こんばんは、ココアこと田中貴子です。
予告で、今をときめく役者さんが揃う、明るい青春群像劇を期待したひとは、肩透かしにあったかもしれません。
すでに出ている映画の評価が割れたのも、たぶんそこかな。
あなたが携帯の欠かせない20・30代なら、他人事として見てられないリアルさがあります。
就活が題材ではあるけれど、根っこはそこではないのです。
ひと縄筋でいかない朝井リョウさんの原作を、よくぞ描いたなと思うほどの居心地の悪さ。
就活における葛藤をえぐった原作「何者」はすでに読んでいました。
原作では、登場人物をそれぞれの想像の中でこしらえる分、存在が希薄でした。
ふぅん、今どきはそんな感じの人いるなと読み流せます。
映像化されて、今度は1人1人に輪郭が入ったはずなのに、それでも薄い。
感情移入したくなる人があまりいないというのが、この映画の特徴と思いました。
カッコつけてる場合じゃないよ!
頭の中にあるうちは傑作。
だけど、人を揶揄するおまえはどうなんだ?
そういうじりじりした思いが建前と本音で出てきます。
内定を先に取った光太郎が、拓人にふと「おまえが何で、内定取れないのか分からない」と言ってしまったり。
スーツを着た就活を否定して涼しい顔をしている隆良を、内面から少しもぶつかってないじゃないか!と瑞月が一喝。
中でも、絶えずスマホの画像を見つけ続ける拓人がTwitterで吐露する仲間へのつぶやき。
拓人演じる佐藤健さん曰く、「のっぺらぼう」な無表情がリアルな怖さを高めています。
言動をみて、分析して、人を理解したような気になってしまう。
人を見ているということは、意識がいつも外に向いていること。
自分の本音に向いていないことになる。
自分の行動や感情は、都合のいいものだけ採用して、他はなかったことにする。
カッコ悪いことは見せない、ひた隠す。
そのアンバランスを、意識高い系とされる理香に暴かれるところがなんとも皮肉です。
そのカッコ悪さこそ、人たらん。
一生懸命汗をたらすのも、努力するのも、その人をきらめかせ自信をつくる。
失敗を怖がっていては、人に合わせようとしては、突破できないことがある。
見てる私たちが、次第に落ち着きをなくすのは、そんなスクリーン上の彼らを観察しているから。
私も拓人や理香たちと、なんら変わらないのではと、もぞもぞしてきます。
救いはラスト。
拓人が面接で1分の自己PRをする場面にありました。
それはスクリーンで確認してくださいね。
読んで下さって、ありがとう。