冬になると毎年繰り返している症状はありませんか。
例えば、「皮膚がかさつく」「風邪を引きやすい」「冷えやしもやけになる」「疲れやすい」など、思い当たるものがある方は、冬に強化すべき『3つのビタミン』が不足している可能性があります。
ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEは、冬に現れやすい症状と関連が深い栄養素です。
サプリメントなどで対策する場合も、ビタミンを症状解決の特効薬と思うのではなく、欠乏があったから症状が出ていると考え、毎日不足しないように心がけることが、健康レベルを高く保つ上では大事です。
●ビタミンA~皮膚・粘膜の乾燥に~
ビタミンAは、皮膚の角化を抑制し保湿機能を保つなど、皮膚自体の強化にとても重要な栄養素です。
皮膚・粘膜(気道、消化管など)の粘質多糖体や、粘膜を保護する粘液の成分として、ビタミンAを欠かすことはできません。
ビタミンAが不足して、これらを正常に作ることができなくなると、皮膚のかさつき、気道感染、消化機能低下などを起こす原因となります。
ビタミンAは、動物性食品(牛乳、バター、チーズ、卵黄など)に多く含まれていますが、これらを食べる習慣がないと、ビタミンA不足は加速します。
ニンジンやカボチャに含まれるベータカロチンは、体内に入ると必要に応じてビタミンAに変換されるため、ビタミンAが不足している場合の調節システムとして役立っていますが、その変換率には個体差があり、確実にビタミンAを確保することが出来ない場合もあります。
ビタミンAの吸収や働きには、タンパク質が関与していますので、タンパク質の不足にも注意が必要です。
●ビタミンC~疲労感、感染症に~
ビタミンC不足の初期症状に疲労感がありますが、 これはカルニチンの減少と関連があります。
エネルギー源として脂肪酸が使われるとき、カルニチンがその補助役として働きます(下図)。
カルニチンは肝臓でリジン(必須アミノ酸)を原料に生合成されますが、その過程の2ヶ所にビタミンCが関わっています。ビタミンCが不足すると、疲れやすいのはこのためです。
また、タンパク質が分解・再合成されて、体タンパクや酵素に作られていく代謝は多くのエネルギーを必要としています。
ビタミンCはビタミンB群と共にエネルギー産生の効率を高めます。
生体防衛の柱である“免疫”と“解毒”にも、ビタミンCは関与しています。
免疫機構の発現にはいくつかの段階がありますが、感染の初期には好中球やマクロファージ、NK細胞などの白血球が働きます。
白血球は普段からビタミンC濃度が高いことが知られていますが、ビタミンC濃度が高いほど活発に働くことが分かっています。
また、ウイルスに対抗するために必要な物質であるインターフェロン(糖タンパク)の合成にも、ビタミン Cが必要です。
主に肝臓を舞台とする解毒は、 薬物代謝系と呼ばれる酵素(チトクロームP450など)を中心に行われます。
薬物代謝酵素の活性はタンパク質などの栄養素の摂取状況により変動しますが、 ビタミンCの欠乏によって明らかに低下することが分かっています。
●ビタミンE~しもやけ、冷えに~
低温により血管が収縮して血流が悪くなると、冷えや痺れ、痛みなどが起こり易くなります。
酸素や栄養素は、血液によって運ばれることから、血流の確保は重要です。
ビタミンEには、血液中の脂質の酸化を防ぎ、血液の粘度を下げることによって、血行を改善する働きがあります。
また、冬は乾燥や寒暖差による血流の変化などで、血栓ができやすくなります。
血栓は、血液凝固を受けもっている血小板の凝集性や、細胞の粘着性が高まった時に起こりやすいことが知られていますが、これは血中ビタミンE濃度の低い人に多く見られるという報告があります。
ビタミンEは、 トロンボキサン(血小板の分泌する局所ホルモン)の生成を抑え、血管内膜のコラーゲン繊維に対する血小板の粘着性を低下させることによって、血栓が作られるのを防ぎます。
そして、ビタミンEはビタミンCと一緒に摂取することで、より大きな効果が期待できます。ビタミンEは脂質において抗酸化作用を発揮するので、水溶液でのビタミンCと相補関係にあるといえます。
●健康レベルを高く保つために
1日に必要なビタミンの量は、人それぞれで大きく異なります。
これには個体差・状況差というものが関与しており、その差は、脂溶性ビタミンでは1~10、水溶性ビタミンでは1~100にも及びます。
例えば、ビタミンC100mgで風邪ウイルスに対抗することができる人もいれば、1000mg摂っていても風邪を引いてしまう人もいます。
また、この条件は、その日の体調やストレス状態、環境などによっても変化します。
ビタミンの必要量というのは、日々変化していることを知っておきましょう。