<<運動器ネットワークを機能させるための栄養対策>>
私たちが何かしらの動作をするとき、運動器系には次のような流れが生じます。
◎例:歩くという動作
まず、脳から“歩こう”という指令が出ます。脳からの指令は脊髄を下り、脊髄の運動神経細胞に伝達されます。指令を受け取った運動神経の神経線維は、体の各部の筋肉に伸び、“収縮する”という反応を引き起こします。その後伸びるという運動に変わり、歩行につながります。
つまり、ロコモ予防には、関節や筋力保持などの部分的な対策ではなく、体を全体で捉えて対策を立てる必要があります。
●体全体を通して問題部分のサポート力を強化する
〔良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、亜鉛等)など〕
⇒第一に、体本来の働きを正常化して栄養対策を総合的にサポートできるよう体内環境を整えることが重要です。常に体内で生じている数々の代謝をスムーズに働かせるには、これらの栄養素が必要になります。
●筋肉の量・機能を保持する
〔良質タンパク、ビタミンB群、ビタミンC、カルシウム、マグネシウムなど〕
⇒体の細胞・組織の正常なつくり替えを促して、骨や関節を支えている筋肉が弱くなったり、減少することを防ぎます。なかでも、筋肉の収縮・弛緩という動きにはカルシウムやマグネシウムが大きく関わりますので、良質タンパクを中心に、これらの栄養素を強化してお摂りいただくことが大切です(理想比は、カルシウム2に対してマグネシウム1)。
●バランス能力を保つ(脳・神経の働きを正常化する)
〔アミノ酸、ビタミンB群(特にB12)、カルシウム、マグネシウム、レシチン、リノール酸、EPA、DHAなど〕
⇒脳からの指令が正常でなければ、転倒やつまずきを引き起こします。脳には脂質が多いという特徴がありますので、リノール酸と呼ばれる不可欠脂肪酸、EPA、DHAなどの摂取が脳の構造維持には必要不可欠です。
また、神経のサポートにはアミノ酸、ビタミンB群(特にB12)、レシチン、カルシウム、マグネシウムなどの摂取が重要になります。
●関節軟骨の生成を促す
〔良質タンパク、ビタミンA、ビタミンCなど〕
⇒筋力の低下により骨が支えられなくなると関節に圧力がかかって関節軟骨が変形します。また、栄養素の不足によって体の代謝が低下すると軟骨の生成が上手くいかなくなります。骨と骨との衝撃が吸収できなくなると痛みなどの炎症を生じますので、これらの栄養素は必須です。
●酸素と栄養素を運ぶ血液の流れを促す
〔ビタミンE、イチョウ緑葉フラボノイドなど〕
⇒血流が悪くなると酸素や栄養素が充分に供給されなくなりますので、血流の確保も大切な対策になります。また、冷えも血液の流れを滞らせますので、夏の冷房による体の冷えには充分に注意が必要です。
●炎症対策(活性酸素の除去)
〔ビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノール、カロチノイド、イチョウ緑葉フラボノイド、コエンザイムQ10など〕
⇒活性酸素の過剰は、正常な細胞を傷付け、筋肉や神経、軟骨、骨などを構成する細胞のつくり替えに不足を引き起こします。活性酸素は、生きている限り発生し続けるもので、そこにストレスや過労、痛みなどの炎症が加わると、その発生量は増大します。そのため、基本的な栄養対策として、活性酸素の除去に働く抗酸化物質の摂取は欠かせません。
<<まとめ>>
今回は、栄養対策について記載しましたが、疾患予防には、運動や休養の必要性も大いにあります。ですが、「栄養摂取を絶対条件に、運動・休養を取り入れる」ということが大前提です。今や、栄養の考え方自体が、「体全体を網羅的に捉える」ということに重点がおかれていますので、運動器ネットワークのみならず、生体ネットワークの機能維持に働く栄養の摂り方というものを、改めて考えてみたいものです。