三石巌の書籍で、現在絶版して読むことができない物の中から、その内容を少しずつですが皆様にご紹介させていただきます。
放射能はなぜ悪いか
放射線とよばれるものは一つではなく、アルファ線、ベータ線、ガンマ線の総称であるが、それらに共通にいえることは、いずれもが大きなエネルギーをもって、一直線にやってくることである。アルファ線、ベータ線は素粒子がじっさいに飛ぶものであるが、ガンマ線は電磁波であって、X線のなかまである。
ただし、X線は波長が長いために、ガンマ線よりエネルギーが弱いことになる。X線をふくめた放射線が人体に照射されると、そこにある水分子が一過性に解離して「遊離基」という異常に活性の高い原子団になる。この遊離基がDNAを攻撃するのである。その結果は、DNAの損傷であり、突然変異である。放射線の照射がガンの治療に利用されるのは、水の遊離基によってガン細胞のDNAに損傷を与えるためだ。ガン細胞は分裂がさかんであるが、分裂中のDNAは損傷しやすい。
原爆のような強烈な放射能は、生体を構成する原子の核に作用して、これを放射性元素に変換させる可能性をもっている。したがって、治療用の放射線は、これを避けるべく、微弱なものになっている。ただし、変異原性、すなわち発ガン性の危険をはらんでいる。
〔三石巌全業績−11 健康ものしり事典(絶版)P225より抜粋〕