韓流時代小説 罠wana*秘された王子と麗しの姫 背後からそっと君を抱きしめた。山夜は静かに熱く | FLOWERS~ めぐみの夢恋語り~・ブログで小説やってます☆

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Every day is  a new day.
一瞬一瞬、1日1日を大切に精一杯生きることを心がけています。
小説がメイン(のつもり)ですが、そのほかにもお好みの記事があれば嬉しいです。どうぞごゆっくりご覧下さいませ。

第一話・後編

連載60回 君に、出逢えた奇跡。俺は、この愛を貫いてみせる~

 **白藤の花言葉~決して離れない~** 

ーその美しき微笑は甘美な罠か?

どこから見ても美少女のジアンには、秘密があったー。  

 

附馬とは国王の娘を妻に迎えた男性を指す。

いわゆる王の娘婿である。難関とされる科挙に

最年少で首席合格を果たしたナ・チュソン。

将来を期待されながらも、ひとめ惚れした美しき王女の降嫁をひたすら希う。

約束された出世も何もかも捨てて、王の娘を妻として迎えたにも拘わらず、夫婦関係はよそよそしかった。

妻への報われぬ恋に身を灼く一人の青年の愛と苦悩を描く。ー彼女はその時、言った。
 「私と結婚したら、後悔しますよ」。果たして、その言葉の意味するところは? 妻となった王女は、良人に触れられることさえ拒んだ。ー
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 重い静寂に、小さなくしゃみがやけに大きく聞こえた。チュソンは気遣わしげに央明を見た。相変わらず華奢な身体は震えていた。
「央明、やはり脱いだ方が良い」
 チュソンの説得にも、央明は頷かない。彼は重い腰を上げ、妻に近づいた。このままでは、妻は風邪を引いてしまう。いや、既に引いているかもしれない。風邪を引いた上に濡れた衣服を着たままで一夜を過ごすのは狂気の沙汰としか言いようがない。
 どれだけ嫌われようと、妻が眼の前で凍死するのをおめおめと見守るつもりはチュソンには毛頭ないのだ。
 チュソンは手を伸ばし、妻のチョゴリの前紐に手を掛けた。
「そなたがどうしても意地を張るなら、私が脱がせよう」
「ーっ」
 央明が弾かれたように立ち上がり、チュソンから逃れ距離を取った。彼女は恨めしげな眼でチュソンを見ている。意に反して触れようとする飼い主に全身の毛を逆立てている子猫のようだ。
 チュソンはまた優しい声で言った。
「私は下心があるわけじゃない。ただ、このままでは、そなたは最悪、朝には凍死してしまうかもしれない。黙って見ているわけにはゆかないんだ」
 救いようがないほどの沈黙が落ち、チュソンは絶望的な想いになった。やはり、強引に押さえつけてでも自分が脱がせるしかないのか?
 できれば手荒な真似はしたくない。暗澹とした想いに耽っていた彼の耳を、衣擦れの音が打った。
 しじまの底を這うような、妖しげな衣擦れの音は妙に彼の心をざわめかせた。顔を上げると、視線の先、央明が自らチョゴリを脱いでいた。シュルリと紐が解け、チョゴリがそれこそ蝶の羽根のように空(くう)を舞った。
 更に信じられないことに、彼女はチョゴリを脱ぎ、続けて下着の上衣も脱いだ。まさかチュソンは彼女が下着まで脱ぐとは想像もしていなかったのだ。
 床に落ちたチョゴリの上にまたハラリと、下着が落ちた。チュソンは慌てて視線を逸らし、うつむいた。視界の片隅では、王女が脱いだ衣服を拾って絞るのが判った。彼女はチュソンに倣い、絞った衣服を床に広げているようだ。
 昼過ぎに握り飯とキムチを食べただけだ。普通なら、この時間は空腹を憶えるはずなのに、いっかな感じなかった。異常ともいえる事態に精神が限界を超えているのだろうか。
 山の夜は至って静かだった。屋根を打つ雨音と時折、響いてくる雷鳴だけしか聞こえない。あたかも央明とこの世に二人きり取り残されたかのような錯覚に陥る。
 けれども、妻にひたすら恋い焦がれる愚かな良人としては、むしろ望ましい事態ともいえた。突如、また小さなくしゃみがしじまにやけに大きく響いた。
 チュソンは咄嗟に立ち上がった。迷うより身体が先に動いていた。彼は央明を抱き上げると自分が火鉢の傍に座り、彼女を膝に乗せた。
「ーっ」
 央明が息を呑み、抗おうとする。チュソンは極力妻の身体に触れないように細心の注意を払いつつ、低い声で言った。
「大丈夫、何もしないから。ほら、こうやって身体をくっつけていれば、寒さも和らぐでしょう」
 チュソンの手は不自然に自らの膝に置かれたままだ。ここからは男としてーというより人としての忍耐を試される時間が延々と続いた。
 膝の上にあるのは愛してやまない妻の身体だ。しかも、央明の背がチュソンの裸の胸にピタリと密着している状態である。
 彼は途中で幾度か傍らの炭を火鉢に足した。火かき棒で炭をつつき、火が消えないように注意しなければならない。その都度、どうしても身じろぎすると央明に触れてしまうのは致し方なかった。
 一度は彼の肘が央明の胸を掠めた。ほんの一瞬だったため、央明自身はさほど拘ってはいないようだけれど、チュソン本人はもう鼓動が煩いほど撥ねる有様だ。
 チュソンは熱に浮かされたようなボウとした頭で考えた。少し掠めた程度なら何の抵抗もしないのだ、もう少し触れたとしても嫌がりはしないのかもしれない。
 彼は痺れたような思考のまま、手を動かし、背後から彼女の胸に触れた。下着を脱いだ後は胸には幾重にも布を巻いた格好だ。邪魔な布のこの下には、豊かな胸のふくらみが息づいている。
 彼の鼻息が荒くなった。指先で布の上から乳房をそっと愛撫する。次第に大胆になり、乳首があると思しき辺りを指先でくすぐるように、引っ掻くように少し力を込めて触れた。
 刹那、鋭い声が飛んだ。
「何をなさるのですか!」
 央明の悲鳴のような声が束の間、チュソンを現実に引き戻したかに見えたー一瞬の後。
 彼は眼を瞠った。今まで努めて眼に入れないようにしてきた魅惑的な光景がまさに眼前にあった。
 女性によって布の巻き方は違う。乳房が見えるか見えない程度のきわどい部分までしか巻かない者もいる。妓生などはできるだけ豊かな胸を誇示するかのように乳房の上部分は見えるように巻く。乳首が隠れるか隠れない程度の高さだ。
 央明は彼女らしく、胸の部分を覆い尽くすように巻いていた。それでも、胸は隠していても、そこから上の鎖骨部分はしっかりと露出していて、雪のように白い肌が眼に眩しい。
 視線をわずかに下げれば、しっかりと布で覆った部分はかすかに盛り上がっている。男にも体格差があるように、央明はどちらかといえば胸は大きくないようだ。