恋人という名の猫 -15ページ目

闘病

梅干しに

茄子の漬け物

好物が

夢にまで出る

泣き笑い



何が食べたい?と尋ねられたら
冷めても美味しいミルキークイン炊きたての白米と
減塩蜂蜜漬け梅干し、そして京都産茄子の漬け物
とうとうそれが夢にまで現れてしまい
食べたいのに食べられない悔しさに、おもわず泣き笑いした私。


塩と水

8グラム

超えてはならぬ

塩分制限

3リットルの

腹水憎し



はじめての食事制限
腹水が溜まるために塩分は8g以下でなければいけません。
味の無い食事は味気なく、食欲減退
食の楽しみを奪った腹水が憎いものです。


こんぺい糖

ミ~ィと鳴く

猫のおもちゃと

遊ぶ我

母の笑顔と

こんぺい糖と



母が亡くなってから、記憶の中の母は私が幼い頃の美しく優しい母のまま。
私が幼い頃、外出の途中飽きないようにと、
毎回母が、駅の売店で買ってくれた、猫のおもちゃ。
小さな筒をひっくり返すと「ミィ~」と猫が鳴く
遊び飽きると、おもちゃの底に入ってる、こんぺい糖を食べる。
その風景を優しいまなざしで見守っていた母。

いつまでも

星を数えて

帰り道

幼き我と

若かりし母



帰り道、夜空を見上げては、月や星を眺めるのが好きだった母。
その情景は、私が幼い頃からずっと変わらないまま、
去年私が退院してきた時も、続いた。
母と娘でいられた幸せな日々。
暗い夜道迷わぬように、母は星になって私を照らしてくれている。

母を追い

雑踏の中

彷徨えば

根付の鈴は

見知らぬ他人



母が動くと、優しい音色で鳴っていた根付の鈴。
雑踏の中、同じ鈴の音をたよりに追うと、
そこには見知らぬ他人。
もう、いるはずの無い母を無意識で探してしまう私。



非情

告げられし

余命はわずか

一ヶ月

なのに短し

母のともし火



救急で搬送された先の医師から告げられた母の余命は一ヶ月
なのに母は翌日亡くなってしまった。

一晩中私の名を呼び
私に「帰りたいの、帰りたいのよ」と言った母。

せめて余命まで生きる事も許されなかった理不尽さ
怒りと哀しみは私の心からこれから一生消える事は無い。


握手

母の手を

握りし我は

「また明日」

母との誓い

懐かしきかな



去年、私が入院中、毎日のように面会に訪れてくれた母
病棟にいる時には、小さな椅子にすわり何時間も、
一生懸命手編みの帽子を編んでいた母。
面会時間が終わると、必ずかわした握手。
「また明日来るからね。」と言う母。
病棟で、ひとりの長い夜を迎える私にとって唯一の希望。
母とかわした言葉と母の手の温もり、今となっては懐かしい想い出。



初恋の人

お別れに

招きし母の

愛おしき

優しき人は

母の初恋



お別れに、娘として出来る事。
母の初恋の人に見守られ旅立たせてあげる事。
この人なら母を幸せに出来たのではないかと
意地っ張りだった母の代わりに
私の最後のおせっかい。
初恋が実る人は幸せなんです。


綿帽子

線路沿い

健気に咲きし

蒲公英の

春の便りを

そっと吹く我



何時も母と歩いてた散歩道
線路沿いに健気に咲く蒲公英
来年も、再来年も命が続く事を願い
綿帽子をそっと吹く私。


忘れな草

夕暮れに

悲しくなりし

我ひとり

忘れな草に

亡き母想う



日が暮れると、母のいない家は
なお、淋しさが増す
母の買った忘れ草から溢れた種で
今年、咲いた忘れな草を見ては
優しい母との事を想い出す。