樫ノ木城3 | えいきの修学旅行(令和編)

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 202111.7記事末に主郭南西尾根筋の堀切写真を追加。
 
下図、高岡徹 大山町歴史民俗資料館講座「大山地域周辺の中世城館と戦国史」の解説より引用、北を上にブログ説明用に加筆。(加筆部分着色)
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 その3では、要害の主要部、山上の実城域を辿ります。櫓台土塁が通路であったかもしれませんし、櫓台土塁の付け根が登り口虎口であったかもしれません。畝型阻塞様の造作があります。
が、随分の上杉の畝型阻塞を見てきた私には、しっくりこない造りにも感じます。後世の炭焼などの窯かもしれません。後世の造作だとすると、山腹平坦地から切岸、郭、をぶち抜いて通る道が行きついているのがここで、道の不自然さの意味は、この造作と関連したものかもしれません。
 二郭、主郭には桝形虎口を重ねて構え、上杉の近代的普請を思わせる、主要部への登路の低地と高地に枡形を設け、高低差を利用して階層的に構える普請をみることができます。
 
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 三郭櫓台土塁先端下に四郭土塁土橋が伝い入る。そこから櫓台土塁にあがっって通路としたか、櫓台土塁下を通し、付け根が登り口虎口であったかもしれません。畝型阻塞様の造作があります。
 
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 櫓台土塁(先端から)
ここまで伝いあがってきた土塁土橋と比べると
幅広であり、通路というより迎撃兵が構えていた櫓台様運用ではないだろうか。
降ります。
 
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台土塁先端下から、付け根、山上方向を見る。
付け根に畝型阻塞?と虎口様の掘り込みがある。
 
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櫓台土塁付け根
ここが登り口虎口のような気がする。
 
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畝型阻塞?
 
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斜め上から
畝型阻塞
ではないような…。 わかりません。
 
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付け根にあがり、山上実城域を見上げる。まるで天守のよう。
 
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なんとなく道が見える。
 
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二郭虎口前
屈曲をともなう通路設定のよう。
 
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右に折れ、桝形
池田城とは明確に違う、天正期上杉の
桝形虎口普請。
 さきに二郭、主郭に桝形虎口を重ねて備えと書いたが、櫓台土塁付け根も掘りこんだ虎口とすると、三層に重ねていると捉えてもよいかも。
 
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ひだりに石列
 
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桝形を二郭内から
 
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二郭から主郭へは、西からあがったようだ。
佐伯氏は、主郭北西が張出、主郭虎口に横矢を掛けていると記述している。
 
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登ると、土塁にあたる手前、左に折れ主郭虎口
 
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二郭を振り返る
虎口が重なる
 
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主郭西面の土塁
 
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主郭虎口
写真不明瞭ですが、ここも桝形に掘りこんである。
 
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樫ノ木城主郭
ただの山上削平地ではなく、土塁、桝形虎口を備え、造作は近代的である。
主郭、二郭からの眺望は良い。
 
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二郭桝形虎口付近から眺望 
(ややズーム)
眼前に津毛城、太田保、富山湾、能登まで見通せる。
 飛騨勢の抑えという位置でもあるだろうが、眼前は元亀天正期の謙信が狙った地域であり、また織田勢の進攻を受ける地域である。樫ノ木城は、越後上杉の気鋭そのままの雰囲気を醸し出す、典型的な近代的上杉城郭といっていいであろう。
 
 月岡野合戦の様子も城兵には見えたことであろう。
 聞き取りで、殿様が落ちる時、沢に金の鞍を隠したという伝承があり、その沢を王谷というそうです。その殿様が落ちるときとは、月岡野合戦で敗れた上杉方が松倉城・魚津城に落ちる時のことであろうか。
 樫ノ木城の遺構は、 織豊の前田、佐々の普請の痕跡は私には感じないので、謙信死後の天正6年10月4日、月岡野合戦で織田勢に河田等上杉勢が敗れ、松倉城・魚津城に退去した時点の(後世城利用以外での改変の可能性はある)普請の姿と思います。永禄末年頃の越中在地領主寺嶋氏の居城池田城の普請の姿と合わせた年越しの記事作成、なかなか修学深く書くことが出たと思います。
 ご覧いただいた皆様、年越しの閲覧、ありがとうございました。
 
 登路は崖をよじ登りましたが、帰路は大手道を楽々と降りました。上杉城将が金の鞍を隠したかもしれない沢の音を聞きながら、一人越中の山中、感動に浸っていました。
  
参考文献 『中世の魚津』
高岡徹「戦国期における上杉氏の越中在番体制とその展開」
佐伯哲也『越中中世城郭図面集Ⅰ』
久保尚文『越中中世史の研究』
高岡徹 大山町歴史民俗資料館講座「大山地域周辺の中世城館と戦国史」の解説 
大山町教育委員会『富山県大山町中世城館調査報告書』
 
2021.11.7 写真追加
 
主郭背後南西尾根
 
一本目の堀切
 
尾根筋
 
二本目堀切