30.友人の境界線
「私ね、今まで色んな人から誘われてきたんだけど全部断ってたの」
「はじめてだよ、お父さんにだけは何でか分からないけど断れなかった」
あっそう、としか言いようがなかった。
父のどこがいいのかを聞いても、分からないと返ってくる。
オバさんとまだ関係があることに関しても、
今はまだ本気で付き合ってるわけじゃないから、あまり気にならないと言う。
それならなぜ、オバさんが来る前日にわざとピアスをテーブルの上に置いて行ったのか。
過去のことを話しても、そんな人には見えないと。
あんな男でいいのかと何度聞いても、まったく聞いてはもらえなかった。
そんなことする人じゃない、そんな風には見えないと誰しもが言った。
オバさんも、東京の人も、長男も言うことは同じだった。
でも私は見てきてる、経験してきてる、それなのになぜ分からない。
どいつもこいつも、常識にとらわれて信じようとしない。
くそったれ……。
長男は度々夜に訪ねてきて、気分転換にとドライブに連れて行ってくれる。
黒色の軽自動車に乗って、1時間ほどかけて田舎にあるダムへ着いた。
ヴィジュアル系バンドのRaphaelを爆音で流しながら、
もうすぐ来る長男の友達を待ち続けた。
ダムの近くにはベンチがあって、そこに2人で座って話していると、
程なくしてガッチリ体型の男性が現われた。
「おっ、来た来た、ジョルジー!」
手を挙げて反応する、昔からのあだ名がジョルジらしい。
特に何をするわけでもない、たわいもない雑談からはじまって、
明るい性格で場を和ませてくれる。
長男とジョルジが出会った場所も、ここのダムで喧嘩したときだったという。
30分ほどしてお別れの時間がやってきたとき、
ジョルジは初対面の私に、優しく声をかけてくれた。
「また今度、ゆっくり遊ぼう」
チャットサイトでは、文字だけの「また今度」というもの。
実際に、顔を見て目を合わせて握手する「また今度」は違った感じがする。
幻の世界に居場所を求めていたけど、くだらないことだと思えた。
ジョルジが7歳の頃には、両親が交通事故で他界。
足し算も引き算も、かけ算も割り算もできない、漢字も読めない、
あだ名は「出来損ない」「欠陥品」と世間から呼ばれていた。
親戚が引き取ったが、実子との差別がひどく、
家のゴミ箱を漁って食べ残しを探したり、
それが見つかってしまうと、下にいる2人の兄弟たちのために頭を下げた。
殴られ蹴られ、ようやく貰ったお茶碗一杯のご飯を、下の兄弟たちに分けていた。
私は待っていればご飯が出てきた、例え目玉焼き一個だけであったとしても。
住むところもあった、雨に打たれることはなかった。
異なった過去を照らし合わせると、私はまだいい方なんだと感じる。
でも、可哀想だとも思わないし同情もしない。
不思議とそういう感情は沸いてこないものなんだ。
このときはまだ、どこからが友人なのかどこからが他人なのか、
距離をとって壁を作っている頃だった。
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-------------------------------------------------------------------29.次から次へと
だらだらと過ごす私に、父は黙って様子を見ていたけれど、
半年を過ぎたあたりで注意するようになる。
「ええ加減に仕事探したらどうや?」
「あー、うん、いいのがなくてね」
なまくら返事をして受け流す。
人に言うぐらいなら、自分だって仕事したらどうなんだ。
物心ついた5歳から今まで、3年しか働いている記憶がないのだけど。
だるそうに募集雑誌を手に取り、10分ぐらい見たあとにはパソコンの前へ。
父の顔色を伺って、機嫌がよさそうなときに分からないことを聞いてみる。
あーだこーだと楽しそうに教えてくれる。
こんなもの、ただの機嫌取りなのに単純な人だ。
17歳になっても変わらずに、パソコンという恋人に惚れ続けて、
ニヤニヤしながら画面と向き合っている夜に、知らない女の人が来た。
「お邪魔しま~す」
父と一緒に部屋へ入ってきて、少し微笑みながら挨拶をしてくる。
背が低くシワが目立つ、痩せ形で髪は整えているが若さはない。
前歯が一本ない、歯抜けババアか。
軽く挨拶を交わしたあとは、そそくさと隣の部屋へ入っていき、
会話をすることもなく、別々の空間ができあがる。
驚くこともない、誰が来ても「いつものこと」で済んでしまう。
次の日も、その次の日も隣の部屋へ父と一緒に入っていく。
笑い声が聞こえる、何だか気持ち悪い。
オバちゃんは突拍子に私のほうへ来て、「今なにやってるの?」と聞いてくる。
人に合わせることには慣れている、いつも顔色を見ながら会話していたから。
でも、聞かれたことに答えるだけ。
私から何かを問いかけることはしない、面倒だから。
暫く経った日、オバちゃんの長男が尋ねてきた。
親子して前歯が一本ない、同じところの歯がない、なんで………?
長男は私と話したいから来たらしい、私はそんなもの望んではいない。
帰れと言うわけにも行かず、パソコンを閉じて部屋へ移動した。
どんな人なのか探りを入れながら会話をする。
いつも通りに顔色を見ながら、何を考えているのかを伺う。
そして、昔話の話題に切り替わったとき、長男の顔色が変わった。
今まで経験したことをありのままに話した。
放浪のこと、義母のこと、貧乏だったこと、取り立てがきたこと、
父が暴力を振るい義母はアザだらけであったこと、
借金にまみれて自己破産していること、中学では靴や体操服がなかったこと、
私を置いていったこと、ここに来るまでの課程の何もかもすべてを。
信じられないと言った、でもすべて本当にあったことだから。
過去のことを話したのは長男がはじめての人。
周りに言おうとも思わないし、話したところでどうにかなるものじゃない。
ただ、やっとこうして話し合える人ができたことが嬉しかった。
見えない人が相手じゃない、目を合わせて話すことができる。
「産んだ人とは会ったことがないんだね」
「うん、ない」
「名前も知らないし、顔も分からないし、どこに住んでるかも」
「話してみたいけど、連絡が取れないからどうしようもないね」
「そっかー、何か……大変だったんだなとしか言いようがない」
苦笑いしながら、次に出す言葉を探しているようだった。
長男は、最初の旦那さんとの間に産まれて、その後にオバちゃんは離婚。
オバちゃんの再婚相手の人と一緒に暮らし、養子として育てられた。
しかし、日常から来る虐待に耐えきれず、中学のときに家を飛び出した。
知らないところで、そんな苦労を味わってきている。
一般的な家庭に育ってきた人とは、どこか考え方のすれ違いがある。
全員がそうではないけど、噛み合わないことのほうが多い。
共感できる部分があって話しやすい、ようやくできた友人。
オバさんが来る日になると、父は必死に部屋の中を掃除する。
床に落ちているゴミや髪の毛を、入念にコロコロローラーで取り、
浮気していることがバレないように、隠し通そうとしていた。
そんなことをするぐらいなら、別れたほうが早いと思うのだけど。
オバさんは、たまに確信しているかのように打ち出す。
「ねえ、最近来るなって言うけど浮気でもしてるんじゃないの?」
「女の勘だけどね、怪しいなあって少し思ってる」
父は動揺した様子で「そんなことないよなあ」と馬鹿面して私に振ってくる。
修羅場になろうが別れようがどうでもいいよ、勝手にやっててくれ……。
適当に受け流して部屋に戻る、巻き込まれるなんてゴメンだから。
オバちゃんとも、知らない間に打ち解けるようになっていく。
少しだけ距離を置いて接しているけど、話すだけなら抵抗はない。
今まで、どんな女の人が来ても関係ないと思ってた。
でも、徐々に私まで狂わされていくなんて予想もしていなかった。
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-------------------------------------------------------------------28.閉じこもる居心地
オバさんが来る回数は、1ヶ月に1回から2ヶ月に1回と少なくなっていく。
父が好きだから来るのか、それとも慢性なのか。
オバサンの荷物は、すべて団地に戻してあって家にはない。
内縁の妻だとか、そんなふざけた関係なのならば、
いっそのこと綺麗サッパリ別れてしまえばいいのに。
子どものために帰る、それは正当化しようとしているだけさ。
置いて行かれたという傷が癒えることはない。
目先のことしか考えずに、勝手な行動をしたことに関して、
大人っていうのは言い訳しか言わなくて、現実から逃げていくだけ。
大人しか分からない世界、じゃあどこからが大人なの?
一度は置いていっても、あとで引き取った父のことでも同じ。
子どもより恋愛なんだろうか。
土下座してまで奪ったのに、また新しく女作って何がしたかったんだ。
私の目の前で、オバさんと愛だの恋だの気持ち悪いこと言う暇あるのなら、
仕事の雑誌一冊でも持ってきて、電話の一本でもしたらどうなのか。
引っ越しても、父のパチンコ生活は続いている。
常に不安定な家、また退屈な仕事探しから。
万年貧乏、金に困らず生活なんてしたことがない。
どこの家でも同じだと思う、でも食べ物に困ったことないだろう。
冷蔵庫を開ければ、何かあるのが当たり前。
それなのに、開けてもワサビぐらいしか入っていないときもあった。
平々凡々と育った人はいいな、生きる苦労なんてなさそうだし。
アルバイトの募集雑誌を見ながら、そんな余計なことを考えている。
他人を妬んでも仕方がないこと、分かっているつもりで分かっていない。
働く意欲がなくなってしまった。
何かもう面倒臭い、どうせ稼いでも使えないのだし。
部屋の中で横になりながらテレビを眺める。
ゴロゴロしながら、眠くなったら寝て起きたいときに起きる。
パチンコが順調なのか、オバさんから借りてるのか知らないけど、
冷蔵庫の中には食べ物もある、カップラーメンもたくさん押し入れに。
中学卒業したての頃は、お金のなさに危機感を持った。
それが切れてしまった途端に、やる気も何もなくなった。
どうせ前の家賃も、滞納したまま逃げた同然で引っ越したんだろう。
払いきれなくなったら、ここもそうなるさ。
こんな生活に慣れてしまうと抜け出せない。
父から貰ったノートパソコンをカチカチといじりはじめて、
それが更に拍車をかけて働きたくない病が発症する。
起きたらまず行うこと、それは寝ぼけながらパソコンの電源ボタンを押す。
朝から晩までずっと画面に向き合って、テレビを見ることもなくなった。
最初は調べ物だけだったのが、チャットサイトというものを知ってから、
毎日のようにそこへ通うようになる。
見ず知らずの人と文字だけで会話する。
相手の表情も、声も、どんな人かも分からないそんな世界。
そこだけは、現実とは違った私だけの本心をさらけ出せた。
普段なら言わないようなことも、文字なら簡単に表現できる。
ストレートに感情を映し出せる場所。
ご飯を食べているときも、常に目線はパソコンの画面。
寝ているとき以外ほとんど同じところに座っている。
周りから見れば、画面を見て笑っている姿なんて疑問に思える。
私にとっては、それが楽しいひとときだった。
オバさんが来ている日でも、話は右から左へ聞き流して、
体はパソコン、たまにオバさんと目を合わせるぐらい。
「パソコンの何が楽しいの?」
「そんなカチカチカチカチしてさあ、よく分からない」
と、真剣な顔をして聞いてくる。
説明しようがない、分かってもらおうとも思わない。
首をかしげて考えておけばいいと、聞いていないフリをして、
オバさんの存在を忘れるほどに夢中になってしまう。
話を聞いてくれる人は、画面越しにいてくれるから。
四六時中張り付いて、常にキーボードを叩いているかマウスを持っている。
パソコンという魔物が、手を握って放さない。
その手をあえて振り払おうとはしないまま月日は過ぎていく。
27.流れゆく景色
東京から戻ってきて1年が過ぎた16歳最後の冬、大阪から父の友人が家にやってきた。
昔話で盛り上がっているわけじゃない。
友人へ、引っ越しの手伝いをしてくれないかという相談だった。
小柄な体型、頭が少し禿げていて、
とても同年代には見えないぐらいに老けている。
笑いながら友人に色々と話してはいるが、また仕事を辞めなければいけないのか、
そんなことを思いながらいると、まったく楽しくはない。
せっかく慣れてきたところで、やむを得なく続けられないことは、
モチベーションを保つことが難しい。
引っ越す理由も分からないまま、ただ流されていくだけ。
家の中にある荷物は少ない。
前に住んでいたワンルームの頃から増えておらず、まとめるのも簡単。
冷蔵庫の扉には、透明のテープを貼って開かないようにする。
食器は新聞紙に包んでダンボールの中へ丁寧に入れて、
お風呂やトイレの掃除をはじめる。
雑巾で窓を拭いて、一通り綺麗にし終えると、
物があまりなくて殺風景だった部屋が、なおさら何もないように見える。
オバさん、最近全然来てないな……別れたんだろうか。
まあいいか、関係ないことだし。
次の日に、父の友人が軽トラを運転してきた。
業者に頼むお金がないのか、それとも勿体ないからか、
2人で息を切らしながら家具やダンボールを下へ運んで積んでいき、
一度ではすべて乗り切らないため、何度かに分けて運ぶようだ。
縄でガッチリと固定して、あまりスピードを出さずに運転していく。
私は真ん中に座り、どこへ行くのか分からない道をひたすらに眺める。
家を借りることができたらなあ。
そんなことを思っても、いざその場になると戸惑ったかもしれない。
雑誌を見ると、敷金礼金0円なんてものがある、敷金も礼金も分からない。
どこに連絡すればいいのか、どうやって借りるのか、
保証人なんて言葉も知らない、そもそも保証人は何のためにあるのか。
経験や知識不足が浮き彫りになる。
山を越えて広い二車線の道路を走っていくと、次第に海が見えてくる。
太陽の光が反射して、キラキラと細かく光っている。
向こう岸には、様々な工場が薄く広がって見える。
ラーメン屋の脇道を通り、少し真っ直ぐ行ったところで停止した。
3階建てのアパートに到着し、2階にある3DKの家へ荷物を運んでいく。
部屋に入ると、ベランダの窓から海を眺めることができる。
新鮮な感じがする、真っ白にしてくれるような匂いがする。
その部屋で私は待ち続け、父たちは2度目の荷物を取りに出かけた。
部屋、風呂、トイレ、ベランダと見て回り、
窓をすべて開けると、家の中を風が通り抜けていく。
外に出て、近くに何があるのかを確認するために散歩する。
見慣れない土地、入り組む小道、古風な家が建ち並び田舎を感じさせる。
余計なことを考えなくていい、色んなことを忘れさせてくれる時間。
親戚も知り合いもいないから、離れて淋しいだとか感じない。
どこへ住もうが、誰もいないことに変わりないから。
ひとまず家に戻り、ダンボールの中身を出して整頓する。
雑巾で台所や窓を拭き、父たちが戻ってくるのを待つ。
ドタドタと騒がしい音を立て、汗を流しながら荷物を運んできた。
「これは……、こっ…こっちに………」
息を切らしながら、タンスを奥の部屋へと持って行く。
数時間にも及ぶ引っ越し作業も終わり、ようやく落ち着ける時間がやってくる。
友人は使い捨てられたように帰って行き、
少し休憩してから、父と2人での片付け作業に入った。
「そういえば、オバさんは?」
「近いうちに来るらしいで、東京のことは内緒やぞ」
なんだ、別れてなかったのか。
来なくてもいいのに、そもそも来る意味があるのだろうか。
引っ越しぐらい手伝いに来い、役立たずが……。
流れていくのは景色だけじゃない、私の気持ちも流れていくもの。
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-------------------------------------------------------------------26.忘れられない思い出
物に対して無頓着だとよく言われる。
服も着られたら穴が開いていてもいい、今だって10年以上前の服を持ってる。
靴も底が抜けるまで履いた、汚くても気にしない。
パソコンだってなくても困らない、なければやらないだけ。
これが欲しいというものがない、興味がまったく沸かない。
凝ることもないし、プレゼントとして貰っても嬉しさがない。
少し経てば大切さすら忘れてしまう。
物なんて、いずれ捨ててしまうものだから、
捨ててしまえば残らないし、記憶からも徐々に薄れていく。
思い出に残るのは、ほんの僅かなもの。
数ヶ月もすれば、女の人から貰ったマフラーなんて、
どこ置いたかも分からないし、どうでもよくなってきている。
手当たり次第に探そうとも思わない、なければ別にそれでいい。
オバさんがたまに服を買ってくる。
いい加減、古くなった服ばかり着ているから持ってきたそうな。
「ああ、うん、いつか着るよ」
つまらないものが溜まっていくだけ。
新しいものだろうが関係ない、私にとっては古びた服と同じ価値にしかならない。
その人にとっては着て欲しい、喜んで欲しいと思ってあげるんだろう。
私にとっては邪魔になる。
だから「欲しいものはないの?」と聞かれても、いつもこう言う。
「欲しいと思うものはない」
「何もいらない」
必要だと思えば自分で買うし、わざわざ買ってもらおうとは思わない。
例えそれが何かの記念だったとしても、
喜べない人に渡したところで、相手にとっては金の無駄だから。
退屈な日常を過ごしていく。
家にいても暇なのだから、働いていたほうが時間が潰れる。
だから、近場のスーパーにある飲食店に電話をして面接を決めてもらった。
やりたいこともない、働ける場所があるならどこでもいい。
夢もない、欲しいものもない。
食べていくためにお金を稼ぐ、そんな当たり前のことだけど、
素直にお金を渡せない抵抗というものが出てきた。
なんで自分で稼いだのに、自分で使えないんだ。
ほとんどがお小遣い稼ぎでやっているのに、私だけそんなんじゃない。
欲しいものを買って、好きなように使える人たちを羨ましく思う。
前までなら、何も言わずにテーブルの上に置いていたけど、
給料日に全額引き落として、コンビニでお菓子を買ったりゲームセンターに行ったり、
思う存分に楽しんでやろうと、父に対して反発するようになった。
数ヶ月は「借してくれ」と言ってこなかった。
そんなことを意識するわけでもなく、普段通りの生活をする。
7万か8万ぐらいだったと思う、そんな金額が一週間もすればなくなってる。
どんな使い方をしたのか覚えていない、相当荒っぽく使っていたんだろう。
休日の昼、お金があまり残っていないときに、
父が申し訳なさそうな顔で借してくれと頼んできた。
「あまり持ってない」
そう言うと、何に使ったかを聞かずに困り果てながら外へ出て行く。
正直、このときは「ざまあみろ」と心の中で笑った。
私だけが美味しい物を食べて、お腹が空くこともなくて、
楽しいことをして、今までと違った日を過ごしている。
お金を出さなくても生きていけたから。
家から追い出されることもなかったから。
困ることなんてなかった、好きなように使えることが当然のよう。
テレビを見ながら、落ち着いて少し振り返ってみる。
冷蔵庫の中を見ると、ほとんど食材となるものがない。
昨日は吸い殻を綺麗に拭いて吸ってた、新しいのを買う余裕がないんだ。
いつも夜はコンビニ行って、何か買って食べてたから気づかなかった。
最近、何も食べていないんじゃないのだろうか。
買ってきた形跡もない、一体どうしているんだろう。
小学生の頃を思い出す。
欲しそうな顔をして、おもちゃ屋のガチャガチャを見ていると、
次の日には、袋の中に沢山入れて持ってきた。
まるで自分が集めているような素振りをして、一緒にカプセル開けていたなあ。
一度だけ、「これが欲しい」としつこくねだったとき、
「うるさい」と言われたものの、数日後にはそれを買ってきた。
義母を犠牲にしてまで、私にだけは何かを与えようとしていた。
晩ご飯が目玉焼き1個だけのときもそう。
今まで、一度も与えてもらったことがないわけじゃない。
捨ててしまってない物だから、記憶からなくなっていただけ。
私だけが満足しようとしている。
一緒に住んでるのに、1人が満腹で1人がお腹を空かしている。
父が素直に働けば、すべて丸く収まること。
パチンコ生活が悪い、そんなこと誰に言われなくても分かってる。
だけど、私にとってはたった1人の親。
自分を責めた、なにをしているんだろうって。
もし、目の前から突然いなくなってしまったら、
私は1人で生きていくことができるのだろうか。
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