「日本の宗教のクセ」内田樹・釈徹宗(ミシマ社) | 乱読家ぽちんの独り言

乱読家ぽちんの独り言

乱読とまち歩き、青山繁晴さんが好きなおじさんです。
コメント、フォロー、リブログはご自由に。
ただし、議論目的のコメント、意見の違いを尊重されないコメントは公開しません。



内田樹先生と釈徹宗さんの5回にわたる対談をまとめたもの。


内田先生と釈先生の対談本は、昔「現代霊性論」を読んでから、面白いのでずっとハマっています。

思想家、宗教家の本は、深掘りされ過ぎていて、読んでいて段々とついてゆけなくなることが多いのですが、対談はそれぞれの思考の違い・ギャップから、予期せぬまったく別のもの、異質のものが噴き出してくることが多く、ワクワクしながら読めます。


対談のテーマは、、、、

日本宗教の特異性である「習合」、アジールにいる異能な人たちの宗教性、お墓の過去と未来、政教分離、戦後日本の宗教などなど。


⚫︎「習合」とは、「土着のものから創造的なエネルギーを引き出す」こと。鎌倉仏教は、平安時代までの都市仏教が日本列島土着文化と習合してできたもの。しかし、鎌倉仏教である浄土真宗と日蓮宗・不受不施派は、習合を拒否してきた。だか、その門徒たちは生活者としては習合的。


⚫︎近代国家の概念、「自由」と「平等」。自由は実感できるが、平等は実感出来ない。自由は国家の目標としてイメージ出来るが、平等は難しい。そして、自由な社会は格差社会となり平等でなくなる。


⚫︎明治政府はなぜ神仏分離が出来たのか?

一つは習合にはロジック(体系性、原理論)が無く、国学者のロジックに反論できないこと。


⚫︎日本の宗教の特徴の一つは「行」を重んじる。千日回峰行から朝のおつとめまで、行の種類が多く、カジュアルなものもある。


⚫︎人間は、二項対立の枠で考えるクセがある。特にコロナ以降、その傾向が強くなっている(ワクチンは陰謀だvsみんなワクチンをうて、マスクしろvsマクスは害だ)。仏教は、2500年以上にわたって「二項対立のワナに気をつけろ」と言っている。その極限が「空」。


⚫︎民族大移動の事例は、ほとんどがGO WEST。人間にとって、東に向かうのは不自然な行動なのかも。


⚫︎日本の伝統的な宗教性を担ってきたのは、沙弥、聖、毛坊主、僧形の芸能民など、マージナルな遊行の民。


⚫︎お墓は習合的で、きちんとした宗教体系の理屈では成り立っていない。お墓は宗教より古い。埋葬地は何万年という歴史がある地が多く、宗教体系ができる前から存在していた。


⚫︎政教分離は国によって形が異なる。見事に政教分離に成功している国はない。日本の政教分離は「神道は宗教では無く、習俗である」とした明治の宗教政策にも淵源がある。GHQは、その反動からか公的な場から宗教を追い出す極端な政教分離を行った。


⚫︎新興宗教は、「政治化」することに抵抗がない。政治システムの中に、政治的変化を加速するアクターとして入り込もうとしている。彼らが求めるのは、権力、財貨、名声。極めて世俗的で反社会的ではない。過社会的。


⚫︎日本政府の海外労働者受け入れ施策には、宗教の視点がない。宗教施設は必要ないのか?イスラム教徒の墓をどうするのか?など。多文化共生は難しい。共有すべきことと、守るべき固有のものの両方の顔を立てた複雑な社会システムを設計しないといけない。



「日本の宗教のクセ」内田樹・釈徹宗(ミシマ社)

26日読了】

【オススメ度★★★★