「思い出せない脳」澤田誠(講談社現代新書) | 乱読家ぽちんの独り言

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⚫︎全ての記憶のうち、意思が関与できる部分はわずか。ヒトが意識できる情報量は、脳内で処理されている情報の100万分の1以下。


⚫︎我々はそれぞれの脳の中に外界を解釈するための、記憶をもとに作られた自分だけの世界(マインドセット)を持っている。我々は何かを経験し記憶すると、このマインドセットが変化していく。マインドセットが偏ると、決まった行動パターンから抜け出せなくなる。


⚫︎老化によって衰えるのは「覚える力」ではなく、「引き出す力」(という研究結果もある)


⚫︎思い出せない理由は、「①そもそも記憶を作ることが出来なかった」「②情動が動かず、重要な記憶とみなされなかった」「③睡眠不足で記憶が整理されなかった」「④抑制が働いて記憶を引き出せなかった」「⑤長い間使わなかったために、記憶が劣化した」の5パターン。


⚫︎記憶がなけれは、自分の存在を証明出来ない。マインドセットを更新できない。


⚫︎情報に出会った時に情動が動いたかどうかで、脳は情報の重要度を決めている。


⚫︎名前がなかなか思い出せないのは、名前が生存にはあまり関係がなく、記憶の優先順位が低いから。


⚫︎ 夢は、視覚イメージのストーリーが支離滅裂で感情がよく動く。それは、睡眠中は情動を司る大脳辺縁系が活発化し、視覚情報を処理する視覚連合野の活動は起床時と変わらないが、それ以外の脳は機能が低下するから。


⚫︎睡眠中は、記憶の選別をしながら、マインドセットの更新を図っている。重要な記憶が入ってきたら記憶を置き換えている。


⚫︎焦る場面で、人の名前などを思い出せないのは、脳内に「抑制」が働いているから。抑制性神経細胞は、神経細胞の20%。にぎやかな子どもたちの中に、怖い先生が混じっているような状態で、怖い先生が「こらっ!」と叱って「シーン」となっている時のようなもの。この抑制が弱くなるのは、寝ている時とアルコールを飲んだ時。


⚫︎脳細胞の9割を占めるグリア細胞の役割は「神経細胞への栄養補給」「神経細胞の軸索にミエリンという絶縁体を作る」「脳内中枢の免疫」などで、脳のパフォーマンスを維持し高めている。さらに、「不要な記憶を除去」「細胞外の環境整備」もになっていることがわかってきた。


⚫︎使わない記憶はシナプスが刈り取られ、忘れていく。忘れないためには、時々思い出すことが必要。


⚫︎記憶は書き換え可能。そして、書き換えた記憶は元には戻らない。


⚫︎脳の各部の働きは、、、

視床:記憶の交通整理

前頭前野:ワーキングメモリー

海馬:短期記憶、さまざまな情報の紐付け

大脳辺縁系:情動による情報の重みづけ

大脳新皮質:長期記憶、情報の分割・統合



めっちゃ面白かったです。

人によって記憶が異なる現象はなぜ起こるのか。

寝不足がいかに人生に負担をかけるか。

なぜ、大切な人の名前を間違えたり、思い出せなくなるのか。

緊張すると頭が働かないのはなぜか。

など、不思議な現象の理由がよくわかりました。


人の記憶が違う以上、人の数だけ真実がある、、、が本当の真実なのかも。



話変わって、僕には、強い憎しみ・恨みを持っている人が一人だけいて、この感情を何とかしたいとずーっと思っているのですが、何年もその人と会っていないのに、全く憎しみ・恨みが消えません。感情が固定している感じです。この本を読んで、その恨みが継続するメカニズムもよくわかりました。

まあ、その方のマインドセットによるものですので、僕がそれに巻き込まれただけだと考えれば、少し楽になるように思います。



さて、本書の感想に戻って、、、

僕は心理学をいろいろと学んできましたが、脳の仕組みがここまで解明されてきたなら、心理学よりも脳科学の方が、人生を豊かにするのではないかとも思いました。



「思い出せない脳」澤田誠(講談社現代新書)

92日読了】

【オススメ度★★★★★