小説 My Godness~俺の女神~衝撃!新規プロジェクトからハズされーそして彼氏とのデートで | FLOWERS~ めぐみの夢恋語り~・ブログで小説やってます☆

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一瞬一瞬、1日1日を大切に精一杯生きることを心がけています。
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小説 My Godness~俺の女神~

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キョロキョロ下矢印下矢印下矢印下矢印

 

 ☆ 早妃(さき)にとって悠理は最後の男で、悠理にとって早妃は最高の女だった ☆

―心が、壊れてゆく。
 俺の中で、何か大切なものが音を立てて壊れてゆく。―
 
 不幸な事故がきっかけで運命に導かれるようにしてめぐり逢った男と女。
 けして心奪われてはいけない相手に惹かれた男の心のゆくえは?

 ☆ カテゴリ選択については、愛欲か純愛か迷いましたが、
  筆者としてはホスト青年の亡き妻に対する純愛を描きたかったので、
  この選択にいたしました。
  ご寛恕、ご理解いだたければ、幸いに存じます  作者より ☆

「そこまでは」
 実里が首を振ると、柊路は頷いた。
「確かにね。話が余計に大きくなるだけかもな」
 それからしばらく当たり障りのない話をした後、柊路は走り書きのメモを渡した。
「何か気になることがあったら、電話して。俺も悠理の様子に気をつけておくから」
 柊路はこれから店に出るという。聞けば、駅前のスターライトという店にいるらしい。ここからだと眼と鼻の距離だ。
 自宅まで送るという柊路の申し出を丁重に断り、実里は一人、柊路が残していったコーヒーカップを見つめた。実里の前のアイスティーはとうとう少しも口を付けなかった。
 ここまで深刻な話をしながら、アイスティーを飲む気になんて毛頭なれなかった。ホストクラブ、ドラッグ。
 どれもが実里とは縁のない世界のことばかりだ。まるで果てしない闇へと続く世界の深淵を垣間見たようで、実里は知らず身体を震わせた。
 それにしては、あの柊路という男性は、影がなくて頼もしい。むしろ誠実ささえ感じられる人だった。やはり、人を外見とか職業だけで判断してはいけないのかもしれない。
 だが。溝口悠理という男は何を考えているのだろうか。最愛の妻を殺したと実里を恨んでいるのはよく知っているけれど、昨日のように、ずっと実里に付きまとって恨み言を囁き続けるつもりなのだろうか。
―哀しみややりきれなさを誰かにぶつけることで、自分の気持ちに折り合いをつけようとしているんです。
 もし彼が一時的にでもそうやって自分に恨み辛みをぶつけることで、いずれ立ち直れるというのなら、実里は辛くとも耐えるつもりだ。
 しかし、あの憎悪に燃える瞳は、単に恨み言を述べ立てるだけで済むとは思えないような―何か空恐ろしい企みが秘められているのではないか。そう思うような危うさがあった。
 私は、あの瞳が怖い。
 暗い焔を宿した瞳が常に、どこにいても自分を射貫くように見つめているようで。
  実里は思わず両手で自分の身体を抱きしめていた。
 
 ♯Stalker(忍び寄る影)♯

 日毎に萌え立つ緑が眩しい季節となった。
 柊路から改めて警告を受けてから三日後の夜である。実里はいつものようF駅近くのフレンチレストランで潤平と待ち合わせした。
 その日、実里はかなり落ち込んでいた。
 というのも、同じ日の昼休みに突如として編集部の部長から直々に呼ばれたのだ。
 そういえば、ここのところ新企画の進行について特に何も触れられることはなく、日は淡々と過ぎていた。確か、第一回目の初顔合わせのときには四月半ばには二回目の会議がもたれるということだったのではないか。
 しかし、実里は特に何の疑念も抱かずにいたのだけれど、どうやら、それは甘かったらしい。
 部長室に入った実里は部長から一方的に新プロジェクトのメンバーから外される―と申し渡された。
―ええっ、何でですか?
 衝撃と愕きを隠せない実里に、部長は神経質そうにコツコツと人差し指でデスクを叩いた。
―理由を私の口から言わせるのかね。
―そうおっしゃっても、私には何故なのか納得がいきません。
 部長は少し憐れむような視線をよこしてきた。
―君自身もあまり聞きたくはない理由だと思うが。
 部長は机の表面を弾くのを止めると、今度はすっかり薄くなった頭髪を掻いた。
―まあ、君がそこまで言うのなら、理由を話そう。入倉君、最近、君は自動車事故を起こしたそうだね。
 刹那、実里の身体が硬直した。
―君もまさか、この私がそのことを知らないと思っているわけではなかろう。私だけではなく、社員全員が知っていると言っても過言ではないはずだよ。
 部長は実里の顔色が白くなっているのを見、ゆっくりと頷いた。
―何しろ小さな町だから、悪い噂はすぐに知れ渡る。だとすればねぇ、入倉君。そういうとかくの風評がある人物を我が社の大切な新規プロジェクトの主要メンバーにしておくわけにはいかんのだよ。殊に今回の企画はやや低迷気味の我が社の社運を立て直すための重要なものだ。会社の威信を賭けてのものといっても良いこの企画に、新聞に載るような事件を起こした者を加えるわけにはなぁ。むろん、私だって、君に何の落ち度もないことは理解しておるつもりだ。しかし、上のお達しで、まあ、そのう、こういう結果になってしまって非常に残念だ。
 要するに、人を撥ねて殺したような人間は、会社の〝顔〟を賭けた重要企画には拘わらせたくない、というのが言い分であった。
―判りました。
 部長がここまで言うからには、恐らくは社長命令に違いない。今更、どう抗議したところで、この命令が覆されることはないだろう。
 実里は小さく頭を下げ、部長室を出た。落胆とやるせなさが同時に胸の内でせめぎ合い、溢れそうになる涙をまたたきで散らすのが精一杯だった。
 後に、実里は企画書の社内選考会で第二位を獲得した若手男子社員が自分の代わりに抜擢されたと聞いた。しかし、かといっても、実里の出した企画案はそのまま採用され、それを考え出した実里本人だけが不名誉な噂によって切り捨てられただけだ。
 潤平にそのことを訴え、やりきれない気持ちを聞いて貰えればと思ったけれど、それはできない相談である。潤平は九月のニューヨーク出向までに実里と入籍したいと望んでいるのだ。そのためにも、今回の新規プロジェクト企画は諦めて欲しいと考えていた。
 今、彼に企画メンバーから外されたことを話しても、かえって、あからさまな安堵の表情を見ることになるだけだろう。
 余計に空しくなるばかりなのは判っていた。
 折角注文したシーフードパスタも一向に食が進まない。実里が沈みがちなのに気づいたのか、潤平がわずかに眉根を寄せた。
「どうしたんだ? 元気ないな」
「そう?」
 実里は気のない様子で応え、無意味にパスタをフォークでかき回した。