NK(ナチュラルキラー)細胞をふやすための条件はなんだったっけ。それは高タンパク食であり、キトサンであり、笑いでありってことになったが、それだけで十分だなんていっちゃいない。
もうひとつだいじな条件があるんだが、そいつはあとまわしにして、NK細胞が減る話をしなくちゃならん。これはふだんの心がけにかかわってくる大問題なんだ。
キミは、うんとくたびれたときや、心配ごと悩みごとのあるとき、カゼぎみになった経験をもっているんじゃないかな。
ストレスってもののあることをキミは知っているだろう。過労も心配もそれだ。いや、飢え・渇き・暑さ・寒さなんかもそれだ。ストレスを野放しにしたらからだはまいっちゃう。そこで、副腎(じん)皮質は抗ストレスホルモンをだしてストレスに対抗する。コーチゾンがその代表。いわゆるステロイドホルモンだ。
意地のわるい話なんだが、NK細胞にはコーチゾンをうけとるポケットがついている。それをうけとって、すましこんでいられるならいいんだが、死んじゃうんだ。NK細胞にとって、コーチゾンのなかまは毒薬みたいなものだ。
つまり、ストレスがあるとNK細胞の数は減るってことだな。
ステロイドホルモンがきく病気は二百もあるそうだ。だから、ステロイドホルモンをのまされるケースはうんとある。それがNK細胞を殺すってことは、おぼえておいたほうがよさそうだな。
ここまで話がわかってくると、NK細胞のいちばんの敵はストレスだってことになる。これはわすれちゃいかん。
ストレスについてはもうひとついやなことがある。ストレスがあると抗ストレスホルモン、つまりステロイドホルモンがでてくる。これがこわいんだな。
抗ストレスホルモンは副腎皮質でつくられるやつなんだが、これをつくるとき活性酸素がでてくる。これだけですめばいいんだが、それを分解するときにも活性酸素がでてくるんだ。
こいつは以前から書いているように、電子ドロボーだよ、おぼえているだろう。
ストレスってやつは精神的なものだが、肉体的なものよりしつこい。活性酸素がひっきりなしにでてくる。NK細胞はがた減りだ。
スカベンジャー(老化などの元凶とされる活性酸素をしまつする物質の総称)不足だと、がん細胞がじゃんじゃんわく。転移がん細胞は大手をふるって血管の旅をつづける。おそろしい話だろう。
本原稿は、1994年9月2日に産経新聞に連載された、三石巌が書き下ろした文章です。