NK(ナチュラルキラー)細胞について、ずいぶんとPRしてきた。ここまでくると、「自力でそれを増やすことができたらいい」とだれしも思うだろう。それについての情報をすこしばかり並べることにする。
前に書いたことだが、キトサンがそれを増やすって話がある。セールストークかどうかわからんがね。
もうひとつ、笑いがNK細胞を増やすって話もある。はなし家にきいたわけじゃないが、「笑うかどには福きたる」ってことわざが思いだされるじゃないか。キミはよく笑うほうかね。ボクはひとを笑わせたい人間だが、別にNK細胞をあたまにおいているわけじゃないよ。
ボクの考えかたはいつもオーソドックスだ。だからまず、NK細胞の正体から出発することになる。それはどういうものか。
細胞だから膜をもっているんで、そこに脂質のあるころはたしかだが、大部分はタンパク質だ。考えはそこからはじめなけりゃいかん。
もともと栄養物質ってヤツは、体じゅうひっぱりだこになっている。タンパク質がそうなんだ。口からはいったタンパク質は、血液になったり、ひふになったり、NK細胞になったりとひっぱりだこなんだ。
そこで食いものの問題がでてくる。タンパク不足の食事をしていても、ほしいだけのNK細胞ができてくれるかって問題だ。タンパク質は血やひふをつくるほうにまわされて、NK細胞づくりのほうは手ぬきになっているんじゃないかって問題だ。笑ったりキトサンを食ったりしたら、タンパク質は血やひふにならずにNK細胞にまわされるかって問題だ。
キミはどう思うか。血やひふや骨と比べたら、NK細胞はさほどだいじなものじゃない。それがなければ生きてゆけないなんていうものじゃない。タンパク質のつかわれかたに優先順位があるとすれば、NK細胞なんてものはビリにちかいんじゃないかな。
それはつまり、タンパク質がたっぷりなかったらNK細胞にまではまわらないだろうってことだ。
どっちにしても、NK細胞への期待が大きすぎるのは禁物だ。たとえば、肝臓がんの細胞はかたくなった組織のなかにいることがおおい。そんなところへNK細胞がたどりつけるか。考えたらわかるだろう。NK細胞もしめだしを食ったら、はたらけるわけがないんだ。
本原稿は、1994年8月26日に産経新聞に連載された、三石巌が書き下ろした文章です。