韓流時代小説 王を導く娘~さよなら、あなたー宿命が二人を引き裂いた。秘密の恋の終わりは哀しくー | FLOWERS~ めぐみの夢恋語り~・ブログで小説やってます☆

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韓流時代小説 夜に微睡む蓮~王を導く娘~

 (第三話)

本作は、「復讐から始まる恋は哀しく」の姉妹編。
前作で淑媛ユン氏を一途に慕った幼い王子燕海君が見目麗しい美青年に成長して再登場します。
今回は、この燕海君が主人公です。

廃妃ユン氏の悲劇から14年後、新たな復讐劇の幕が上がるー。
哀しみの王宮に、再び血の嵐が吹き荒れるのか?

 

 登場人物 崔明華(恒娥)チェ・ミョンファ。またの名をハンア。町の観相師、15歳。あらゆる相談に乗る

         が恋愛相談だけは大の苦手なので、断っている。理由は、まだ自分自身が恋をしたことも

         なく、奥手だから。

 

        燕海君  21歳の国王。後宮女官たちの憧れの的だが、既に16人もの妃がいる。

        前王成祖の甥(異母妹の息子)。廃妃ユン氏(ユン・ソファ)を幼時から一途に慕い、大王大      

        妃(前作では大妃)を憎んでいる。臣下たちからは「女好きの馬鹿王」とひそかに呼ばれる。    

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 その後、キム淑儀は体調不良を理由に実家に戻った。実家で療養生活を送るも、あえなく流産。その肥立ち良からず、わずか十九歳の若さで亡くなったーと、いうことになっている。


 現実にはむろん亡くなったのではなく、子どもも無事に生まれた。
 キム淑儀は退宮してまもなく郊外の寺に移り、そこでひそかに出産した。生まれたのは産声も元気な男の子であった。赤児はすぐに里子に出され、妃は亡き人たちの菩提を弔うため出家して尼となった。
 彼女はオ内官、楊内官の冥福を祈りながら、生涯をひっそりとその寺で終えた。
 楊内官は義禁府で再度、取り調べを受けた。今度は一転して前の証言を否定し、オ内官殺害の罪を認めたという。
 楊内官がオ内官を殺したのは計画的犯行であった。あの池畔で彼自身が話していたように、キム淑儀の寝所に忍び込んでいるのをオ内官に見られ、妃との密通露見を恐れて殺したのだ。
 だが、ソン内官にオ内官殺しの罪を着せたのは、たまたまだった。
ーオ内官を池に沈めた直後、足音が聞こえ慌てて紫陽花の茂みに隠れました。
 取り調べで、彼は正直に話した。
 見つかっては元も子もないと楊内官は生きた心地もしなかった。必要ならば、ソン内官も殺すつもりだったと悪びれせずに義禁府の調査官に話したそうだ。
 だが、幸か不幸か、ソン内官は池辺に漂う死体を見ただけで昏倒した。
 楊内官はそのまま足音を忍ばせて蓮池から立ち去り、数時間後、早朝の散歩に来た女官たちが死体とその傍らで気絶しているソン内官を見つけたというわけだ。
 池で内官の溺死体が見つかり、王宮中が震撼とした。義禁府の取り調べが始まり、女官、内官は全員一人一人、個室に呼ばれて取り調べを受けることになる。
 当然ながら、楊内官も呼ばれた。特に彼は被害者オ内官とは同室ということで、事細かく訊かれた。むしろ、彼にとっては渡り船にだった。
ー実は。
 と、溺死体が見つかる前日の夕刻、オ内官がソン内官に蓮池に呼び出されたのを知っていると調査官に話した。
 もちろん、真っ赤な嘘だ。
 彼の証言で、ソン内官は重要参考人から犯人に変わった。
 ソン内官が犯人だという証拠は実のところ皆無であったが、証拠がなかったからこそ、調査官は彼の偽りをあっさりと証拠として採用した。
 オ内官を殺害するのは思いの外簡単だった。折しも蓮が美しい季節なので、夜の散歩に誘い出したのだ。
ーお前、知っているな。
ー何を?
 池を渡る風が涼しい夜だった。風に気持ち良さげに眼を細める相方に、彼は唐突に訊いた。
 オ内官は最初、本当に何のことか判らなかったようで、細い眼をまたたかせていた。
ーキム淑儀さまのことだ。
 凄みのある声で脅すように言う。それだけで十分だった。オ内官は震え上がった。
ー大丈夫だ。あのことは絶対に口外しない。
ーうっかり口を滑らせるということもある。悪いが、そなたに余計なことを喋られては、俺もキム淑儀さまも身の破滅なんだ。同室のよしみで少し優しくしてやったからって、俺を見くびったな。何で知る必要も無いことをわざわざ俺の後をつけてまで知った?
ー頼む、頼むから、殺さないでくれ。絶対に秘密は洩らさないから。
 怯えて懇願するオ内官を突き飛ばし、池に落とした。相方が泳げないのは知っていた。
 互いに身の上話をした時、オ内官が幼時に川に落ちて溺れかけ、以来、水が怖くなって泳げなくなったと話していたからだ。
 それでも、オ内官は必死にあがいていたけれど、彼は相方の頭を押さえつけ浮かんでこないようにした。
 果たして、少しく後、オ内官は微動だにしなくなった。気の毒なソン内官がやって来たのは、まさにその直後だったのである。
 オ内官は楊内官を兄のように慕っていた。無愛想で粗暴な楊内官は、内官仲間からも嫌われていたが、オ内官は他の内官が少しでも楊内官の悪口を言おうものなら、我が事のようにムキになって庇っていたという。
 オ内官が泣きながら生命乞いをしたにも拘わらず、楊内官は平気で溺死させた。
 取り調べを担当した調査官は、あまりの残酷さに憤りを憶えずにはいられなかった。
 理不尽な理由で、未来ある若者の生命が奪われたのだ。
 楊内官が斬刑に処せられたのは、当然といえた。讒言で濡れ衣を着せられ入牢中であったソン内官は、ただちに無罪放免となったのは言うまでもない。
                              (了)    
 
 








 花言葉ー清らかな心、神聖、雄弁、薄れゆく愛。