ご存知ですか?時間栄養学 | 分子栄養学のススメ

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分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

目覚まし時計時間栄養学時計



皆さんは、時間栄養学という言葉をご存知ですか?
時間を考慮した生命現象に関する学問である時間生物学を軸に、栄養について研究するのが時間栄養学です。

もっといえば、時間薬理学あるいは時間医学、時間治療学といった研究領域が進めてきた研究を、栄養学の分野に応用するものが時間栄養学です。

私たちは、生命維持活動の1つとして食事をしますが、体外から取り入れた栄養素は体内で時々刻々と変化しながら作用性をもたらします。そうなると当然、食事を摂る時間によってその反応性は変わるであろう、という考えのもとでこの研究は進んできました。


メグビーでは、遺伝子(分子)レベルで考える分子栄養学という立場から様々な研究を紐解いておりますが、時間栄養学も個体差や状況差が認められる分子レベルの栄養学といえます。



~生命を脅かす生体リズムの乱れ~

生物の活動や生理機能には秒単位分単位時間単位1日単位さらには年単位の一定のリズムが認められます。

例えば、心臓の拍動は秒単位、ホルモン分泌は時間単位、女性の月経は月単位のリズムを刻んでいます。数あるリズムの中で約1日周期(約24時間)のリズムを日リズムまたはサーカディアンリズムと呼びます。概日リズムは、社会活動ばかりではなく、体温・血圧・脈拍・睡眠・ホルモン分泌・細胞分裂、さらには血栓形成能や血管内皮機能など数多くの生理機能にも認められています。



ひらめき電球生物時計を動かす特有の遺伝子
では、このようなリズムはどのようにして生まれるのでしょうか?
これまで概日リズムは、夜明けや日没による光の変化(例えば、人は夜になると眠くなり、朝になると覚醒する)や、食事によって調節されていると考えられていました。しかし、とある実験で、外からの環境の変化や時間の手がかりが全くない状況下でも、人はある一定の周期で寝たり起きたりすることが証明されました。
つまりリズムを失わずにいられたのは、体の中に自分自身の時計(生物時計)をもっているためであると考えられたのです。

そしてこの生物時計は、特有の遺伝子(時計遺伝子:clock gene)により形成されることが明らかになり、概日リズムの形成には生物時計の遺伝子が関わっていることが証明されました。

主な生物時計は、脳の視床下部にある「視交叉上核」という部分にあり、親時計(中枢時計)と呼びます。さらに体細胞自体も末梢時計という生物時計をもっています。脳の親時計である視交叉上核に連動する子時計(末梢時計)は、すでに血管・心臓・肝臓・腎臓・皮膚・粘膜などの組織で見出されています。この2つの時計は、ずれることなく常に同じ時を刻んでいて、それにより正常な生命活動が営まれています。



ひらめき電球概日リズムの乱れが生む弊害
現代生活は、シフトワークや夜間勤務による昼夜交代業務、海外旅行による時差ボケなど、概日リズムを乱す要因が少なくありません。生物時計の示すリズムと一致しないリズムを刻んだとき、その結果生じる睡眠の質や時間の変化、食欲不振、便通異常、うつ傾向などは“リズム病”と呼ばれたりもします。
また、多くの疾患の発症時刻にも概日リズムが認められており、脳梗塞、脳出血、心房細動や心室性不整脈、狭心症や心筋梗塞など循環器疾患や、アレルギー、喘息発作などには、時間的側面からみた特有の発症傾向がみられます。


最近では、時計遺伝子を変異したマウスで糖代謝や脂質代謝異常、食塩感受性高血圧、血管内皮機能異常などをきたすことが相次いで報告されるなど、循環器疾患の発症における生物時計の意義が注目されたりもしています。


ひらめき電球概日リズムの乱れを生む要因と対策
概日リズムの乱れを生む原因には、食事や睡眠のリズム、ストレス、薬、疾患、引きこもり、運動不足など、多くの物事が挙げられます。
1日3食規則正しい食事や、充分な睡眠時間の確保は当然必要になります。1日酷使した体の回復(細胞・組織の修復・再生)は、寝ている間に行われるため、充分な睡眠時間の確保は重要です。

また、夜に強い光を浴びすぎないことや朝起きたらしっかりと太陽の光を浴びることなど、些細なことから意識していくことが大切です。ストレス社会と呼ばれる現代ですが、それでもストレスや過労の軽減は、常に心がける必要があります。

ストレスは、自律神経の働きやホルモン分泌を乱し、生体に対して大きな影響を与えます。また、私たちの体ではストレスに対抗するためのホルモン(抗ストレスホルモン)がつくられていますが、その材料となっているのが良質タンパク、ビタミンC、ビタミンEなどの栄養素です。
体の細胞や組織の材料となるはずの栄養素もストレスを感じればその対応に使われてしまい、栄養対策も思うように進まなくなってしまいます。このような理由から、これらの栄養素は充分量お摂りいただくことが必要です。

さらに、ストレス時には活性酸素の発生量が多くなりますので、活性酸素除去のためにビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノール、コエンザイムQ10などの抗酸化成分も必要になります。ストレスは、体の機能を破綻させる原因の一つですので、できるだけストレスに感じるものは避けたり、自分なりのストレス解消方法を見つけ出すことが大切です。



ひらめき電球まとめ
いまや栄養学も時間軸に重きをおきます。時間の経過とともに時々刻々と生体は変化しており、その変化には体の刻むリズムがあります。生体リズムの解明は、私たちの生活全体に関わる大きな取り組みになると考えられています。

生命の時計は、死ぬまで時を刻み続けるのです。



(2月号メールマガジンより引用)