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オキュパイ・ウォールストリートは「人類サバイバルのためのトレンド(潮流)」だ!

11月17日(木)オキュパイ・ウォールストリートのキャンプ村撤去の2日後、予定されていた抗議行動「Day Of Action」が予定通り行われた。
朝7時、証券取引所前での集会と、夜7時以降、チャイナタウンのフォーリースクエアからブルックリンブリッジへのデモ行進で、あわせて250人以上の逮捕者が出たが、実に3万人以上がこの行動に参加したのである。

興味深いのはズコッティ公園キャンプ撤去とこの「大量逮捕」をきかっけに、
世論も動き出した事である。
当事者であるアメリカ人もまだあまり気付いていないと思うが、
その世論は大きく二つに別れている。というか対極にある。

1) キャンプもなくなったし、こんなに逮捕されるんだから、もうこれで終るのではないか。

これは自然な反応だ。日本から見ていると、デモや抗議活動は危険そうだしどこかで終息すべきだ、という感想を持つと思うが、それと同じである。(ちなみに“危険”というのは当局のプロパガンダの結果である。彼らはヒッピーのように見えるが、非暴力をモットーにドラッグもアルコールも一切なしのクリーンでインテリジェントな若者達だ。彼らとじかに接しているニューヨーカーが言うんだから間違いない。)

2)こんなに逮捕されたということは、当局がこの活動を重く見ているという事の現れだ。OWSはティッピングポイントに来ていてまだまだ大きくなる。これは既に抗議運動ではなく「トレンド」なのだ。

私はどう考えても2)に120%賛同だ。しかも興味深いのは2)を述べている記事の一つに「FORBS」があるフォーブスといえば、富裕層が読む雑誌として知らない人はいない。オキュパイ・ウォールストリートがターゲットにしている「富裕層」のメディアがOWSをトレンドとして認め、しかも非常にポジティブな論評を載せていることは注目すべきだろう。

「トレンド」とはどういう意味か、この記事は「ティーパーティ・ムーブメント」との比較で述べている。ディーパーティははっきりとしたポリシーをかかげ、大統領選候補者を建てているのに比べ、OWSにははっきりとしたメッセージがなく、明確なリーダーも建てず、 その行動は「仕事につけない暇な若者の泣き言」のように見えるという。
これは本当だ。しかしこのジャーナリストが見ているように、私はそれが「弱さ」とは思わない。
私も以前述べたと思うが、そのポリシーのなさ、リーダーレスなオーガニックな部分が多くの人を引きつけている。抗議行動に集まるのは若者や失業者だけでないのは、数万という参加者の数からも明らかだ。さらにメッセージのなさ、「若者の泣き言」こそが現在のアメリカ人の「本当の本音」なのである。 ティーパーティーは建国の精神に戻れ、と言うが、世界は300年前とまったく変わってしまっている。この激動の時代、世界経済がドミノ倒しのように崩れて行きそうな今、「泣きたい気持ち、何とかしてほしい思い」をピュアに正直に、言論の自由に基づいて表現したのがOWSであり、集まってみたら「そこに希望がわいてきた」。ここにまったく肩肘を張らない、今のアメリカの真の姿が見えている。それをみんなで声に出して、行動で訴えるというのが、これまでにまったくなかった「トレンド」だと言う事なのだ。

ここからはまったくの私見である。世界経済のグローバル化は何十年も前から既に始まっていた。つまりこの状況に至るシナリオは既に描かれていたことになる。そこに現れたのがインターネットで、グローバル化は加速したが、同時にソーシャルメディアなどで、より多くの人々がスピーディにつながれる環境も作られた。これは神の救いであり、メッセージではないかと私は思っている。
OWSはただの一過性のトレンドではない。「みんなでつながらなければ、もう世界を救う事が出来ない」、というメッセージをこめた「人類サバイバルの」トレンド、と私はつけ加えておきたいと思う。

Godzilla, King of The Monster=「ゴジラ」のアメリカ版は反核映画?

10月最後の土曜日、ニューヨークは初雪が降りました。といっても「初」なんて可愛いものではなく大雪で警報まで出て、ハーレムのアパートの裏庭で色づきかけた木々の枝が水をたっぷり含んだ雪の重みで折れ曲がって可愛そうでした。本当に折れてしまった木が電線を直撃して停電したところも多数あったようです。

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気温も0度近くまで下がって寒いし、ぼおっとテレビを見ていたら、TCMというクラシックムービー専門のケーブルチャンネルで「ゴジラ」が始まりました。「Godzilla, King of The Monsters!」という英語タイトル。1954年に日本で公開されたゴジラの第一作で、アメリカでは1956年に公開、世界的に大ヒットした作品です。翌年には逆輸入されて日本でも上映されました。これが色々な意味でとても興味深かったので、ここでシェアしたいと思います。

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まずこの英語字幕作品。日本公開のオリジナルと「主役」が違います。「アメリカ人ジャーナリストのスティーブ・マーティン」、というオリジナルにはなかった「主役」がものの見事に「はめこまれて」いるんです.当時のフィルムは完全買い取りで編集権は買った側にあったということですが、これがびっくりするほどうまくできている。
ジャーナリストで、日本の科学者セリザワの旧友という設定で、たまたま日本を訪れた時にゴジラ事件にまきこまれ、それをシリアスに報道するという立場で、うまく「ドキュメンタリーの語り手」としてアメリカの観客との架け橋になっています。この人の「レポート」のおかげで、アメリカ人はいちいち字幕を読まなくでも事情を理解することができる。日本人から見れば遺憾な「編集」でしょうが、外国映画としてずっと見やすい作品になった。これも世界的ヒットの一つの理由になったのは間違いないでしょう。いっしょに見ていたビンセントは「ゴジラの足音はジュラシックパ—クの恐竜の足跡と同じだね。」とつぶやいていましたが、スピルバーグ監督もこの作品に大きな影響を受けていると公言していますよね。

何より注目なのはこの映画の持つメッセージです。ゴジラはご存知のように、水爆実験で目を覚まされてしまった古代の怪物。本当は水底の洞窟で静かに暮らしていたのに、水爆の洗礼を受けて放射能を帯びた白熱光を吐く大怪獣になってしまった犠牲者。映画で「何度も繰り返された核実験」と言っているのは、アメリカ政府によるビキニ環礁での核実験(最終的には67回とされている)であり、第五福竜丸の被爆がモチーフになっている事は、当時の日本人なら誰でも知っていたことでしょう。
加えてゴジラにより焼け野原と瓦礫の山と化した東京の風景は、東京大空襲と原爆投下から10年もたってない当時の日本人には、映画とはいえ相当の恐怖だったのではないかと思います。
一方、ヘビーに編集されたアメリカンバージョンからは、1956年当時の世相を反映して、原爆や核実験に関する内容の多くはカットされたそうです。例えば「何度も繰り返された核実験」が「アメリカによる」とは言っていません。それでも「放射能から生まれたゴジラ」という部分はカットしようがなかったようです。
当時は東西冷戦の真っただ中、情報が限られていた当時、これを見たアメリカの若者には充分なインパクトだったと思います。

ギークがニューヨークを占拠! GEEKS OCCUPY NEW YORK!!

私のFACEBOOK上の息子、TONYがため息をついてこう言った。
「ああ、コミコンが懐かしい」

コミコンとは、ちょうど1週間前の週末4日間にわたって行われていたニューヨーク・コミック・コンベンションのこと。

ニューヨーク・コミコンはジャビッツ・コンベンション・センターという幕張メッセ級の巨大施設をほぼすべて使って行う。今年は去年より9000人も多い10万5千人が押し寄せた。内容はおよそ2000件の販売ブース、100人近いセレブリティや著者、出版社によるトークショー、映画上映、300人以上のコミックアーティストによるサイン会、ゲームトーナメント、コスチュームコンテストやデートショー、クィディッチ大会まで、ファンにとってのありとあらゆる楽しみが結集!!

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そこに集まってくるのはもちろん、GEEK=ギークたち。
ギークってわかりますか? 日本のオタクに似ているけれど、ちょっと違うのはアメリカのギークはコンピューターなどのテックにめっぽう強いインテリから、コミックやゲームにハマる日本のオタクと似たタイプまで幅広いこと。
引きこもるよりギーク同士で集まるのが大好きな彼らが1年に1度何より楽しみにしているのが、コミコンなのだ。

そこで何をしているかというと、GEEKING しているのである。
ギーキングというのは例えば、1年間ためたお金であらゆる武器(もちろん偽物)やビンテージコミックス、コスチューム、DVD、ゲームなどを買いまくり、中にはサンタのようにな袋やふくらんだバックパック姿のギークも多い。もちろんコスプレもギーキング。
スパイダーマンやキャプテンアメリカ、スターウォーズのチューバッカの間には、スーパーマリオやセイラームーン、トランスフォーマーやファイナルファンタジーのキャラもいる。(日本のアニメファンもこのシーンに包含されているのだ。)

自分の好きなキャラやモノにかこまれたユートピアのような4日間に
ギーキングしまくって、1週間たってもなかなか現実に戻れないTONYのような若者もいっぱいいる。


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私はこのコミコン4年連続参加、パネルディスカッションを取材したりブースを手伝ったり、日本のテレビの取材を手伝ったりしてきたけれど、年々ギークパワーが高まってくるのをひしひしと感じていた。

そして今年に至って、ギークの世界征服はコンプリートしたと宣言してしまう!

気づいたら時代はギークだったのである。
だって考えてもみてくださいよ。
エジプト革命をおこしたのは、ネットサヴィーでインテリなギークだった。
ウォールストリートを占拠しているのも、ラップトップをずらりと並べたギークたち。
さらにアメリカで最もフツーの人達が見るテレビ。そのテレビ番組のオスカー、エミー賞を4年連続受賞しているコメディドラマもギークが主役のBIG BANG THEORY!!
ちょっと戻ってオバマ大統領を当選させたのもギークパワーと言っていいくらい!

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かつてギークといえば、「変わってる、よくわからない」と学校ではいじめられっ子だった。ところがまわりに理解されないギーク同士で集まってみたら、実はこんなにたくさんいた。それにネットという「武器」が加わったおかげで無敵となったギーク文化は、「ポップカルチャー」と名前を変え、今やハリウッドのスタジオや大企業も見過ごせないメインストリームになったのだ!

ウォールストリートでは「メディアや大企業に無視されていた」意見を持つギーク同士が集まった。エゴがなくオーガニックでリーダー不在、でも統制のとれた組織を形成して世界にメッセージを発信している。
ギークたちは、アートやカルチャーの楽しさをみんなでシェアし、そこからオーガニックに増殖を続けている。
どちらもテックサヴィーなネットワーク力を存分に発揮して加速度的に広がりを続けている。

時代はギークだ! 子どもの頃から運動神経ゼロでマンガ家志望だったギークな私は軽く興奮状態。

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OWS(オキュパイ・ウォールストリート)10月15日に世界719都市で抗議行動

もうウォールストリートが止まらない!
10月15日、世界71カ国、719都市での抗議行動が呼びかけられています。

http://15october.net/

United for GLOBAL CHANGEと名付けられたこのイベント。
「世界の人々が権利と真の民主主義を求めて、ノンバイオレンスの抗議行動をする時がやってきた。
私達の声を一つにし、政治家と彼らが奉仕する財界エリートたちに、未来を決めるのは私達だということを知らせよう。」と呼びかけています。


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先日の集会に参加して。。。追記です。(この前のエントリーとあわせてお読みください)

すごくオーガニックな運動だと思いました。自然発生的で、自然の流れにまかせて進めようという印象すらあります。
昨日はアッパーイーストのビリオネア地帯でデモやりましたが「アッパーイースト行っちゃおうか?よし行っちゃおう。来たい人はいっしょにおいで」みたいな。実際明日の方針は今日決める、みたいなやり方のようです。危機感はあっても今のところ悲壮感はゼロ。キャンプ地にはセレブも(カニエ・ウェスト、ラッセル・シモンズ、スーザン・サランドンなど)が応援に来たりしています。

参加者の考え方もばらばら。もちろんしっかり考えている人もいますが、あんまり深く考えてなくて、とにかく何とかして「不公平をなくしてほしい」というそれだけで行ってる人がほとんど。面白いのはフォーラムで本来の民主主義とは、資本主義とはどうあるべき?みたいな事をみんなで勉強しているようです。それ自体(知ること)ひとつの目標なんですね。

もうひとつ感じるのは、「シェアする」というのが基本にあるからみんなエゴがない。リーダー不在というのもそのへんと関連していますねきっと。そういうところに,
おしつけがましくない?新しいアメリカ人の姿を感じます。フェースブック世代ということもできますね。

OWS(オキュパイ・ウォールストリート);現場レポート/実体化したソーシャルメディア-2

「Occupy Wall Street(オキュパイ・ウォールストリート);現場レポート
実体化したソーシャルメディアはアメリカを変えるか?」

(PART 1から続く)

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まさに民主主義の基本にのっとり、「目標もみんなで決める」ことを掲げるOCCUPY WALL STREET(OWS)
さらにこのムーブメントにはハッキリしたリーダーもいない。あえてリーダー不在と言い切っている。
その理由は8日の総会でもスピーチの中で言っていたが、
「我々のやっていることは、直接民主主義である。だから我々の間には上下関係はないのだ。」

上下関係もないし、思想の押しつけもない真の民主主義を彼らは目指しているのである。その雰囲気は、たまたま通りかかった人が「自分も参加してみようかな」というピースフルでポジティブなエネルギーに満ちている。(“ピースフル”=“ノンバイオレンス”も非常に重要なポイントだ。少しでも暴力が起これば警察のしめつけが始まり、活動が阻害されるし、人が恐れて近づかなくなる。)実際、今回土日連続で行われた集会では1人の逮捕者も出なかった。

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小さな女の子を連れたお父さん、ビジネスマンのユダさんはこう言っていた。
「もう何度かこの集会に参加してきたけれど、4週目になってますます多くの、そして様々な人が参加しはじめているね。最初僕が参加しようと思ったのは、ムーブメントのかかげるメッセージに賛同したからだ。大企業の利益追求主義が政治に大きな影響を与えているというのは本当だ。これまで自分たちはそれを知りながら、絶対変えられるはずはない、とシニカルに斜めに構えていたんだ。」

前出したスティーブさんも、
「ひどい不公平がある事を、長い間みんなが漠然と感じていたが、それをようやくはっきりと認め、言葉にして語り始めた、という事だと思う。」

そしてユダさんはこうも言っていた。
「このムーブメントが素晴しいのは、たった1日で終るものではないし、いつまでと期限を切っていないこと。毎日のように集会を開き、みんなが意見を言い合っていることだ。」

その話し合いの中から、少しずつ組織がオーガナイズされて来ている。コアメンバーはキャンプ地の清掃や警察やメディアへの対応までを計画し実行を指揮している。集まった寄付金で印刷した新聞「OCCUPIED WALL STREET JOURNAL(占拠されたウォールストリートジャーナル)」も発行された。

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それにしてもこれほどオーガニックな人の集まりがこれまであっただろうか?
これを可能にしたのは、どう考えてもソーシャルメディアだろう。彼らの中心には常に何台ものラップトップがあり、それが活動のシンボルにもなっている。そこには資本主義がもたらした恩恵を受けて育った普通のアメリカ人の姿があり、「自分たちは資本主義を否定しているのではない」というメッセージにもなっている。

もうひとつ、この動きの大きな特色は、ニューヨークという土地柄もあるが、
アメリカだけでなく世界で起こっている様々な問題も提起されている。グローバル社会では世界がつながり、問題も世界規模になっていること実感させる。


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例えばプエルトリコ人のフリオさんは、「世界中に広がる植民地主義をやめてほしいというのが僕のメッセージ。」

またインド人の大学教授ジョナキ・ナトラージェンさんは、
「私達は苦しんでいる世界のコミュニティの一部。それは資本主義の理念に大きく関係していると思う。」

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一方彼らのサイトでは、エジプト革命に大きなインスピレーションを得た事を明確にしている。エジプトの若者はアメリカに代表される「民主主義」を信じ、ソーシャルメディアを通じて集まった人々が、旧政権を無血革命でひっくり返した。
それを見てアメリカ人は、目が覚めたのではないだろうか。
長い事民主主義を理想として掲げ、子供たちに教え伝えて来たのはアメリカ人自身である。ところが本家本元の民主主義が脅かされている。それを正すためには自分たちが立ち上がらなければならない。そのツールとしてソーシャルメディアを自分たちも利用する事ができると始めたのが、OWSなのだ。

OCCUPY WALL STREETがプロセスなら、たった今起こっていることはソーシャルメディアの実体化、という段階だろう。
これまでアメリカ人が心の中でだけつぶやいていた本音が、ソーシャルメディアでつぶやかれるようになり、そのつぶやきはとうとう肉声になり、ついには人々の行動となって動きだしている。ではいったいその先に何が続いているのだろう? 
メディアではこの動きが右派の「ティーパーティ」ムーブメントに対し、「左派」のムーブメントになるかもしれないと分析する。しかし共和党をバックに豊かな財源に支えられたティーパーティと比べ、このムーブメントは未だ本当の草の根だ。
「彼らは理想を追い求めているだけ、いつかは金の力でつぶされてしまうだろう」という皮肉な見方を覆すほどの行動が起こせれば、それは革命的な動きになるかもしれない。

何が起こるにせよ、私達がかつて体験した事のない何かである事は間違いない。
そういう意味でこのOCCUPY WALL STREETからは目が離せないのである。