1.放浪 / 2.母親と呼びなさい / 3.立場というもの / 4.名も無き存在
5.誕生日プレゼント / 6.変わっていく日々 / 7.蝕んでいく孤独 / 8.枯れてしまった感情
9.消えていかない傷跡 / 10.伝わらない思い / 11.唯一のはけぐち / 12.白い靴と体操服
13.サヨナラと言えなくて / 14.一体何度泣けば / 15.変わるがままに / 16.見えないもの
17.時を過ぎた手紙 / 18.イジメのはじまり / 19.まるで奴隷のように / 20.拒絶する心
21.終止符 / 22.冷めていく / 23.生きることへの必死さ / 24.父の会いたい人
25.短すぎた出会い / 26.忘れられない思い出 / 27.流れゆく景色 / 28.閉じこもる居心地
29.次から次へと / 30.友人の境界線 / 31.悲劇のヒロイン / 32.信じるということ
33.裏切り者 / 34.切り刻め / 35.誰か気づいてください
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35.誰 か気づいてください
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暴力的な表現が含まれています。
気分が悪くなってしまう方は、お控え下さいますようお願いいたします。
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痛みなんて感じなくなったよ、だって私は強いんだから。
はじめてやったときはね、すごく真剣な顔をしてたと思う。
だけど、今は少し微笑みながらできるよ。
傷の入った左腕、それを薄暗い明かりにかざして見つめる。
一番最初に切ったところが、毎日のスタート地点。
綺麗に細かく間を開けて切っていたけど、だんだんとそれも面倒になって、
無造作に叩きつけるようになっていった。
傷と傷との間隔が広いところには集中的に切り刻んだ。
その範囲は大きくなっていって、手首から肘までの間に、
何十回、何百回と切っていくたびに、傷は重なり合いながら残っていく。
左手が次第に麻痺したような感覚になる。
こんなもんでいいか、昨日よりは多く残ってくれるかな。
左腕を見ながら、頭の中でもう1人の私を作り上げて会話する。
こんなことして何になるんだろう。
何にもならねえよ、でもこうしてると落ち着くし。
うん、そうだね。
でも満足しないよ、これもいつか消えてしまうんだし。
なら残るようにもっとやればいいのさ。
消えてしまったら作ればいい、そしたらいつも通りだろう?
仕事の制服はまだ長袖のまま。
一応包帯を巻いて、他からは見られないように隠した。
知らない他人に愛想を振りまいて接客をする。
こんな糞ジジイや糞ババアが、金に困ったような顔もしていないで遊んでいる。
そんな金あるならくれよと、関係のないことを考えながら。
帰宅して包帯を取ると、薄く赤みがかった傷がいくつも残っている。
部分的に紫色へ変色していく腕。
ほとんど隙間を作らないようにしてやっていたのに、
それを消してしまうことに腹が立つ、なら今度は思いっきりやってやる。
普段よりカッターを力強く握った右手を上から振りかざして、
消えるな、消えるな、消えるなって思いながら。
左腕の手首から肘までのほとんどを済ませたあとは、
それでも満たされない心を埋めるために、今度は右腕にも証をつけた。
はじめてやったときとは違って、ためらいもなくできる。
両腕を見比べて、まだこっちのほうが浅いと思えば、
同じようになるまで何十回も切って、叩きつけて、それを繰り返した。
今の私と一緒に泣いてくれる人はいますか。
そんな人がどこにいるんですか。
今の私と一緒に苦しんでくれる人はいますか。
いるのなら今すぐ目の前に現われてください。
今の私を止めてくれる人はいますか。
気味が悪くて誰も近寄ろうとはしないでしょう。
生まれてこなければ、こんな思いしなくてよかったのに。
いてもいなくても、どうでもいい存在なのに、
なんでこうして生きて、苦しまないといけないんだろう。
生々しい傷を見ながら涙がこぼれる。
暗い部屋に訪れる安心という空気が、孤独というものに変わっていく。
死にたい、死にたいと心の中で叫んで、
勢いよく切ったり、ゆっくり押し込んで切ったり。
窓を開ければ外は雨、家を出て傘を持たずに道を歩いていく。
行きたいところがあるわけじゃない、死に場所を探していたわけでもない。
風邪引かないかな、でもこんな雨だとあまり濡れない。
もっと大雨になってほしい、もっと一気に降ってこい。
頭が少し痛い、いっそのこと破裂でもしてくれないかな。
あーあ、楽に逝きたい。
毎晩、両腕に数え切れないぐらいカッターで切っても、
傷が増えていくだけで、得ていくものなんてない。
怒りだったり哀しみだったり、そういったものを腕にぶつけて、
誰かが気づいてくれるのを待ち続けていたのかもしれない。
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-------------------------------------------------------------------34.切り刻め
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暴力的な表現が含まれています。
気分が悪くなってしまう方は、お控え下さいますようお願いいたします。
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オバちゃんの紹介で勤めた仕事は、18歳を迎えて3ヶ月目になって、
外はまだ寒さが残り、朝には車のフロントガラスが白く覆う。
冬にかぎって水も風も冷たい、当たり前のことか……。
店長は気を使ってか、シフトも休みもオバちゃんと同じように組んでいた。
もう決定しているものは変えることができない。
だから、その月の遅番はやむを得なく一緒に帰っていたが、
タイミングよく遅番専門希望の子が入ってきたこともあって、
来月からのシフトはすべて朝番に変更してもらい、
職場でも家でも、なるべく顔を合わせないようにしていた。
晩ご飯もコンビニへ行って弁当を買い、自分の部屋で食べた。
小学生の頃に経験した孤独感とは違う。
あのときは、私はただ待ち続けるだけの生活だったから。
今は、出ようと思えばいつだって出ることができる。
寮付きの仕事へ行くことだって、貯金して家を出ることだって、
1人なんだから何でもできたはずなんだ。
心のどこかでは、またいつか手を差し伸べてくれるんじゃないかって、
もしかしたら、10回中1回は約束を守ってくれるかもしれないと、
私のほうを振り向いてくれるときが来るって期待してた。
息が白く残る夜に、気分転換に外へ出てみる。
空を眺めれば、いくつかの星たちが輝いていて、
オリオン座がうっすらと覗かせている。
この夜空を、どれだけの人が見ているのだろう。
見ている人の中で、私に振り向いてくれる人がいるのかな。
……ロマンチストじゃあるまいし、馬鹿馬鹿しい。
嫌でも聞こえてくる会話が、耳を塞いでも貫通してくる。
台所のところで、今まで聞いたことのない優しい声で父が話している。
「やっぱりお父さんのほう……かなあ」という言葉を思い出しただけで、
苛立ちが込み上げてきてどうしようもなくなる。
私は邪魔者、いつまで経っても独りぼっち、誰も近寄ってはこないのさ。
部屋にいれば、同じことをグルグルと頭の中で考える。
あー、イライラする、何に……何にぶつければ……。
ねえ、誰か見てる?
電気をつけない暗い部屋の中で、カッターではなくハサミを右手に持った。
カッターがなかった、だからハサミなら切れると思った。
外の廊下の光が若干差し込む場所で、ハサミを広げて左手の手首に刃をあて、
すーっと浅く、左から右にずらして切ろうとする。
ちょっとだけ赤くなる、血は……出てこない。
だから同じ箇所をもう一度、今度は少し強く押しながら、
同じような感じで、ゆっくり力を入れて左から右へ。
皮が歪みながら傷を作っていく、小さく間を開けて若干の血が出てくる。
その傷を眺める、なんかホッとするような悲しいような。
たった一本の長い傷の線、これが私の生きた証になる。
自分の存在を確かめるように、薄く浅く証をつけていくようになる。
最初は1本だけの線が、少しずつ多くなっていく。
つけた傷跡から近いところへ刃をあてて、
痛いと思いながらも、その行為が妙な安心感を与えてくれる。
次の日にはミミズ腫れ、でもそこまで大したものじゃない。
これじゃ満足しない、こんなんじゃない、もっと深く……深く……。
深く切れないのは勇気がないから、臆病者だからだと思い込んだ。
勇気を出せ、私ならできるはず。
次第にハサミでは物足りなくなった。
コンビニでカッターを購入して、これなら切れるって嬉しくなる。
決まって夜に切り刻んだ、静かで暗い部屋の中は孤独感じゃなく、
心が安まる時間を作り出してくれる。
カチッカチッとカッターの刃を出して、
いつも切ってるミミズ腫れの上に刃をあてて、あまり力を入れずに切ってみた。
ハサミより切れ味がいい、これなら望むようにできる。
カッターと腕だけで、精神安定剤のようなものが出来上がる。
ねえ、誰か気づいてる?
手首から浮き出てる血管、思いっきり切れば血が吹き出るんだろうか。
やってみたい、でも怖い。
今まで通り、左手首からゆっくり押し込んで切っていく。
はじめてやったときよりも、深く切れるようになった。
やった、やったよ、少し成長したんだ。
もっと証を増やそう、今度はここぐらいまで。
これじゃあ短い気がする、長くなければ駄目なんだ。
手首から5センチ程の間に、数十回と証が消えないように重ね切りしていく。
滲み出る血を拭き取って、時間を置くとミミズ腫れができあがる。
朝になっても、これって消えないのかな。
消えないで欲しい、もう一回やっておこう……。
朝起きると、薄赤くなって残っている。
でも、つけたはずの傷がいくつか消えていて、
あれだけやったのに、何でこれだけしか残らないのかと思い詰める。
じゃあ今夜は、もっと回数を増やそう、もっと深くやろう。
一生、消えてしまわないように。
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-------------------------------------------------------------------33.裏切り者
笑い声が玄関の外から聞こえる、前のときと同じ。
信じてくれなければ、信じることができないって言ったじゃないか。
今度は連絡もなかった、まるで忘れていたかのように。
オバちゃんは何も言わずに隣の部屋へ入っていき、
父が代理のような感じで理由を説明してきた。
「そういや、今日約束しとったんやっけ?」
「行かせようと思ったんやけどな、出るのが止まらなかったんやて」
パチンコか……、呆れて何も言うことはない。
予想はしてた、どうせ一緒に行ってるんだろうなって。
少しでも、守ってくれると期待した私が馬鹿だった。
「その前のやつは?」
「ん?」
「この前の約束してた日は?」
「あー、あれなあ、ええ台があったから呼んだんや」
もういいよ、どうでもいいよ。
オバさんともまだ別れていない状況で、そうやって恋愛気分を気取ってる神経。
頭がおかしいんじゃないか……、いや、おかしいんだろう。
2人して嘘をつくのが当たり前のことなんだ。
もう、この人たちに信用という言葉はいらない。
誰も信じられる人なんていない、また裏切られるだけだから。
気にするだけ疲れるから忘れてしまおう。
平常心をよそおって普段と同じように振る舞えばいい。
いつもと変わりなくいることは、更なるストレスを背負うことになって、
行き場のない怒りと哀しみは、性格さえも歪ませていく。
仕事の帰り道、車の中でオバちゃんはその日のことについて言い訳を話しはじめる。
父には「約束をしてるから、その日は行けないよ」って伝えてあったと。
それでも当日に電話がかかってきた、最初は断ったけど「待てない」と言われて、
仕方なくパチンコ店へ向かった、私よりもパチンコを選んだのだ。
言い訳なんぞオバさんで聞き飽きてる。
最初は断っただの、前から伝えてあっただの関係あるかい。
来たか来なかったか、アナタは来なかった、この事実に変わりはない。
そもそも、まだオバさんと付き合ってることを知っていて、
それでも毎日のように家に来ては、父の隣に座ってニヤニヤして、
それのどこがおもしろいのか分からん、頭おかしいんじゃないのか?
オバさんが来ると分かれば、不機嫌そうな顔をしてふてくされる。
アナタはお子様なんですか?
言ったことも守れないんですか?
すぐに約束を破るんですか?
だから信用しねえって言っただろ、何が信じてくれなきゃ信じられないだよ。
ふざけるのも大概にしろ。
溢れだしていた感情をむき出しにする。
オバさんとも喧嘩はしていたけど、ここまで感情をむき出しにしたことはなかった。
言いやすさというのもあったんだろう。
車内は、次から次へと文句を垂れる私の声と、
何かを言いたくても、声を詰まらせるオバちゃんで険悪な空気が包んでいた。
「じゃあ、もし同じ日に約束したらどっちを優先するんだよ」
困った表情をして、数分間考えた末に出した答えは予想通り。
「やっぱりお父さんのほう……かなあ」
義母もオバさんも、言葉にして出しはしなかったけれど、
態度を見ているだけで私を邪魔者扱いしてるぐらい感じてた。
確信を持っていたわけじゃない、だけど2人は私のほうを振り向いてはくれなかった。
大人の気持ち悪い恋愛にとっては、子どもというのは一番のお荷物なんだろう。
それなら、いっそのこと捨ててくればいいのに。
ああ、父は一度置いていったんだった。
家に帰れば、オバちゃんはご飯を急ぐように作って隣の部屋へこもる。
食べ終えて食器を台所へ持って行き、
自分の部屋へ行こうとしたときに、さり気なく視線の中に隣の部屋が飛び込んできた。
オバちゃんは父の体に寄り添いながら、いつものように笑っている。
父はオバちゃんの肩に手を回して、気味の悪いぐらいに笑顔だ。
私は、その部屋の扉を勢いよく閉めて自分の部屋へ。
この怒りをどこにぶつければいい。
物か? 他人か? それとも私自身にか?
あいつらは心の裏切り者、消えてしまえばいいのに。
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-------------------------------------------------------------------32.信じるということ
手を差し伸べてくれる人がいなかったから、こっちだって手を出さない。
誰も助けてはくれなかったから、誰が苦しんでようが関係ない。
全員いなくなってしまえばいい、消えてしまえばいい。
大勢でいるよりも、1人のほうが気楽でいいさ。
いつも孤独だったから慣れてる、邪魔になるから近寄らないでほしい。
1人でも生きていけるよ、誰も必要ない。
そうやって、いつも強がってた。
誰かといるよりも1人を好んだ。
人と関わるのが面倒だから、距離を取り壁を作って寄せつけない。
来る者を拒んだ、何もかも手当たり次第に突っぱねた。
くだらない奴だと思った人には冷たくあしらって、
使えない奴だと思った人は、役立たずだと判断して簡単に切り捨てた。
魚の死んだ目をしているとオバちゃんに言われたことも。
「明日、買い物行こうか」
「10時に駅まで来てくれれば、車で迎えに行くから」
休みが一緒だったのもあって、オバちゃんが誘ってきた。
特に用事もなかったから、久々に"約束"というものをしたんだ。
その日は雨、でもそこまで大雨じゃない。
家を出て、10分も歩けば駅に着く。
電車に揺られながら外の景色を見ていると、7分か8分して目的の駅に。
改札口を出て、狭いロータリーを見渡しながら待ち続けた。
まだ約束した時間になっていない、もう少ししたら来るだろう。
折りたたみ携帯を何度も開いては、連絡がきてないか確認して、
右……左……と、通り過ぎていく車を目で追いかけた。
あと5分、あと3分、あと1分、連絡もなければ車も見えない。
私から電話をかけてみる、何度かけても同じことを言われる。
「留守番電話サービスに転送します」
遅れるなら連絡ぐらいしてくれればいいのに。
まだ支度できてないんだろうか、もう少し待ってみよう。
10分過ぎても来やしない、もしかして忘れたんだろうか。
自分から約束しておいてどういうことなんだ。
時間を守れないなら最初からするなと、ブツクサ小声で愚痴をこぼしていた。
約束の時間から30分以上過ぎたとき、一本の電話がかかってくる。
「お父さんに呼ばれちゃったから、うん、だからそっちのほう行くね」
その言葉を聞いた瞬間に、電話の切るボタンを押していた。
細かい雨が、少しでも私の気持ちを和らげようとしているような。
冷静さを保とう、怒っちゃいけない、落ち着け……落ち着け……。
そのまま家にトンボ返り、とんだ無駄足だった。
会話を思い出しただけで眉間にシワがよってきて、
帰宅途中の道を歩いているときに、押し込めていた怒りが沸き上がってくる。
私よりも父のほうが大切か、先に約束してもそっちが優先なのか。
あー、そうかい、そうなのかい。
ふざけんじゃねえ、言ったことも守れないなら最初から言うなよ。
抑えきれない苛立ちを物にぶつける、部屋にある物を壁に投げつけて、
父たちが帰ってくるまで、その気持ちがおさまることはなかった。
玄関の扉を開ける音と同時に、2人して笑いながら入ってくる。
謝ってくるわけでもなく、いつものように隣の部屋へ。
思い出したかのように私のほうへ来て、ニヤニヤしながら心ない言葉。
「今度行こうね」
無性に腹が立ってくる、何ともいえない気持ちが苛立ちを大きくする。
そして父も、笑いながらオバちゃんをかばう。
「また約束して行けばええやんけー」
返事をする気もない、謝るということをしないのか。
類は友を呼ぶってこういうことを指すんだ。
肘をテーブルにつけながら、不機嫌な顔のまま無視していると、
また2人して隣の部屋へ入っていき、馬鹿笑いして大声を出している。
次の日、いつもなら一緒に仕事へ行く時間よりも前に家を出た。
一緒に行く気にはなれない、電車で職場まで向かって、
顔も見たくないぐらいに引きずっていたから、
同僚と会話して、何とか気を紛らわせようとしていた。
仕事中も目を合わせようとはしない、声も聞きたくない。
こいつも今までの人たちと同類だ。
義母もオバさんも、父のことを優先して私は蚊帳の外だったさ。
気が向いたときに相手して面倒になれば無視して、こっちから近寄れば嫌な顔をする。
邪魔かい? 邪魔なら直接言って欲しいよ。
帰りは電車がない、だから歩いて帰ろうと外を出ると、
オバちゃんが後ろから走ってきて、それを引き留めた。
何が何でも1人で帰ると言う私に、オバちゃんは真剣な顔をして、
「もし何かあったら、私が怒られるんだよ」
結局それか、父に嫌われるのが怖いだけなんだ。
嫌々しながら車に乗って、聞きたくもない声を聞きながら夜道を帰る。
「また休み一緒の日があるから、そのとき行こうよ」
「もうアンタの言葉は信じない」
「あの日は仕方なかったんだって」
「信じてくれないと、私だって信じることできないよ」
本当に仕方がなかったのか?
そんなに大切な用事だったんだろうか。
もしそうなら、怒ってもどうしようもならないと冷静になる。
それなら、もう一度約束してみよう。
やっと歩み寄ってくれる人がいるのなら、その手を掴もうって思えた。
朝は用事があるから、昼過ぎに家まで迎えにくると確かにそう言った。
約束の日、夕方になっても来ることはなかった。
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-------------------------------------------------------------------31.悲劇のヒロイン
重い腰をあげて、18歳になる3ヶ月前に仕事をはじめた。
オバちゃんが勤めていたパチンコ店に行って、基本的には遅番として働き、
朝は電車で通勤、夜は車で一緒に帰るという生活。
家に帰ると、そそくさとご飯を作りテーブルの上に置いてくれる。
だけど一緒に食べることはない。
オバちゃんは父の部屋に入っていき、私とは別々の部屋で食べる。
何をするにしても、父の隣に座って眺めているだけ。
それのどこが楽しいのか、疑問を抱くようになる。
同じ屋根の下にいても、家族の輪というものの欠片すら見当たらない。
オバちゃんの車に乗って、知人の女性宅に招かれた。
検索フォームの履歴を消して欲しいというもの。
主婦をしながらも、朝から晩までオンラインゲームをしているらしい。
旦那さんが帰ってくると、履歴で何を検索したか調べて、
その度に喧嘩する毎日、だから履歴を見られたくないと。
そんな光景を、ここにいる幼い子ども2人は見ているのか。
どんなときだって、嫌な思いをするのは子どもなんだ。
親の喧嘩も、パソコンばかり見てほったらかしにされるのも、
どこかで淋しさが生まれる、だから行動なりして現わそうとする。
かまって欲しいって口では言えないから。
少し悪さして気を引こうとする、そしたら怒られる。
知人の話を聞きながら、子どもの立場になって考えてみると、
隠しながらでもオンラインゲームに没頭しようとする神経が理解できず、
「機種が違うから分からない」と言って、その方法を教えなかった。
検索して調べれば分かること、それに気づかない間だけでも。
その後、オバちゃんの2番目の旦那さん宅へお邪魔する。
姉弟4人が暮らしていて、旦那さんは仕事でいなかった。
予め行くことを伝えてあったのか、長女がクッキーを出してくれて、
みんなとテーブルを囲んで和気藹々と雑談する。
初対面ということもあって、どこかぎこちない。
この子たちも、母親というのを間近で見ずに育っているのだろう。
「母さん、帰ってこんの?」
次男がさり気なく言った言葉、うなずくことしかしないオバちゃん。
どんな理由で別れたにしても待ち続けている。
必死に訴えようとはしなくても、心のどこかで「またいつか」と。
1時間ほどして、旦那さんが帰宅してくる時間が迫ってきたこともあって、
姉弟たちにとって、母親と久々の再会は終わりを告げた。
手を振って見送るその姿は、淋しそうな、そうでなさそうな。
車の中で、どういう理由で別れたのかを話し出した。
持病が悪化して入院することになり、一時期は死の直前まで悪くして、
数ヶ月に及ぶ闘病の末に、退院できるまで回復したものの、
突然旦那さんから「入院費を返せ」と言われ、愛想が尽きて出て行った。
「信じられなくない?」
「いきなりお金の話を出してくるとは思わなかった」
「こっちは体調が悪くて、それどころじゃないのに」
時折ため息をついて、そのときの心境や状況を事細かに伝えてくる。
聞いている側からすれば、離婚は仕方がないと思えるかもしれない。
それが偽りでないのならば。
そんな家にいたくない、だから子どもたちを置いて出て行った。
仕方のないことだったんだよ、私だって本当は連れて行きたかったけど、
親権問題とかでゴタゴタになって、私より旦那さんのほうが収入もあったから、
裁判までして親権を争ったけど負けちゃったんだよ。
一番下の子だけ引き取って育ててたけど、病気が悪化して旦那さんに戻したんだよ。
経済的な余裕もなかったし、どうしようもなかったかなあ。
離婚した原因は、すべて相手側にあると言う。
相手がこうだったから、相手がこう言ったからと、自分の非は一切言わない。
私は悪くない、私は治らない病気だから大変だったんだと。
遠回しに、自分は可哀想な人と言いたげな様子にイライラしてくる。
同情して欲しいのか、大変だったねと言って欲しいのか。
悲劇のヒロイン、気取ってんじゃねえよ。
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