の夜・・・

空には月が上がり、夜も更け静まり返る闇の中を空を切り忍び寄る黒い影の集団・・・

黒の布地に赤く九頭の蛇をあしらう旗を掲げる・・・「ロフト」の者達・・・

風を纏うが如く、林の中を、その黒い集団は突き進む・・・

そして、その行き足を止め対峙するひとつの集団がある

彼等は紺の布地に金の鳳凰をあしらう旗を掲げる集団・・・

その名は「アーレス」率いる傭兵団、結成間もない若々しい集団で「ビクトリア」の国が雇い南方を守備していた・・・

ふたつ集団は激しい戦闘へとなるが全てに措いて「アーレス」の指揮・戦略が「ロフト」の上を行く・・・

「ロフト」は敗走の手段も絶たれ、最後のひとりとなり・・・男がその前に立つ・・・

「生き延びたければ俺を倒してみろ、それがお前達の掟だろ」と語り掛ける

「ロフト」の最後のひとりが男に斬りかかると同時に口に含んだ針を飛ばす・・・

男は背にするマントで含み針を払い、次の瞬間「ロフト」を鮮やかに斬り捨てる・・・

「ロフト」の者は倒れ苦しみながらに男に言葉を残す・・・「・・・決して逃しはしない・・・裏切り者には・・・」

男は聞き気はなく止めを刺す・・・その男の胸元に一寸の月明かりが差しペンダントが赤く輝き光を放つ・・・

この事が口火となり様々な悲劇が起こる事はまだ誰も知らない・・・


そして舞台は「ヴェリス」へ戻り

ある朝の「ヴェリス」の港町は、より活気に満ち溢れ賑わいを見せていた

港には無数の船が行き交い、様々な荷が船から卸され倉庫街でそれぞれの商売が行われる

その場を仕切っているのが「アジール」で、その廻りを世話しなく動くひとりの青年がいた・・・

短髪の黒髪から汗を輝かせながら気の強そうな眼差しをし、たくましく成長した「ゼフィル」である

「ゼフィル」は「アジール」の一番のお気に入りで、倉庫街でいろいろと良く面倒をみてもらっていた

このふたりが何故に一緒にいるかと言うと、それは5年前のある日に遡る事になる・・・


・・・ある日の事、「リゲル」は重傷を負い生死の境にいたが、奇跡的に一命を取り止める

「ティリス」とメリウスのふたりは毎日、日が暮れるまで「リゲル」の元へ見舞いに行く

そんな、ある日に孤児院を訪ねるひとりの男が「アジール」であった・・・

男は、誰か話しが解りそうな奴は居ないのかと叫ぶと「ゼフィル」が向かい

今「ティリスは」用事があって出かけている、話しは俺が聞くと男の前に「ゼフィル」は立つ

赤毛の少年はどうしたと聞かれ、メリウスも「ティリス」と一緒に出かけていると答えると、そうか・・・と呟く

いったい何の用事で来たんだと「ゼフィル」は問うと、「リゲル」の忘れ物だと大量の金貨が入った袋を渡され

・・・「ゼフィル」は、あんたが「リゲル」をやったのかと聞くと、そうだと男は答える・・・

手渡された袋を投げ捨て「ゼフィル」は飛び掛るが男に蹴り飛ばされる・・・

そして男は帰り際に「小僧・・・男なら強く成れ」と言葉を残すと

俺の名は「ゼフィル」だと叫び返す・・・

すると男もさらに大きな声で、俺の名は「アジールだ文句のある奴はいつでも来い」と叫びあげ
立ち去った・・・それがふたりの奇妙な出会いだった・・・


・・・故あって今では「ゼフィル」が慕う良い兄貴分であり、倉庫街では一目置かれる存在と「ゼフィル」はなっていた・・・

そして「シーリス」も、町中の男達の視線を集める程の女性へと成長し、夜の酒場で働きながら腰まで届く美しい黒髪を靡かせ踊りの稽古に励む毎日・・・でも本当ところは歌い手に成りたかったらしい・・・

「ジニアス」は、癖のある黒髪と愛嬌ある表情や気質・小柄な体を活かし面白そうだと大道芸の修行を勤しみ、町の広場で曲芸を披露し町では噂になるほどの人気を集めていた

「グラディニー」は、物静かで心優しい気質と類稀なる体格に恵まれ、誰もが力を要する仕事につくのかと思われていたが、医療の分野に身を置いた、それは幼き頃の思い出が彼をその道へと歩ませ、「リゲル」の知り合いの医師の元、見習いとして働く

「レクス」は、体格・顔立ち共に男前な青年と育っていたが、すこし嫌みな賢しい気質と言動を得意し、多種多様な仕事を無難にこなすが、どれもが長続きはせずに、いつも「ティリス」の事を気に掛けていたが、それが「ティリス」の悩みの種でもあった、今は町のカジノでディーラーの職に付く

「ローズィム」は、細身で長身の体格に肩まで伸ばした紫がかった黒髪をし、手先の器用さもあって洋服を作る職に付き、そこで類稀なる才能を発揮する、奇抜なデザインを発案し他国から仕入れた多彩な布を斬新な方法で縫い合わせていく、その手法やデザインが町でも噂に成り他国にも高い値で取引される程だが、その全てはメリウスに着せる為と、着飾った姿を見てもらう為の一念によるもの・・・

皆それぞれの道を模索し歩みはじめていた・・・それは「リゲル」や「ティリス」への恩返しでもあり同じ孤児院にいる子供達への為でもある・・・

実際の所は皆は「リゲル」と共に同じ傭兵の道を強く希望したのだが、「リゲル」はそれを認めずに町で働く事を命じ「リゲル」の裏での働きかけによるもので皆、思いの仕事に付く事が出来ていた

この頃、「リゲル」率いる傭兵団は白狼の旗を掲げ、「ヴェリス」の西方、連盟を組む「ダヴォシー」の要請を受け「ダヴォシー」と「ウルダン」の国境付近での永い々険しい戦いを繰り広げていた・・・

そしてメリウスは「アッシュ」の親が所有する書館で「イリア」と共に「メトリー」の世話をしながら働くが・・・

そこへは昔では考えられない程の人々が集まり本を読んでいた・・・大多数が町の若い女性の姿

とても本を読みに来ただけとは思えない着飾った装い・・・そして度々「シーリス」や「ローズィム」の姿も現す

中には「シーリス」目当てで来る若い男の連中も来る始末・・・

町の女性達の噂になる4人の内のひとりがメリウスで一番の人気を博していた

その4人とは、誰にでも優しく接する知性溢れるメリウスと

倉庫街や夜の酒場で男気溢れたくましく働く「ゼフィル」

町一番の大富豪の息子「アッシュ」

優雅な洋服を着飾る「ローズィム」ではあるが、女性を一切寄せ付けない所が妙な人気へとなる・・・

そして孤児院のみんなが顔を合わせる時は夕食と寝る時のみで、夜の仕事をする「シーリス」・「ゼフィル」・「レクス」偶に顔を合わす程度で・・・

それと「ローズィム」は何故か「ティリス」を抜く程の食事の腕をあげていた

めずらしく夕食時にみんなが顔を合わす時の事・・・

子供達も交え席に付くとメリウスの膝に座る一人の少女「ディアーヌ」

孤児院の中ではいつもメリウスの側を離れようとはしない「シーリス」と「ローズィム」の悩みの種・・・

寝る時も一緒・・・何かに付けて「シーリス」と「ローズィム」は「ディアーヌ」の気を逸らそうとするが失敗に終わる、その二人は孤児院内では手を組み「ディアーヌ」への妨害工作へと勤しむ妙な間柄となる

みんなが食事を終えると「シーリス」は仕事に向かうと席を立ち「ゼフィル」も「シーリス」を送ると席を立つ「レクス」も同じく立ち上がると

「ローズィム」は微笑ましく3人を送るが「シーリス」は解ってるわねと「ローズィム」に釘を刺すと、任しといて応ずる・・・そして「ディアーヌ」に編み物を教えようとする「ローズィム」がいる・・・

そしてこの日は倉庫街の酒場「バウンティー」で「シーリス」が初めて踊りを披露する日・・・

酒場の中で「ゼフィル」は何か落ち着かない様子・・・そんな「ゼフィル」を「アジール」がこっちへ来て座れと同じテーブルの席に付かせると「シーリス」はステージに立ち踊りが始まり歓声が飛ぶ

すると「アジール」は見惚れている「ゼフィル」に気付きひとつの宝石を手渡し、良い女だ口説いて見せろと言う・・・それはローズクォーツの指輪で滅多に手に入らない値打物、そしてこの石には恋を叶える力があるとの事を教えてもらう

「ゼフィル」は戸惑い「シーリス」とは兄妹の様な間柄だと打ち明けるが「アジール」は何の問題もないじゃないか誰かに取られてからじゃ遅いぞと急き立てる・・・

「シーリス」の踊りは終わり大歓声に包まれる中、数人の男達が宝石を手に口説きにかかるが次々と首を横に振られ笑いが起こる・・・

「アジール」が今だ行けと「ゼフィル」に言うが・・・受け取れないと指輪を返そうとする・・・

そんな問答をしてる間に「シーリス」はステージを降りる・・・

「アジール」は笑いながら、その指輪はくれてやる機会があったら渡して口説けと他の席へと場所を移し

そして、「ゼフィル」のいる席に「アジール」は「シーリス」呼ぶ・・・なんとも気の利く兄貴分だ・・・

「シーリス」は踊りの事を「ゼフィル」に聞くと良い踊りだったと答えるだけに留まり、その場は終える

倉庫街からの帰り道ふたりは歩き酒場での話で盛り上がっていた・・・そして話が途切れふたり同時に口を切りだすと、ふたりは笑い少し海を見に行こうと「シーリス」が言い出し、ふたりは港の海辺で座る

「ゼフィル」の手には指輪が握り締められている・・・

すると「シーリス」が悩みを聞いて欲しいと話し出す・・・それはメリウスの事だった・・・

「ゼフィル」は「シーリス」に指輪を見せて、この指輪をしていれば恋が叶うらしいと「シーリス」の指にはめる

そして「ゼフィル」は「シーリス」の喜ぶ顔を複雑な気持ちで見つめて孤児院へとふたりは戻る・・・

次の日の晩「アジール」は「シーリス」の指にはめられた物と仲の良いふたりを見て

金は俺が払うと言い皆に存分に飲めと大いに振舞い酒場は賑わいを見せた

そんな穏やかな日々が続く日のある晩の事

メリウスは、悪夢に襲われていた・・・それは鮮明に・・・決して逃れる事はできず脳裏に映し出す・・・


・・・青白く光る森の中にメリウスは立っている・・・目の前には小さな白蛇が導くように進む・・・

その白蛇に導かれるまま歩を進める・・・森を抜けるとそこは・・・

・・・炎に包まれたレージェライ・・・街の広場へと辿り着く・・・いつの間にか白蛇は消えていた・・・

ここで目に映る光景は・・・あの時の惨劇・・・

ハズリット・セレーヌ・ヴィル・・・そしてリゲルやティリス・ゼフィル・シーリス・・・

メリウスが今まで出会ってきた全ての人達が次々と黒い影に倒されていく・・・

身動きひとつ出来ない・・・その様子を見る事しか出来ない・・・息苦しさが激しく襲う・・・

・・・メリウスは心の中で叫ぶ・・・やめろ・・・やめてくれと・・・

そこへディアーヌが泣きながら姿を現し・・・黒い影が忍び寄る・・・動く事はできない・・・指一本も・・・

・・・そして黒い影がディアーヌを覆い隠し・・・

・・・渾身の力を込めて・・・やめろと叫び・・・ようやく夢から覚める・・・


・・・メリウスは孤児院の外へ出てある所へ向かう・・・それは誰もが寝静まる時、月明かりが辺りを照らす

そしてメリウスを追う「シーリス」の姿・・・それに気付く「ゼフィル」であったが再び目を閉じ眠りに付いた

「ローズィム」は気付いたかどうか解らないが・・・壁に寝返りうち寝ていた・・・

メリウスは「ヴェリス」の港町が見下ろせる高台に立つ、月明かりが神秘的に海を照らし輝き放つ・・・

海を見続けるメリウスの元へ「シーリス」寄り添い聞く・・・

・・・メリウスは静かに応える・・・こんな穏やかな日々がいつか壊れる様な気がする・・・

もう誰ひとりとして傷つく姿は見たくはないのに・・・平和な日々に甘んじている事に憤りを感じる・・・

・・・周りの国々では未だ戦争は絶えない・・・もっと他にやる事があるはず・・・

やらなければいけない・・・そう思える・・・何かあってからじゃ遅い・・・

・・・みんなを守れる力を手にしたいんだ・・・と語る

「シーリス」は、でも「リゲル」が・・・と言葉を詰まらせ話す

「今のままが良いよ、みんなで幸せに暮らす事がどうしていけないの?」と泣き出す「シーリス」を抱きしめ

このままでは何も変える事はできない・・・何か特別な力が必要なんだ・・・とメリウスは呟く・・・


その明くる日に「リゲル」は西方での戦が終わり、戦場で深手を負い「ヴェリス」に戻ってくる・・・

「ウルダン」の国は「ダヴォシー」との停戦協定を結び、連盟への誘いを受けるか思案する事となる

そして幾日かの月日が経ち「リゲル」の傷も癒えた頃・・・

ヴェリスの美しく弧を描く港町を見下ろせる高台で、メリウスは夕日を浴びながら立ち尽くす

そこへ慌てた様子の「アッシュ」駆け寄り「どうしたんだよ・・・最近ずっとここに来てるって聞くぞ・・・」

メリウスは生返事をし夕日を眺めている・・・

良い話を持ってきたんだ聞いてくれよと嬉しそうに「アッシュ」は話し出す

俺達、仕官見習いになれるんだ、どうだ良い話だろ?

時機に俺達は、この国を動かす官職に付ける事ができるんだ

お前なら高い位に行けるかも知れない、住む所だって何だって心配するな力になる・・・と「アッシュ」は話す

そして夕日を背にしメリウスは「アッシュ」を見つめ話し出す・・・

首にしている青石のペンダントを「アッシュ」に見せ、
昔「ファブル」と言う男に教えてもらったんだ

この青く輝く石は「スターサファイア」と言い、この石にはあらゆる力が秘められていて、手にする者をもっとも幸運な道へ導くと伝えられるらしいんだ・・・

そして、幼い頃に強く心に刻んだ想いがある・・・

・・・自分には嘘は付けないんだ・・・と淡々と語るメリウスに「アッシュ」は叫ぶ・・・

「馬鹿な考えはやめろ、子供じゃあるまいしそんな石ころひとつで願いが叶うなら誰だって苦しみはしない・・・
何かの力を得るには代償を払わなければならない、この話だって生半可な事じゃないくらい・・・お前なら解るだろ・・・考え直せ17そこらの奴に何ができるって言うんだ・・・」

メリウスの意志は、その強い眼差しから読み取れた・・・

「アッシュ」は息を呑み・・・目を落して震える言葉を放つ

「傭兵なんかになるのはやめろ・・・ただの人殺しと変わりはない・・・」と涙を流す・・・

メリウスは「アッシュ」の肩に手を当て、もう決めた事なんだと呟き・・・そこを立ち去った。