25.短すぎた出会い
「1日だけ家に泊まらせてもいい?」
「あかん、それだけはあかんって」
「いいじゃん、1日ぐらい」
夜になって、女の人の家前で繰り広げられる会話。
私を手を掴んで放さない女の人、それを苦笑いしながら拒む父。
父といるよりも、この人と一緒にいた方が楽しそう。
今まで経験のしたことがない感情を与えてくれる。
やっと、ちょっとした頼れる人ができたような感じがして、
すべてをさらけ出すことはできなくても、少しだけなら気を許せるような。
「別にいいけど」と、私が言いたくなっていた。
「じゃあ、明日1日だけデートしていい?」
「2人だけで買い物とかしたいの、いいよね」
父は半ば諦め気味で承諾して、翌日の昼前に2人だけで買い物に出かけた。
喫茶店に入って、たわいもない話で盛り上がる。
もののけ姫の話題で盛り上がって、好きな台詞を言い合ったり、
お気に入りの場面を語ったり、自然と会話が絶えない。
笑いながら話すなんていつぶりだろうか。
オバさんと会話しているときは、お金絡みか愚痴だったから。
顔色を伺いながら話すことにも疲れて、私から話しかけることもなかったし、
父とは会話なんてほとんどなかった。
でもこのときは違った、次から次へと話題が出てくる。
街を一緒に歩いているときも、スーパーに入って食材を選んでいるときも。
それを笑顔で返事してくれる、本心から楽しい感じた。
2週間ほど経ったある日の昼に、公園前まで父と一緒に行くと、
そこには、女の人が暗い顔をして手すりにもたれて待っていた。
財布から2万円を取り出し渡すと、父は「絶対返すからな、ありがとな」と一言伝える。
別れたことを直感した、理由はなにも知らないけれど。
「また遊びにおいで」
別れ際に言ってくれたこの言葉が身に染みる。
父と一緒に駅へ向かう、女の人もどこかへ歩いていく。
何度も振り返っては、離れていく背中姿を見つめていた。
私にとってのちっぽけな幸せなんてものは、
前触れもなく、とても簡単にすぐ壊れてしまうものなんだ。
アルバイト雑誌を読んで、この仕事をしようとか、
賃貸の雑誌を読んで、こんなところに住んでみたいとか、
慣れない環境の東京でもいいかなって勝手に考えてた。
何に期待して、女の人に何を求めていたんだろう。
新幹線の中で、変わりゆく景色を見ながら思い更ける。
帰ってきた家、懐かしさすら感じさせない。
父はすぐに出かけて行き、とりあえずテレビをつけようとリモコンを持つ。
……、つかない。
また仕事探さないと、本屋へ行こう。
貰った黒いマフラーを首に巻いて、両手をジャンパーのポケットに突っ込み、
少し猫背になりながら本屋へ向かう。
無料の求人雑誌を、数冊手に取って持ち帰る。
目星つけたページの端を折って目印を作り、明日電話しようとテーブルの上に。
次の日になってもやる気が沸かない。
また、明日でいい。
その繰り返しで、意味もない日を過ごしていく。
お金がないのを分かっていても。
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-------------------------------------------------------------------24.父の会いたい人
同じ15歳でも、なぜこうも違って見えるんだろう。
周りと異なった環境が、意識しなくても目に見えて分かる。
職場では、高校生や大学生が多く主婦層がほとんどいない。
休憩になると話題は学校のこと、文系や理系の意味が分からない。
その話題についていけなくて、どうしたらいいのか悩む。
バイトして帰るだけの日々で話題なんて持っていない。
孤立してる感じがする、自分から距離を置いているだけなのに。
「給料日っていつや?」
さり気なく聞いてきた父。
特に不信感も抱かずに教えると、給料日には決まってこの言葉。
「少しだけ借してくれるか?」
具体的な金額は聞いてこない、昼食代だけを抜いて残りすべてを渡す。
時給は700円、1日8時間で20日前後だったから、平均すると10万前後は稼いでいた。
家賃、光熱費、食費とすべてを賄えるわけでもないが、
渡した分でなんとか生活できるかもしれないと、少しは安心していた。
毎月、借してくれと言われることに抵抗がでてきたのもあって、
言われる前に、予めテーブルの上にお金を置いていた。
「すまんな、ご苦労さん」
夜になるとそう言って父は隣の部屋へ向かう。
自分で稼いだのに、なんで自分で使えないんだという思いを持ち始める。
でも家は苦しい、仕方がないと押し込める。
ある日、電気が止まった。
おかしいな、なんでだろう。
オバさんも1ヶ月以上帰ってこないのが当たり前になってきている。
大家からの督促状、それを見ると"今月中に支払わなければ強制退去"という文章。
滞納額を見れば30万以上、半年は払っていないことになる。
知らない間にノートパソコンまで買ってきているのに、
電気代すら払っていないのはどういうことなんだ。
ため息しか出ない、何だか働くのも馬鹿馬鹿しい。
電気が止まっているの知ると、第一優先で払いに行く。
家賃は払っていないだろう、未だに督促状が届くのだから。
そして、寒い冬1月に突然東京へ行くと言い出した。
「東京にな、会いたい人がおるから」
「服だけ詰め込んで一緒に行くか」
一緒に行くも何も、1人では生活できないのだから必然とついていくしかない。
会いに行くって誰にだろう。
ついていくにしても、今のバイトを辞めなければいけない。
どういう理由をつければいい、父が東京行くからついていきますとか、
そんなものが認められるのだろうか……。
結局、家庭的な事情でとしか言いようがなかった。
上司も呆れた声で、「もういいよ、分かった」という反応。
当然だ、シフトもすべて決まっていたのだから。
贅沢にも新幹線に乗って東京へ。
そこから乗り換え、とある下町へ向かった。
市役所にまで行って住民票の移動。
予め用意していたかのように、新聞配達する会社の寮へ行く。
ワンルームの古びた部屋、窓を開けると手が届くほどに近い建物がある。
トイレは和式、風呂はない。
光があまり差し込まないから、昼であっても若干暗い。
そして寒い、暖房が一切ない。
父は朝刊と夕刊の配達をして、私はプラプラと東京見物。
よく行ったのは赤坂、手当たり次第に店の中へ入っていった。
途中で迷子になり、駅の方面すら分からなくなって、
適当に歩いていたら、目的地の駅まで着いていたなんてことも。
人が多い、下町なのにこんなにいるのか。
電車なんて数分で次のが来る、考えられない。
人を押し込むようにして乗っていく。
あのオバちゃん、鞄の取っ手がドアに挟まったままだけど大丈夫なんだろうか。
必死に引っ張ってる、頑張れ……気合いだ。
数日後、例の会いたい人と会うために待ち合わせ場所へ向かった。
喫茶店の中に入ると、そこには髪が長く綺麗な女の人が座っている。
体は細く、背はビシッと伸びていて、若そうに見える人だった。
………、女か。
オバさんとは別れていないはず、また二股なんだろうか。
「オバさんには内緒やで、絶対言うなよ」
と、少し笑って小声で忠告してくる。
どうでもいい、次から次へと女ができるもんだ。
オバさんに報告して修羅場を見るのも楽しいかもしれない。
弱みを握った、少し楽しみが増えた。
自然と、その新しい女性とは距離を置いていた。
自ら話しかけることもなく、聞かれても最低限のことしか答えない。
育ての母やオバさんと違ったところは、私に対して興味があったこと。
私にはじめて「可愛い」と言ってくれた。
頭を撫でながら、「部屋寒くない?」と心配してくれる。
電気ストーブを買ってきて、マフラーをプレゼントしてくれて。
積極的に打ち解けようとしてくる、鬱陶しいと思わせないような感じで。
ほんの少しだけ、この人ならいいんじゃないかという気持ちすら芽生える。
育ての母もオバさんも、私はおまけ程度の存在だっただろう。
父が好きで付き合ったのであって、私が好きで付き合ったわけじゃない。
所詮は他人、好きな人の子どもであっても邪魔にしかならない。
自分の子どもではないのだから、当然のことと言えばそれまでだろう。
そうじゃないと口では言っても、態度ですぐに分かってしまうもの。
壁というものがある、寄り添おうとしない見えない壁が。
中には実の子として寵愛して、大きくなるまで一生懸命に育てる人もいる。
そんな人に恵まれた子は、羨ましくなるほどに幸せな人なんだと思う。
もう少し早く出会っていれば、もしかしたら……。
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-------------------------------------------------------------------23.生きることへの必死さ
卒業式当日、緊張もなく自分でも驚くぐらいに無関心。
学校へ向かう足取りが軽い、でも校舎まで行くことができない。
少しだけ時間を遅らせれば、みんなは教室にいるはず。
裏口から侵入して、誰にも気づかれないように保健室まで走っていく。
そこには、私と同じで不登校になっていた男の子が2人いて、
はじまる時間までの間、抵抗もなく打ち解けることができた。
先生が呼んでくる、ようやく面倒な卒業式がはじまる。
体育館に用意されていた席へ座る、後から同級生たちが入ってきた。
混じる会話が余計に気になる、ざわざわとする感じが懐かしい。
シューズのキュッという音、そんなものもあったなあ。
懐かしい顔ぶれ、ここでやっと緊張感が出てくる。
卒業することに対してじゃない、また何か言われるんじゃないかという不安で。
うつむいた私に、クラスメイトの子が声をかけてくる。
「久しぶりじゃん!」
「来てくれたんだ、よかったー」
数人が寄り添い、前とは違った雰囲気。
笑顔にはなれない、だけど少しだけホッとした。
そんなとき、1人の女の子が嬉しそうな顔でこう言った。
「これでやっと全員揃ったね、来てくれてありがとう」
お礼を言われるほどのことなんだろうか。
私を待ってくれている人がいたということに戸惑う。
また愛人家庭だの嘘つきだの言われると思った。
想像していたものと違う、だけど感動という気持ちは溢れてこない。
あっという間に終わった卒業式、手には卒業証書の入った筒。
もちろんアルバムも文集もない、無理矢理貰ったとしても捨てただろう。
教室には向かわない、私の教室は保健室。
そこに居た先生に「卒業おめでとう」と言われても、
おめでたいことなのか?と疑問を抱くほど。
「ありがとう」なんて素直に言ったことがない。
「おめでとう」も「ありがとう」も、どっかに置き忘れてしまったよ。
「集合写真を撮るみたいだけど来る?」
「面倒なんで帰ります」
後ろめたさなんて微塵もない。
さようなら、腐った先生と愉快な仲間たち。
卒業したその日には、無料配布されているアルバイトの求人雑誌を眺めていた。
近くのマクドナルドで募集していたから、
すぐに電話をして面接してもらうように取り入ってもらう。
証明写真付きの履歴書を持ってきて下さいと言われ、
分かりましたと言ったものの、お金なんて持ってない……。
帰ってきた父に、アルバイトするからと説明して1000円だけもらい、
次の日には写真を撮って履歴書を準備した。
高校なんて行く余裕がない。
また何もかも買わなければいけないのだから。
ここ行きたいな~、この制服いいな~と、のんきに言ってる場合じゃない。
小学生の頃にはなかった生きることへの必死さが、徐々に生まれはじめてくる。
大家からの家賃滞納による督促状が届いている。
期限までに支払わなければ、差し押さえをするという内容。
コンビニ払いの電気代請求書、いつ電気が止まるか分からない。
ガス代もきてる、こっちのほうが先なのか。
冷蔵庫の中も空になってきてる、金がなければ何もできない。
世の中、すべて金で動いてる。
金に悩まない人たちはいい、こんなこと考えなくていいんだし。
世間から見た普通の人たちを、妬ましく思えた頃だった。
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-------------------------------------------------------------------22.冷めていく
「お父さんさ、アンタのお兄さんに大学の教育費を払ってたみたいだよ」
「この前、久しぶりに会ってきたんだって」
オバさんと2人きりでの会話、珍しく機嫌がいいらしい。
腹違いの兄なんて、見たこともなければ名前も知らなかった。
居るということだけは知っていたけど興味もない。
会いたいとも思わない、会ったとしても他人として見るだろうから。
大学に行けるぐらいだから、さぞかし裕福な家なんだろう。
「団地のとき電気がついてなくて、アンタの家だけが真っ暗だったね」
「あれって、お金がなくて止まってたの?」
「たまについてないから、少し心配してたんだよ」
「オバさんが心配してくれてたのは嬉しいんだけどさ」
「じゃあ、家賃も光熱費も食費も全部払ってくれたの?」
オバさんは声を詰まらせて困った顔をする。
過ぎた感情なんてもの、私にとってはどうでもいいこと。
口だけなら何とでも言える、心配ならなぜ家に来なかった。
所詮は他人だから、そんな他人が見えないところで寂しがっていても、
誰も気づかないし、少し違和感があっても寄ってこようとしない。
取り立てが来たときもそう、声で分かるはずなのに誰も尋ねて来なかったよ。
ニュースで○○さん死去、○○市で交通事故と流れても、
慌てて連絡をするのは身内ぐらい、見てる方は「ああ、可哀想に」と思うだけ。
それと同じようなものでしょう?
他人がどうなろうが知ったことではない、そんな冷め切った心が私を覆っていく。
ある日の夜遅くに、オバさんがいつもに増して不機嫌な顔をして帰ってきた。
父と帰り道に喧嘩してきたようだ。
ふてくされた様子で、私に愚痴をこぼしはじめる。
「今日ね、残り300円ぐらいしかなくて歩いて帰ってきたの」
「途中から腹減った腹減ったうるさくてさあ」
「仕方ないから、コンビニでも行って何か買ってきたらって言ったわけ」
「そしたら、カレーせんべい買って1人で食べてるんだよ?」
「私だってお腹空いてるのに、全部食べちゃうとか信じられなくない?」
「ちょっと食うか? の一言もなしにだよ、考えられない」
「なんでカレーせんべいなの? もっと他の選ばないのかね?」
なぜ300円しかないのかと突っ込みたいところだけど、
とてもそんな雰囲気でもなく、カレーせんべいで喧嘩する人たちをはじめて見た。
とても熱く語る姿は、食べ物の恨みは怖いというのを知らしめた。
卒業式の一週間前ぐらいに、担任の先生が家を訪れてきた。
その場には父も同席して、何やら話し合いをはじめるようだ。
先生は正座をして、柔らかい表情で私の体調がどうなのか聞いてくる。
「さあ……」と、まともに答えようとはしない。
2回か3回ほど軽くうなずいた後に、
父の方を見て「卒業式のことなんですが…」と切り出す。
「卒業式だけは出てきて欲しいんだ」
「やっぱり一度しかないことだから、考えてくれないかな」
卒業式に出ることは意味がないものと思っていた。
それが人生で一度きりのことだとしても、何の特にもならない。
出たことで何かが変わるわけじゃない。
行きたくなかった学校へ行って、見たくもない顔を見て、嫌な思いをするだけ。
それなら出なくてもいいんじゃないかって。
父が心配そうな顔をして話しかけてくる。
「まあ、卒業式ぐらい行ってもええんちゃうん?」
その言葉で、深く考えるもなく行くことを決めた。
先生も少し安心した表情になっている、報酬でも貰えるのか?
さっきよりも明るい感じで、他のことを聞いてくる。
「卒業アルバム……、どうする?」
「いりません」
「卒業文集だけでもいらない?」
「いりません」
「じゃあ先生の文集だけあげるね……」
「あんな腐った学校のものなんて必要ありません」
父も先生も引きつった笑顔、おもしろい。
とりあえず卒業式だけは出る、他は何もいらないと伝えて、
理解した先生は父に頭を下げ家から去っていく。
面倒なことが1つ増えた、でもそれを乗り切ってしまえば、
もう学校なんてものを考えなくていい。
卒業式が悲しい? 感動する? 涙が流れる?
くだらない、さっさと終わってしまえばいいのに。
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-------------------------------------------------------------------21.終止符
6階の階段から、いつものように仕事へいくまで待っていたときに、
いつもならエレベーターを使っているのに、父だけが階段を降りてきた。
慌てて階段を降りて、階段の壁に隠れたがすぐに見つかってしまう。
「何しとんねん」と問う父に、「今日学校休みだった」と苦しい言い訳をする。
険しい顔もしない、無表情な顔のまま小刻みにうなずく。
私の頭の中では、どうしようと混乱している。
「ほんまに休みなら学校行って確かめよか」
「うん、いいよ、本当に休みだから」
休みなわけない、でもそう言うしかない。
走って逃げてしまいたい、逃げても帰る場所も行く場所もない。
早く仕事に行って欲しい。
雨が降った後の濡れた道、突然大雨にでもなってしまえばいいのに。
時間稼ぎでゆっくり歩いても、父の歩く速さは変わらない。
半分ほど過ぎたところで、私の足が止まった。
「今日……、学校休みじゃない、ごめんなさい」
それを聞くと父は、何で行きたくないのかを聞いてきた。
自分から作れなかった機会、なのに何も言えなくなっている。
信じてもらえないかもしれない、怒られるかもしれない、
言いたいのに言えない、泣くしかできないことが悔しい。
そんな私を見て、父は「帰ろうか」とさり気なく言う。
家まで私を見送ると、いつもより遅れて仕事をしにいった。
特に聞くこともなく、責めることもなく。
直接口にして伝えることができなかったけど、
行きたくないというのを理解してもらえただけで安心した。
もう隠れる必要もないし、時計を見ることもない。
帰ってきたんじゃないかってビクビクしながら家に居ることもない。
取り憑いていたのが少し落ちたような、気持ち的にも楽になる。
いつも感じていた時間の長さ、それも徐々に思わせなくする。
父は帰ってくると、鞄の中身を見ていいかを尋ねて、
隠しても仕方のないことだから、「うん、いいよ」と伝える。
落書きされた教科書を見て、父はその場で破り捨てた。
オバさんは関わろうとしない、首を横に振っているだけ。
軽く深呼吸すると、「買い物行くか」と私を誘う。
父なりの愛情表現だったんだろう。
使われない制服、汚れない体操服、中身が変わらない鞄、減らないシャーペンの芯。
なぜか、学校のことを思い出さなくなった。
ボーッとする日が多い、することもなくテレビを見てるだけ。
たまに図書館や本屋へ行っては時間を潰す。
中学3年生の2学期から、通知表には家庭事情としてすべて休みになっている。
残された記録は消えることがない。
父とオバさんは突然仕事を辞めて、寮の目の前にある3階建て2DKアパートへ引っ越した。
辞めた理由は分からない、またパチンコ生活に逆戻り。
オバさんは子どもに仕送りするために、ホテルの清掃員として働き始めた。
この頃から、オバさんは家を留守するようになる。
「子どもが私を必要としてるから、週に何回か向こうに帰るね」
「でも、アンタは私の本当の子どもだって思えるから」
「血の繋がりとか関係ないよ」
勝手にしてくれ、私には関係ない。
本当の子どもだと思える……か。
それなら、わざわざ私の洗濯物だけをよけて置いてる意味が分からない。
食器も箸も、ご丁寧に私のだけ洗っていない。
言ってることとやってることが矛盾してる。
気にするのも疲れる、だから私のは全部自分でやるようにした。
オバさんが母親……、笑えない冗談だ。
「子どもと被るから、直視できなかったわ」
その場の感情で置いていったのに、都合のいいことを言う。
そんなものなのか、勝手すぎると思うのは私だけなのか。
父はパチンコでお金が厳しくなると、歩いて3時間かけて帰ってくることもあった。
団地のときと違っていたのは、コンビニ弁当やカップラーメンじゃないこと。
冷蔵庫の中には食材が入っていて、自分で料理できるぐらいにはあった。
学校は行かないのが当たり前の生活。
家の中も少しずつ変化していき、オバさんとも疎遠になっていく。
変わっていく環境のことは深く考えないようにした。
もう疲れたから。
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