【『はじめに』より引用】
米国の大学院で行動経済学と出合い、「人の直感は象のように大きくパワフルだが面倒くさがり屋な面があり、制御が難しい」ということを知った時から、私のコミュニケーションのあり方は大きく変わりました。私たちが野生の象と接しようとする時は、事前に象の習性を調べ、実際にその象の行動をよく観察して、入念に準備してから少しずつ近づきます。そうしないと、象が大暴れしてしまうからです。でも、象のような存在であるはずの「直感」に接する時は、あまり考えずに無防備なまま駆け寄っていきます。これでは相手の直感が大暴れしても仕方がないです。行動経済学は、直感を象に見立て、象とどう付き合っていけばよいのかを教えてくれます。
【引用終わり】
人間の本能を「ゾウ」、理性を「賢い象使い」と置いて、行動経済学のナッジ理論で、人の本能(ゾウ)を動かす事を学ぶ本です。
⚫︎ゾウは同調バイアスなど、さまざまなバイアス(心の偏り、習性)を受けて行動している。
【バイアス(修正)】
損失回避バイアス:利得よりも損失を強く感じる習性、「とにかく損をしたくない」
現状維持バイアス:現状維持を好む習性、「とりあえず、今まで通りで」
投影バイアス:現在の状況を将来に過度に投影し、未来を正しく予測できない習性、「今まで良かったから、これからも大丈夫」
自信過剰バイアス:自分に関することを高く評価する習性、「自分は大丈夫」
楽観性バイアス:「自分は大丈夫」と根拠なく楽観視する習性
正常性バイアス:予想外の事態でも、正常時と同様の判断をしてしまう習性、「自分は大丈夫」
現在バイアス:将来の大きなメリットよりも目先のメリットを優先する習性、「今が好き」
同調バイアス:他人と同じ行動をしたくなる習性、「皆と一緒で」
確証バイアス:自分に都合の良い情報ばかりを集め、反証する情報を軽視する習性、「自分と同じ意見はある?」
利用可能性バイアス:思い出しやすいものを過大評価する習性、「聞いたところによると」
帰属バイアス:偶然のことでも、本質的な問題として帰属させたくなる習性、「失敗したのは、相手が根っこからだらしないから」
自己奉仕バイアス:自分に優しく他人に厳しい評価をする習性、「失敗したのは、相手が根っこからだらしないから」
後知恵バイアス:結果を知った後で「最初からそう思っていた」と感じる習性、「前からそう思っていた」
⚫︎ゾウは自分の認知と矛盾する状況にはストレスを感じ、それを解消するために解釈を歪める。
⚫︎ゾウを動かす4つの方法
「正しい情報を提供する(啓発)」
「行動したくなる環境を整える(ナッジ)」
「褒美と罰則を設定する(インセンティブ)」
「選択を禁止する(強制)」
⚫︎行動変容ステージのステップは「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「定着期」。
⚫︎ナッジ構築の手順。
①自分を象の群れにいるとイメージする。
②ミッションを決める。
③ターゲットを決める。
④目標を決める。
⑤最初と最後のメッセージを決める。
⑥行動が止まっている箇所(ボトルネック)を見つける。
僕も根拠のない思い込みに浸りがちなので、「バイアス」の説明を読んで、「これ、やってるがな!」と恥ずかしい気持ちになりました(笑)。
自分も相手も嫌な気持ちになることなく、望ましい行動を誘う「ナッジ」。
逆に言うと、望ましくない行動を誘うことも出来るので、、、、行動経済学は恐ろしいですね。。。
「心のゾウを動かす方法」竹林正樹(扶桑社)
【7月24日読了】
【オススメ度★★★★★】