お茶を淹れながらふと窓の外に目をやると雨が降っている。

「なんだか浄化の雨みたいねぇ」美由紀はそうつぶやいた。

 

「俺が見ていた異なる2つの景色の国は、2つの星だったんだな・・・」頭を掻きながらもっと鮮明に思い出せないものかと「うーん」とうなるテツ。

その様子を見て察したリョウは

「今は思い出せなくても、だんだんと思い出すだろう」と言った。

「そうだなぁ。しかし、リョウと共に蛇族と戦っていた場面は所々フラッシュバックするんだが、どうも楓が思い出せん」

「うーむ・・・もしやシエンナで共に戦ってなかったのか?星の消滅ギリギリで一緒に脱出してきたからてっきり縁が深い仲なのかと思っていたが・・・」

「そうなのか・・・思い出せん。霊体の楓を見た時は確かに彼女に何かを感じたし引き取って一緒にいないといけないような気がしたんだ」

「それは、俺の気配を感じたからかもしれんな」

「ほぅ・・・うむ、そうかもしれん」

2人のやり取りをキョロキョロと見ながら、なんとか状況を読み取ろうとしているユウジをよそにそれぞれ思いにふけるリョウとテツだった。

「おぉそうだ坊主、これまでの話をもう一度するのは面倒だ空気で読み取れ」

そうリョウはユウジにいたずらな笑顔で言う。

「う・・・うっス。ユウジっス。リョウさんでいいっスか?」

「あぁ。よろしくなユウジ」

「うっス!」

3人はふと寝ている楓に目をやる。

「さて・・・あとは楓が目覚めるのを待つだけだなぁ。もうすぐだと思うんだが・・・」

しばらく見ていると「う・・・うーん・・・」楓が微かに身体を動かす。

「お?起きるか?」テツが楓を見つめる。

3人がいよいよかと固唾を呑む・・・

・・・が、楓は起きなかった。

「なんだ、起きんのかーぃ」リョウがツッコミを入れる。

3人で「フフッ」っと小さく笑った。

お茶を淹れてきた美由紀が男3人でニヤニヤしているのを見て

「なに3人でニヤニヤしてるの気持ち悪い。楓ちゃん目が覚めた?」

そう言いながら3人へお茶を配る。

心配そうに楓を見守る美由紀。

ズズズとお茶をすする男3人・・・

「ほぉ・・・こんな味がするんだな。お茶はいいもんだ」

リョウはふぅーとほっこりしている。

「たいして良い茶葉なわけじゃないんだがな」テツが真面目な顔をして言う。

「ちょっとぉ~失礼しちゃうわね。淹れる人がいいのよ淹れる人が~」

そう美由紀はプンとした。

「美由紀さんの淹れるお茶は確かにうまいっス」ユウジが言った。

そうよね~♪なんて言いながら美由紀はユウジに満面の笑みを浮かべている。

しばし、ほっこりモードの時が流れた。

「そろそろ起きてもいいんだがなぁ」リョウが心配そうに言うと何故か辺りを見まわす。

「シン。聞こえるか?」リョウが言うと不思議な電子音と共に

「聞こえています。何か調べますか?」

突然、声が聞こえたと同時にリョウの側にコンピューター画面の様なものが空中に現れる。

テツ、ユウジ、美由紀が腰を抜かすほど驚く。

「楓の目覚めが近いはずだが何か問題ないか?身体バイタルは?」

ピコピコと電子音が鳴る。楓の身体をモニタリングしているのか画面の中のグラフやら円形の図形が激しく動く。

「異常ありません。バイタル正常値。レム睡眠フェーズです。次元遊泳も完了しています」

「そうか・・・まぁ、昔から寝坊する体質だからなぁ。ただ寝過ぎてるだけか」

「そのようです。夢もみているようです。脳波に少し偏りが出ています」

「ほぅ・・・そうか、わかったありがとう」

「どういたしまして」

ピピッと鳴ると空中の画面が消えた。

テツ、ユウジ、美由紀があんぐりと口を開けたまま硬直している。

3人のなかでは楓やリョウは霊的な高次元の存在、スピリチュアル的な生命体と思っていたのに超未来的なハイテクノロジーを垣間見たので酷く驚いていた。

「ん?なんだ、驚かせたな。俺のチームの一員だ。そうだなぁここでいうAIだな」

「俺が知ってる龍族はそんなテクノロジー持ってなかったぞ?」

テツが驚きながらリョウに聞く。

「あぁ龍族は持ってないな。これは、チーム内の他の星系の種族のものだよ」

続けてリョウは

「楓は地球に転生してから何回かここで輪廻している。その間に俺も成長した。それぞれのスペシャリストが少しずつ集まりチームが出来た。これも楓の・・・。まぁこの話は長くなるまたの機会にするか・・・」

「肉体が無く人型の着ぐるみを着た光りそのものの生命体や、楓の分魂の存在、メカニックのスペシャリストだらけの星から来た者や、蛇龍族・・・ここで言う龍神だな。それに羽の生えた瞬間移動が得意な小さな妖精やデカイ狼や・・・龍族と祖先は一緒だが枝割れて進化したドラゴン族やサイコキネシスを得意とする人類によく似た種族や・・・」

「おいおい、まるでファンタジーの世界じゃないか」テツがツッコミを入れる。

「なんだ?ファンタジーの世界は実在しないと思ってたか?人間が想像できるものは遠い過去から経験した遺伝子や魂の記憶か実現可能な未来だってことだぞ?」

皆の顔をみて口角を上げるリョウだった。

 

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